02
「着いた!海軍基地の町っ!」
「はい!ついに!!」
ともあれまずは食事をすることになって、近くにあったレストランに入る。
「この町で僕は別れますが、立派な海賊になって下さい。いずれは敵同士ですけど」
「……もぐもぐ…おう!」
「そういや基地に居るのかな、あのゾロって奴」
──ガタン!!
ルフィさんがそう口にした途端、店内にいる客全員が椅子もテーブルもひっくり返しながら壁に貼り付く。
「ど、どうやらロロノア・ゾロの名前は禁句の様ですね」
「そのよう…ですね…」
声を落として言うコビーさんに、私も頷く。どうしよう。そんなにまずい賞金稼ぎなのか。
「そういえば、さっき貼り紙を見たんですけど、此処の基地にはモーガン大佐という人がいて……」
──ガタガタン!!
「え!?」
「おお!!」
瞬間、また他のお客さん達が引っくり返った。奇妙な事に、ロロノア・ゾロやモーガン大佐の話をすると、そこにいた人が全員吹っ飛んで行く。何故飛んでいくのかは分からないけれど、早めにお店を出た。
「はっはっはっはっ、おもしろい店だったなーっ、おれ後でもっかい行こうっ」
ルフィさんはお腹を抱えて笑っているが、私は不安になってきた。
「妙ですよ…!いつ脱走するとは限らないロロノア・ゾロの名に過敏になる気持ちはわかりますが、何故海軍の大佐の名にまで怯えるんでしょうか!」
コビーさんも不安そうな顔をしている。
「さあなー、なんかノリで吹っ飛んじゃったんじゃねェか?」
「町の特色ですか…?」
「そんなわけないじゃないですか!!僕は真面目に言ってるんですよ!」
コビーさんに怒られた。
そして着いてしまった海軍基地は、シマシマの不思議な柄だった。
「行けよ、コビー」
「で、でも、まだ、その……心の準備が…!」
さっきの一件もあると言うコビーさんは緊張からか、少し震えている。あの店では、海軍の大佐の名前にまで怯えていた。だからだろう。かくいう私も、支部にビクついている。
「……ルフィさん…?」
塀にしがみつく様にして中の様子を見ていた。草履が脱げそうだ。
「魔獣は何処かなァ」
「覗いて見える様な所には居ませんよ。きっと奥の独房とか……」
「いや!なんか居るぞ向こうに!ゾロって奴かも」
そう言ってルフィさんは軽く走り出す。何故か私の手を掴んで。
「ほら#name1#!あいつ」
塀に腕をかけて覗くルフィさんにそう言われて、私も塀に上がって向こうを覗く。
すぐに、右隣に上がってきたコビーさん。この塀結構高いのに、よく登れたな、と少し驚いてしまった。
けれど、中を覗き込んだコビーさんは直ぐ様降りて、いや、落ちて尻餅をついた。
「どうした?」
「大丈夫ですか…?」
「く…く…黒い手拭いに腹巻!!ほ…本物だ。本物のロロノア・ゾロです!」
あの人が…。
「なんて迫力だろう…!あれがゾロ…!」
広場の中央に磔にされているその人は、酷くボロボロで。
「あれがそうか……。あの縄ほどけば簡単に逃がせるよな、あれじゃあ」
隣でルフィさんがなんか危ない事言い出した。もう疲れてきた。降りよう。
「ば……馬鹿な事言わないで下さいよ!あんな奴逃がしたら町だって無事じゃ済まないしルフィさんだって、#name1#さんでさえ殺そうとしますよあいつは!」
腕を離して、っと、と着地して、コビーさんに問いかける。
「賞金首でなければ大丈夫なのでは…?」
コビーさんはもう一度塀を登って答える。
「町の人のあの怯えようを見たでしょう!?きっと見境なく暴れるに決まってますよ!」
「ああ…」
それは困るな…。
「おい、お前」
「ん?」
「ひい!」
知らない声がした。
ロロノア・ゾロの声かな。
「ちょっと此方来て、この縄、ほどいてくれねェか。もう九日間もこのままだ。さすがにくたばりそうだぜ」
「おいあいつ笑ってるぞ」
「喋った…!」とコビーさんは怯えている。
「礼ならするぜ。その辺の賞金首ぶっ殺しててめェにくれてやる。嘘は言わねェ。約束は守る」
この人も怖いこと言う…。
「だ…駄目ですよルフィさん!縄を解いた途端に僕らを殺して逃げるに決まってます!」
「殺されやしねェし殺させもしねェよ。おれは、強いからね」
「あァ!?」
どうしよう。そう思っていると、誰かがやってきた。それを追う私の目が下へ向かう。
「しーっ」と口元に人差し指をやるので、黙って頷いた。
コビーさんの右隣に梯子が掛かる。
「ん?」
「え!?」
二人にも同じように「しーっ」とやって、髪を下で二つ結びにした、小さな女の子は塀を乗り越えて姿が見えなくなった。
「ルフィさん止めてくださいよっ!!あの子殺されちゃいますよ!」
「自分でやれよ、そうしたいなら」
