「………はぁあ…」
ギンコは深い溜息を吐いた。
暫く道を歩き続けたギンコが、慣れない下駄で歩く帝江を気遣い早めの休憩を入れたのだが、遅かった。
「足は大丈夫か?」と声をかけて足を見た所で、それに気づいた。
「…靴ずれか…」
こればかりは旅を始めたばかりの帝江には避けては通れない道。帝江は言葉で訴えることをしないので、気をつけてはいたつもりだったが、痛みさえ訴えないとは。
気づけなかった自分の情けなさやら、痛みさえ伝えてこない帝江への呆れやらでついた溜息だった。
「んー…」
ギンコは草が生い茂る土手の辺りを見回した。
傷に効く野草を見つけて立ち上がる。
座らせていた帝江の足を再び見るが、そこで動きを止める。
(傷が……無い)
鼻緒が擦れてできた赤い痕が。血さえ滲ませていた傷が。
綺麗に無くなっていた。反対の足だったかともう一方の足を手に取るが、そちらにも傷は無い。それに、鼻緒に血がついているのだ。こちらの足で間違いないだろう。
(つまり──…)
傷が、治った。
──する…
「っ…」
傷があったはずの指の間を撫でると、足がビクついて引っ込んだ。
「?」
帝江を見上げるが、表情からは読み取れない。
(…くすぐったさは、感じてるのか)
「よし、これでいい」
足に貼られた薬草に、満足そうに頷くギンコ。
「傷が治るっていっても、痛いのはやだろ?予防のためな」
ギンコは立ち上がり、そう言って帝江の手を握り立たせる。
「痛かったらちゃんと言え…って言っても、仕方ねぇか…」
片方は帝江を繋ぎながら、片方で頭を掻く。
とりあえず、こまめに様子を見ながら行くしかないと、ギンコは歩き始めた。