王子である条件/ace
※2020.07.14〜2020.09.14拍手お礼
※もしものお話(本編とは無関係)
※エースとアイスちゃんが恋仲です
※ゴースト・マリッジ(エースSSRパソスト)ネタバレ有
「それにしても、まさか君の口から理想の結婚相手について聞けるとは思わなかったよ」
オペレーション・プロポーズから数日経ったオンボロ寮の談話室で、アイスはゴーストが淹れた紅茶を片手にクスクスと笑い声を零した。
「一緒に泣いたり笑ったりできる人、どんな時でも一緒に頑張れる人、だったかな?」
「だ〜〜〜〜っ!!本っっ当にアンタも人が悪いな!!ぜってぇ面白がってるでしょ!?」
「それこそ人聞きが悪い、僕は素直に感心しているんだよ。意外にも随分と純粋な理想をお持ちなんだね」
声を荒げてアイスに不服申し立てをするも、その頬が薄ら赤らんでいる事も相まってか彼女は未だ笑い続けている。
エースがオンボロ寮を訪ねてきたのは、思い出すのも忌々しいオペレーション・プロポーズの事後、学園長の言いつけで居残り掃除をさせられた1年(+オルト)の面々が悪乗りで計画した動画鑑賞会という名のお泊り会に参加する為であった。その動画というのが、エースがイデアとイザベラの挙式を邪魔する為に式場へ乱入したシーンを映したものというのだから、エースにとってはたまったものではない。そんな動画など観たい筈も無いのだが、自分が居ない場で好き放題言われるのも我慢ならない。いざとなれば実力行使も辞さない覚悟でオンボロ寮に乗り込んできたものの、ユウとグリムは学園長に急遽言いつけられたお使いの為、デュース・ジャック・エペルは部活が長引いてる為、オルトは動画編集に時間がかかっている為、と各々の理由から到着が遅れているらしく、談話室にはエースと招き入れてくれたアイスの2人しか居ない。
「アイス先輩、さっさと部屋に戻って内職とやらをした方がいいんじゃない?」
「ふふ、お気遣いありがとう。でも心配には及ばない。あの一件でモストロ・ラウンジ内も相当設えを改造されたらしくてね。僕のカジノカウンターも使い物にならないから、暫くは休みで良いと言われたんだ」
「〜〜〜っ!1年ばっかの集まりだから、遠回しに遠慮しろって言ったつもりなんだけど?」
「そんなに邪険にしないで欲しいな。僕はオルトに、『アイスさんも是非』と声をかけられたんだから」
反論できずに押し黙ってしまったエースは恨めしそうにもの言いたげな視線を向けるが、素知らぬふりでティーカップに注がれた香り豊かな紅茶を楽しんでいるアイスの姿に溜息を吐いた。ただ紅茶を飲んでいるだけなのに、ホント、どこまでも絵になるなこの女性は。惚れた弱みとは何とも恐ろしい。これがミドルスクールに通っていた時のガールフレンドであれば腹立たしいだけであっただろうに、相手が彼女となると、結局最後はその所作に見惚れて終わってしまうのだから。
「そういえば。ユウから聞いたけど、エペルが中々の王子様っぷりだったらしいじゃないか」
カップをソーサーに戻し、ゴーストが用意したクッキーを摘みながら、アイスは思い出したように口を開いた。恐らく、エース達が揃って門番のゴーストに求婚の言葉を告げた時の事を指しているのだろう。エースとしては突っ込みどころしか無かったエペルの行動だったが、何故だか馬に跨るエペルの姿はリドル達だけでなくゴーストらにも非常に好評であった。
「げぇっ。アイス先輩もあの花嫁みたいに少女趣味な事言うのかよ」
「まさか。ただ……ふふ、エペルの事だからきっと魅力的な『王子様』の出で立ちだったんだろうね。……オルトにエペルのプロポーズも撮っていないか聞いてみようかな」
普段のアイスはどちらかと言えば温厚な性格だが、冒頭でエースに向けた発言がそうであったように、時折底意地が悪い一面を見せる事がある。だからこそ、一言一言に対して過剰なリアクションを見せるエペルはアイスにとって良いからかい相手なのだろう。ただ、そうと分かっていても、エースは今の発言を聞き捨てる事が出来なかった。ユウから事の成り行きを聞いているのであれば、彼女が真っ先に興味を示すのは自分のプロポーズについてなのではないだろうか?そんなエースの心情に気付かないまま、アイスは口元に弧を描いて早速オルトに連絡を取ろうとテーブルの端に置かれたスマホに手を伸ばした。
「アイス先輩さぁ、監督生からオレの事とか聞いてないわけ?」
「エースの……?嗚呼、エペルの従者に間違えられたんだっけ?」
ぷちん、とエースの中で何かが切れた。エースは音を立ててテーブルに両の手を着くと、此方に向かって目を丸くしているアイスに詰め寄って両手首を掴んだ。
「……オレと…」
「エース?」
掴まれた手を払おうと腕を振ってみるが、悔しくも年下とはいえ男女の力の差は明らかでアイスの手はピクリとも動かない。理由を問うにも、肝心のエースは俯いている為その表情を伺う事すら叶わない。
「オレと結婚したら、毎日楽しく過ごせる事間違いなし」
「……は?」
「そりゃずっと一緒に居たら、たまには喧嘩もするかもしれないけど……そん時は必ずオレから謝るよ」
「ちょっと、一体何の……」
「悲しい時も辛い時も寄り添って、アンタをいつだって笑顔にする。オレこそがアイスに相応しい王子だ。だから……」
顔を上げたエースがあまりにも真面目な表情をしていたせいで、思わず手の力を抜いてしまった。それを見逃さず、エースはぐい、と掴んだ両手を引き寄せて顔を近付けた。
「他によそ見なんかすんなよ。オレと結婚してください!」
「〜〜〜〜っ!!」
たちまちアイスの頬が先程のエースの比では無い程にボッと赤らんだ。耳まで血色の良くなったその様子に、エースはにやりと笑みを浮かべる。
「ね、ドキドキした?」
「な、な、な………っ!」
「ね〜、返事はぁ?」
こういう時だけ甘えた風に年下ぶるのでタチが悪い。そう心中で悪態を吐くものの、悪戯っ子のように笑うその様が可愛いだなんて、アイスも大概惚れた弱みとやらには敵わないらしい。せめてもの反抗でひと睨みだけ利かせると、不貞腐れたように口を開いた。
「You may kiss the bride」
「はは、ちょっと気が早すぎた?」
「……僕、減らず口は嫌いだよ」
減らず口はどっちだ、と反論したくもなったがそれは心の内に留める事にして。エースは未だほんのりと血色の良い頬に手を添えると、自分のソレとは異なり艶やかな紅に縁取られた唇に、あと数ミリで触れるかというところで動きを止めた。
「じゃ、嫌われる前に塞いでもらおっと」
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