勇者カイル






 俺の名前はカイル。田舎町に住む、ごく普通の農民。
 髪は栗色くりいろ。瞳は琥珀色こはくいろ。畑仕事の他に、魔獣と呼ばれる凶悪な化け物を討伐することもあって鍛えている部類に入る。服の上からでは中肉中背ちゅうにくちゅうぜいと評価されるけど。

 町のみんなに頼られることもあって、それなりに顔が広い。
 それでも特別なものを持っているというわけでもない。
 容姿だって飛び抜けたものでもないし、武力も知力も平均的。


「ゆ……勇者だ! 勇者が現れたぞー!」


 だというのに、これはどういうことなのかな。



 この世界では『魔法』と呼ばれる「個人の力で成せる常識を覆す力」がある。
 例えるなら、道具を使わずに火を起こしたり、水場もないのに水を作ったり。
 そういった常識を無視した術を『魔法』と呼び、使い手は『魔法使い』と名乗る。

 魔法は人間だけではなく、凶悪な害獣――魔獣も使える。どういう原理なのかは、人間と同じで魔法の源を体内に宿しているから。
 奴らは凶悪だが、最も邪悪な奴だっている。

 それが、魔王。

 魔法を得意とし、魔獣をしたがえ、世界中の国々を壊滅させる最悪な存在だ。
 さいわいにも俺の国は無事だが、時間の問題だ。

 そんな折に、国が魔王に対抗できる存在がいると触れ回った。

 神様に祝福された力を持つ者――勇者。

 勇者は聖なる剣によって選ばれるらしいのだが、本当かどうか疑わしい。
 国の使者が各地に出向いて探し回っているそうなのだが、俺の住む田舎町も該当がいとうされるそうだ。
 町の若者達が集められ、順に試される。
 試し方は、一本の剣を納めているさやから抜けるか否か。

 とうとう最後である俺の番となったとき、俺が剣を引き抜いてしまい……冒頭に至る。

 凡人な俺が勇者に選ばれるなんて思わなかった。
 でも、選ばれたなら仕方ない。俺なりに頑張るとしよう。



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