もう一度塀に登って、何をするのかと見れば、女の子は磔にされたロロノア・ゾロへと向かって行った。そしておにぎりを差し出した。
「お兄ちゃんずっとこのままでおなか空いてるでしょ?私、初めてだけど一生懸命作ったから……」
「腹なんか減っちゃいねェ!そいつ持ってとっとと消えろ!」
「だけど…」
「要らねェっつったろ!帰れ!踏み殺すぞ餓鬼!」
さっき、くたばりそう、とか言ってたのに。女の子の所へ行こうかなと思っていると、不意に大声が聞こえた。
「ロロノア・ゾロォ!イジメはいかんねェ。親父にゆうぞ」
金髪の…少年か青年かわからないけど、男の子と、二人の海兵が二人の元へと行く。塀からそれを見ていると、金髪の人が女の子からおにぎりを奪い、食べた。
「ぷへェっ、まずうっ!!く…くそ甘ェ!!砂糖が入ってんぞこりゃ、塩だろうがふつう、おにぎりには塩っ!!」
塩と砂糖間違えたのかな。
「だ…だって甘い方がおいしいと思って…!」
違った。
しかし驚いたことに、その後、金髪の人は食べかけのおにぎりを地面に叩きつけて、更に踏み潰した。
「こんなもん食えるかボケッ!!」
なんて酷い事を。
「ああっ!やめてよ!!やめて!!食べられなくなっちゃう!!」
「大丈夫!!アリならなんとか食ってくれるさ。ひえっひえっひえっ」
「……ひどいよ!!わたし…一生懸命つくったのに…!!」
「あ〜あ〜泣くな泣くな!!だからガキは嫌いだぜ。悪いのはお前なんだぞ?ここに何て書いてあるか読めねェのか。【罪人に肩を入れし者同罪とみなす。海軍大佐モーガン】。俺の親父の怖さくらいは知ってるよな。てめェが大人なら死刑ってとこだ!!おいこのガキ投げ捨てろ!!」
「……は?」
傍にいた海兵が聞き返す。
「塀の外へ投げ飛ばせっつってんだよ!!俺の命令が聞けねェのか!!親父に言うぞ!!」
「は…はい只今っ!」
海兵が近づいてくるので、塀から降りて三人で女の子を待つ。
「いやああ!」
塀の中から、女の子が飛んで来た。私の方に来たので腕を伸ばして受け止める。
「大丈夫ですか…?」
「う、うん…」
「なんてひどい奴なんだ…!」
私とコビーさんで女の子に声をかける。
ルフィさんの方を見ると、静かに何か考えているようだった。
「#name1#、行くぞ」
「?」
ルフィさんはもう塀を跳び越えてしまっている。
「コビーさん、すみません、その子お願いします…!」
女の子をコビーさんに任せ、私も塀を跳び越えた。既にロロノア・ゾロの傍にいるルフィさんの所に小走りに向かう。
「俺達は今、一緒に海賊になる仲間を探してるんだ」
「海賊だと?ハン…!自分から悪党に成り下がろうってのか。御苦労なこって…」
「おれの意志だ!海賊になりたくて何が悪い!」
「…そのガキみてェのしか仲間が居ねェみたいだがな」
ガキ…。
「おい!#name1#を悪く言うな!」
ルフィさん…!
「#name1#の事を苛めて良いのは俺達だけだって約束したんだ!」
「ルフィさんそれ何ですか…!?」
「───で?まさか縄をほどいてやるから力を貸せだの言い出すんじゃねェだろうな」
話流された…!でも怖いから何も言えない…!
「別にまだ誘うつもりはねェよ。お前悪い奴だって評判だからな」
「悪い奴ね…言っとくがそんな条件ならこっちから願い下げだ。俺にはやりてェ事があるんだ!!お前に逃がしてもらわなくてもおれは自力で生き延びる!!一ヶ月ここに生きたままつっ立ってりゃ助けてやると、あのバカ息子が約束してくれた。なにがなんでも生き延びて、おれはおれのやりたい事を成し遂げる!!」
笑って、言い切るその人に、驚く。
「…ふーん、そうか。でもおれなら一週間で餓死する自信あるけどね」
一週間ももつのかな、と思ったけど黙っておいた。
「おれとお前じゃ気力が違うんだ。もの好きな仲間探しは他をあたるんだな」
ルフィさんが背を向ける。
「おい、……それ…とってくれねェか」
ゾロさんがさっき女の子が持ってきたおにぎりを取ってほしいと頼んできた。
「食うのかよこれ、もうおにぎりじゃなくて泥の塊だぞ?いくら腹減っててもこりゃあ…」
「ガタガタぬかすな黙って食わせろ!落ちてんの全部だ!」
あが、と大きく口を開けて待っている。ルフィさんはそこに拾ったものを入れたが、咀嚼音がほとんど砂のバリバリ、だった。砂と砂糖の味で大変な事になっているだろう。
──ゴ…ゴクン!
「だから言ったろ。死にてェのか?」
「ゴブッ…あ…あのガキに伝えてくれねェか…!」
「?何を」
「【うまかった。ごちそうさまでした】…ってよ」
「!……はは!」
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