忠義者シンパシー

しばらくそうしていると、娘の寝息にうめき声が混ざり始める。

「…起きたか?」

目を覚ましたのかと顔をのぞき込んでみると、まだ瞼は固く閉じられておりソードの呼びかけにも反応しない、座り直そうとしたが、今にも叫び出しそうな勢いでうなされる娘の様子に、ただならぬものを感じ肩を揺さぶる。

「おい」と何度も呼びかけると、娘はやっと目を覚ました。
ぼんやりとソードを見つめる瞳からは涙がとめどなく流れていて、よほど怖い夢をみたのだろうと胸が痛くなる。

相手に同情するなんて自分らしくないと心のどこかでは思ったが、
溢れた涙を拭こうともせず、子供みたいな顔で泣く瞳を見ていると、そんな考えはどこかへ行ってしまった。

震える彼女の手を握り、優しい言葉をかけ安心させてやりたい、そんな衝動に駆られる。

(怖かったな、もう大丈夫…もう怖がらなくていいんだ)

気持ちが抑えきれなくなり、手を伸ばしかけた頃、

くわ、と目を見開いた娘は、弾かれるように飛び起きた。


「も、申し訳ございませんっ!私の運転ミスで…!
救助してくださってありがとうございます!

この度は、ご迷惑を…――――、」


瞬く間に、ソードの目の前にいた涙をいっぱい溜めた少女は消え失せ、
自分の失態を謝罪をするどこにでもいるようなビジネスウーマンが姿を現した。

まるで別人になった彼女の変化と、自分が今何をしようしたことに呆然とするソードに、〇〇〇は謝罪の言葉を立て続けに並べる。

延々と続く長い言葉達が耳に入って来てくれる状況ではない。

しかし、不思議なことに彼女の謝意と羞恥心、そしてこの謝罪が自分の保身のためじゃないことがどういう訳か伝わってきて、
ソードはこの時、彼女に感じていたものにやっと名前を付けることができた。


「(強制的に共感させられてる…、感情が顔に出やすいのか、こいつ)」


相手の感情が手に取るようにわかるのだ、

まるで自分の感情の様に。



◇ ◇ ◇
 

「も、申し訳ございません…!私の運転ミスで…!(最悪だ…不時着に、救助に解放まで…!)」


意識を取り戻した〇〇〇はひたすらに謝った。
ホーリーナイトメア社の変わりに来たはずなのに、これではナイトメア様の顔に泥を塗るようなものだ。

自身の持てる限りの謝罪の言葉を並べ、許しを請い、少しでもこの状況をマシにしようと必死に頭を下げる。

甲冑の男はしばらく何も言わなかったが、彼女の謝罪ボキャブラリーが尽きる前に口を開いてくれた。

「わかったから、もう頭を上げろ」

「はい…」

言われた通り頭を上げ、男の顔を見る。声色に怒りは含まれていなかったが、表情はまったく見えないので感情がわかりにくい。

アポなしで急に来て、勝手に墜落して、救助までされている自分に対して、この男は何を思っているのだろうか。

「迷惑をかけられたとは思っていない、それより傷ないか」

「い、いえ…特には…、ありがとう…ございます」

心でも読まれたようなタイミングでかけられた気づかいの言葉に、戸惑いながら返す。親切な人に助けられたようだ。このままデデデ陛下へ謁見を頼もうかと男に声をかけようとしたが、ドアが開く音に遮られた。

音のする方向を見ると、水桶を持った少女とジャグを持った少年、ピンクの丸いペット(?)が入口に立っていたが、〇〇〇と目が合うと少女と少年は一歩足を引いた。

「げっ、ねえちゃん!こいつ起きてるぜ!」

「…そ、ソード、その人危険はないの?」

不時着者を警戒するのは当たり前だが、そこまで怖がらなくても…。

「目が覚めたようだな」

「卿」

目が覚めた時にいた男の上司らしい。


「あの、この度は私の技術不足でみなさまにご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした!」





強いて気になることがあるとすれば、銀河戦士団と同名の人物がいたくらいだろうか。
だが、実在するかもわからないおとぎ話のような戦士の名前に対して何を思う訳もなく、〇〇〇は本題を切りだすことにした。

