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試合が始まると、

侑希はさり気なく水夏に近づいた。


「知り合いやったん?」

「ウン。半年前教生だったんだ。

 特別仲がよかったワケでもないのに

 私を覚えてくれてたみたい」


水夏は翼が生徒全員を下の名前で呼んでいた事、

その時から「水夏」と呼ばれていた事を告げる。


「でもまさか…いきなり抱きつくとは

 思わんかったわ…」


げんなりした様子で呟く侑希を見た水夏は、

つい笑ってしまった。


「私も思わなかった」


とは言え、そう言っておきながらも、それを

『先生らしい』と思ってしまう自分もいる。


「何笑いよん」

「だって…」


この態度は自分が大切にされている証拠だ。

水夏はそれが嬉しかった。


「でも侑希と翼センセが知り合いだったなんて…

 それもビックリした」

「俺もツバサが教師目指しとるなんて

 びっくりやわ」


そんな事を言われている事を知ってか知らずか、

翼は叫ぶ。


「決めちゃうよー」


にっこり笑ってポイントを取ると、

どよめきにも似たざわめきが起きた。


「マジックショットも健在か」


誰かのセリフに、水夏は首を傾げた。


「何かしよう思たらな」


侑希がすっと手を差し出す。

水夏は何だろう?とその手に視線を落とした。


「そう。一番最初に ゙見る" やろ?」

「ウン」

「それを見んとやるんや。翼は」

「え?」

「打ち返す時にその場所も見んと、

 ラケットの面も相手に読ませんと

 返してしまうんや」

「そんなことできるの?」

「だから、マジックショット」

「あ〜なるほど…。

 翼センセってすごかったんだ」


一瞬、侑希もできるの?といった疑問がわいたが

なぜか愚問に思えた水夏は聞くのをやめた。




Avant / ここまで


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