聖なる悪夢へ恩返し

とある星の中心部、目貫通りに連なるオフィス街の一角、
取引先との通信を終えた〇〇〇は、インカムを外し腕を伸ばさないよう小さく伸びをした。


ふと、オフィスの端にある経理部が"また"ざわついているのに気づき
デスクパーテイションの隙間から、経理担当の同期と部長が何やら話し込んでいるのをこっそり覗く。



「部長やっぱりだめです
送金が失敗し続けています」

「やはりか…どの事業所でも同じの様だ
そんなはずあるわけないのだが…」


難しい顔をして顎を撫でる部長に、
他の職員も次々と手を止め不安気に経理部を見守る。

”ホーリーナイトメア社に送金ができない”

この星がホーリーナイトメア社のお陰で復興してから、ずっと現金を送り続けてきたデリバリーシステムが突如として稼働しなくなったのだ。

ホーリーナイトメア社に恩返しをするために生きているこの星の住民にとって、これほど不安なことはない。

ホーリーナイトメア社は私達を捨てたのではないか?
ナイトメア様に何かあったのではないか?


そんな存在意義がなくなってしまう感覚に、全員が苛まれているのだ。



静まり返った空気に気が付いた部長は、さっと顔を上げ、ひきつった笑顔を見せた。


「よ、よしっ…!
もう一度…いや、何度でも送金を続けてみよう

他の事業所から何か連絡がきたらすぐに全員に知らせる

心配ない、ただの通信障害か何かさ!
ホーリーナイトメア社は我々を必要としてくださるさっ」

さ、仕事に戻ろうっ!
パンパン手を叩き、室内の全員に届くような声でそういうと、部長は役員室へと戻った。


〇〇〇は役員室の扉が完全に閉まるのを見送ってから、各席からキーボードを打つ音や通話音が聞こえてくるのに合わせて、先ほどの打ち合わせの内容をデータにまとめた。

しかし、心はホーリーナイトメア社の事でいっぱいだった。


(仮に通信障害とすれば一体どれほどの人たちの生活に影響が出てるのかしら…
もしかしたら顧客が離れてしまうかもしれない…

私たちにできることが…何か…)


もし今何らかのトラブルで稼動できない状況だとしたら、
そんな時こそ、自分達のような子会社が役に立つ時ではないか。

このまま何もせず、受け取ってもらえない送金を続けてもホーリーナイトメア社に恩返しをしていることにはならない。

きっと何か役に立つ方法があるはずだと、手をこめる事なく考え続けた。


しばらく業務を続けているとメールボックスのアイコンが光る。

(本部からなんて珍しい…)

意外な送り主に片眉を上げた
この星の取締役本部からメールなんて創立周年記念の事前予告くらいだろうか。


珍しさから開いたメールだったが、その内容に〇〇〇は、
いや、この星の者全てが手を止めた。


【件名:HNM社カスタマー支援の志願者募集】


「(えーと…この度、情報部が独自で入手したホーリーナイトメア社デリバリーシステム顧客情報を元に…

ホーリーナイトメア社の通信障害解消又は再稼働までのカスタマーサポート部を設立…)

!!」

考えていたことがそのまま企画になったような本部の取り決めに瞠目する。

”カスタマー支援”
ホーリーナイトメア社の顧客をこの会社の独自の判断で手助けするというのだ!

すぐに添付ファイルを開き募集要項を読み込む
年齢、職種、資格、全ての項目で自分に応募資格があるのがわかると喜びのまま立ち上がり
他の授業員と共に応募用紙の認証をもらうために役員室の扉を叩いた。


「(ナイトメア様のために出来ることがまだあるっ!)」

他の従業員も次々に役員室に集まる。

この星の全員がホーリーナイトメア社への恩義と忠誠心の輝きを瞳に宿していた。


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