すっと姿勢を正し、マニュアル通り印象の良い笑顔を作る。

「改めまして、私〇〇〇と申します。





「単刀直入に聞こう〇〇〇、お前の目的はなんだ」

「はい、私の目的はププビレッジのみなさんのお役に立つことです」


間髪入れずに、




「弊社が独自に立ち上げたホーリーナイトメア社カスタマー支援部は、

現在、通信障害が発生しているホーリーナイトメア社のお客様を訪問し」


「」



「この村が何を買っていたかは知っているか?」


「いいえ、存じません」


「ホーリーナイトメア社が何を売っている会社かは?」


「申し訳ございません、それも存じません…

で、ですが、弊社も取り扱い商品の数には自信があります!
その管理倉庫の広さは、まるで熱帯雨林だと評判されていますので…!」







「……あの、では弊社でお役に立てることがない、ということですか?」


「そうなるな」


「で、ですが……!
…そう、ですか…残念ですが仕方がありませんね」



「では、失礼いたします、後日お詫びの品と芝の修繕費用をお持ちいたします…」


「メタナイト卿!宇宙船は地下に」


「」


「これの事か?」


「ありがとうございます」



「壊れちゃってま」



「私は専門外でして、し」




「そ、…そうですか…」


「…あはは、そもそも私が事故を起こしたのが悪いんですから

問題ありませんよ、交通機関を利用して帰ります

ターミナルはどちらにありますか?銀河便」


「」


「で、では……迎えが来るまでここに滞在させていただきます

ホテルはどちらに?」


「この村にホテルなんて無いぜ」


「……あのホテルじゃなくても民宿や…ウィークリーマンションとか…、滞在期間も長くなるでしょうし、賃貸でも…
これで支払い可能なところでしたらなんでも大丈夫です」


「それが紙幣か?」


「え?これはクレジットカー……、いえ、なんでもありません」







「……即日住み込みで求人応募している所、ご存じないですか

私、一文無しでして…」


「」


「へ?…いいえ!!受けた恩に報いるのが最低限の礼儀です!






「必要とされていない以上営業ができないのはわかりましたが、
どうしてホーリーナイトメア社の事を話してはいけないのですか?」


「今のそなた

それに、村の者がそなたに敵意を持つかもしれん」


「敵意…」


村の発展の遅さ、莫大な購入金額、敵意を向けられているホーリーナイトメア社、


さまざまな要因を

1つの


「…まさか…、多額の未払い金が?村の税が搾取されているのですか?」

「……」


「ま、金払ってないのは当たってるな」と笑ったブンの頭をフームが叩いたので最後まで言えなかった




そのままデデデ




恩義を大切にしてる彼女の性格を気に入ったワドルドゥ隊長が部下にしてくれることになった。


早速、城を案内するとワドルドゥに連れられて行く〇〇〇、
謁見の間を出た廊下で、フーム達を見つけると深く頭を下げた


「しばらくの間、お世話になります」






「なんだか……よく変わらない人ね」

「ナイトメアについて何も知らないのだろうな」

「それもそうだけど…お家に帰れなくなったのになんだか…いきいき?してるから…」

フームは言葉に詰まり頬に手を添え


「何か企んでいる可能性も捨てきれんが…本人があの調子だ、様子を見るしかない
不信な動きをしたら知らせてくれ」

「わかったわ」




自分の主とフームの会話に遠くから聞いていたソードは、


彼に歯、彼女ほどわかりやすい奴はそういないように思えた


きっと彼女は、故郷に帰れなくなった状況に、自分の主への益を見出したのだ。
だからあんなに瞳を輝かせていられるのだろう。

どんな境遇だろうが、彼女の目から光が消えることはない、
自分にはあの目の輝きの正体が痛いほどにわかった


「(あれは、忠誠の光だ…)」



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