忠義者シンパシー

ナイトメアの宇宙船に乗ってやってきた謎の娘と目が合ったと思った途端に気絶され、ソードは戸惑っていた。

彼女は悲鳴を上げる瞬間、一度視線を下にずらしたように見えた。
あの視線が指す場所を追うと自分が構えていた剣にたどり着く。

…まさか、剣を見て驚いたのか?ナイトメアの刺客が?


半信半疑でゆっくりと近づき操縦席をのぞき込むと、娘は本当に気を失っていて、微かだが浅い呼吸をして眠ってた。

手元には、変形したバックルが握られている。

抜けないと騒いでいたのは、シートベルトが外れなくなったからのようだ。
握ったままの剣でベルトを切ってやり、支えがなくなり前のめりになる娘の肩を支える。



「おい、起きろ」


「……」


軽く叩いて起こそうとしたが、頬に涙の筋ができているのに気づき手が止まった。

しばらくの間まだ頬を伝っているそれを眺め、指でそっと拭ってから彼女を抱える。

他に乗員がいないかを見渡してからソードはコックピットを出た。


「ソード!無事か!?」

「ブレイド」

「今、加勢に…
…そいつは?魔獣…ではなさそうだが」

「…わからん、気を失っているんだ」


入口に向かうと扉をこじ開けようとしているブレイドがいた。
すぐに娘の存在に気付き聞いてきたが、ソードも答えられることがなく,彼の手を借りて宇宙船を出た。

外にはカービィだけではなく、フームとブンも来ているのを視界の端で捉えながら、
娘を起こさない様ゆっくりと主の元へ行き、自分が見た状況を簡潔に報告する。


「…と、いうわけで目を覚ましそうにもなく…」

「そうか」


話を聞いたメタナイトは、考え込むようにマントを巻きなおす。
眠りこける娘は武装もしていなければ、身体を鍛えている様子もない、本当にただの一般人に見えた。


「作戦にしては無防備すぎる、事故だとしても愚鈍すぎる
少なくとも襲撃に来たわけではないのかもしれん

…目を覚ますのを待つしかないな」

「(ぐどんって…)…そうですね」

気絶してる最中に愚鈍のレッテルを貼られた娘に軽く同情しつつも、ソードも彼女への警戒心はとっくに無くしていたので、
目を覚ますまで保護するということにまとまった。


メタナイトがデデデ対策の為に、ブレイドに宇宙船のホーリーナイトメア社エンブレムを外させ、後から駆けつけたワドルドゥ隊長に船の片付けと不時着した者を保護することになった旨をデデデに報告するよう指示し、
フームとブン、それと ―特に何も考えていなさそうな― カービィが気を利かせて自宅から看病に必要そうなものを取りに行ってくれている間、ソードが娘を客間のベッドに寝かせる。

腕に感じていた柔らかな感触がなくなると、無意識に気を張っていたのか長めの溜息がでた。

額に張り付いた髪を整えてやろうと手を伸ばしかけ、しばらく考えて手を引っ込めて近くのスツールにドカと座った。

「何しようとしてるんだ、俺は…」

持て余した手を揉み、じっと娘を見つめる。

一言も会話せず気絶され考えている暇もなかったが、彼女の怯えた顔に、ソードは言いようの既視感を覚えた気がした。
会ったこともない相手にどうしてそう思ったのか、そもそもこれは既視感ではなく無抵抗な相手を怖がらせた罪悪感なのか、それともまた別の感情か…

「お前は一体何なんだ…」

ソードは答えが出せぬまま、華奢な身体が浅い呼吸に合わせて小さく上下するのを静かに眺めていた。


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