夢なら嗤って
「一二三、何か食べたいものはあるかい?そうだ、もう夏だし氷菓子とか」
「氷菓子はこの間治さんが沢山買ってきてくれたから当分要らないよ。お腹も空いてない」
「そう?じゃあこのまま目的地まで行ってしまおうか」
彼に手を引かれ陽射しの強い横浜の街を歩いてく途中、やっぱり氷菓子が食べたくなった。
どれ位歩いただろう。背中に張り付く衣類に不快感を覚えだした頃、とんでもなく大きな建物の前で足を止めた治の表情は先程までの楽しそうな笑顔とは真逆でとてつもなく面倒くさいとでもいうよに歪んでいる。
「いいかい一二三。とっっっても嫌だけれど今から君を私の上司に合わせる。けれど君は私が良いというまで喋っては駄目だよ?」
「どうして?」
「変な虫がついちゃうかもしれないから。ほら返事は?」
「…わかった」
職場だと告げられた高い建物。多分横浜の中でも指折りの高さであろう立派なビルだ。
彼の職業については私が落ち着いた頃に教えられた。
この横浜の裏社会を牛耳る組織、ポートマフィア。それを聞いた時の私は彼が更に恐ろしい悪魔に見えて其れから暫く彼の側に行くのを拒んだ(そんな抵抗も呼ばれて側に行かない私に痺れを切らした彼が強引に迫る事で数時間で無駄になったが)。
そんな彼の上司がいると云う事はここがそのポートマフィアの拠点という事だろうか。
嗚呼、帰りたい。
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