東京にて
火神にこれでもかと愚痴りまくり、一心地ついた黒子である。簡単な昼食を終え火神が後片付けをしている間に、携帯とにらめっこをしていた。茶を淹れて戻って来た火神が、それに気づいて首を傾げる。
「何やってんだ? 黒子」
「赤司くんが謎だらけなので、少し詳しそうな方を呼んでみました」
「ふーん。 ん? 呼んだ?」
「はい」
「どこに?」
「ここに」
「オイィイイイイイイイイイイイイイイ!? 勝手に呼ぶなっ」
火神の苦情もなんのその、素知らぬ顔で茶を啜る黒子。そして待つこと一時間ほどで、呼ばれた人物が火神家にやって来た。
「どもー!!」
「……邪魔するのだよ」
「お前らかよっ、高尾に緑間……っ」
「遅かったですね、緑間くん。おや?」
「どーも、あんたが黒子テツヤ? オレは高尾和成、真ちゃんの相棒でっす」
「下僕の間違いなのだよ」
「ヒデェ!?」
「緑間くんに、友人が居た、だと……?」
「どういう意味なのだよ、黒子ぉおおおおおおお!?」
「ブフォ!? ちょ、オレとしては真ちゃんに女の子の友達が居ることに驚きだけど?」
「何を言っている、黒子は男なのだよ!」
「はぁ!? 真ちゃんこそ何言ってんの、どー見ても女の子じゃん!」
「良く分かりましたね、下僕くん。私服だと気づかれないんですけど」
「ブハッ! 下僕違うっ、高尾ちゃんですー!!」
「なっ、何を、言って、は? 黒子が、女、だと!?」
「真ちゃん落ち着け」
「説明が面倒なので察してください」
「察せる訳ねーのだよぉおおおおおおおおおおおお!!?!」
「ブッファアアアアアアアアアアアア!!」
「お前ら、家主を差し置いて勝手に……っ。もう良いわ」
混乱を極める緑間に、大爆笑で転げ回る高尾、それを無表情にただ眺めるだけの黒子。大変カオスである。その光景に色々と悟りを開いた火神は、茶を淹れる名目でそそくさとキッチンへ逃げた。
それから一時間かけて昨年の『実は女でしたショック』の説明をし、どうにかこうにか本題に入ることに。
「だ、大体分かったのだよ。それで洛山に行きながら、IHには出ていなかったのか」
「そういうことです。で、赤司くんのことなんですが……」
「紫原に準決勝に出るなと言ったかどうかか」
「はい」
「準決勝の陽泉の相手が桐皇だったならば言ったかも知れんが、実際の相手は洛山だった。『今』の赤司なら紫原が出ようが出まいが、負けるとは思わんだろうな」
「そうなんですよね、それを考えると言っていないとも思うんですが。それだと紫原くんの発言の意味が分かりません」
「ちょっとたんま、なんで相手が桐皇だったら言ってたかも知んねーってなんの?」
「横槍を入れるな、高尾っ」
「えーとですね、海常戦で青峰くんが負傷してますから彼の欠場はほぼ確定でした。なので青峰くん抜きの桐皇とやるなら、紫原くんも欠場した方が面白い試合になりそうだから。ですかね?」
「それもあるが、赤司にとっては桐皇が準優勝でなければ困るのだよ。おそらく」
「へ?」
「今年のWCは記念大会で、IHの上位二チームは無条件で出場が決定する。桐皇が二位に入れば、東京の出場枠二つが丸々空くことになるのだよ」
「まさか、誠凛も?」
「おそらくな、赤司ならそう考えるだろう」
「ゴメン、高尾ちゃん分かんないっ」
「オレもわかんねー」
「おや、火神くん。居たんですか」
「居るわボケっ」
「誠凛は都予選で、オレの居る秀徳に勝っているからな」
「あぁ、それで誠凛もWCに出れたら面白いって?」
「そういうことなのだよ」
「でも、実際に準決勝で陽泉と対戦したのは洛山なんですよねぇ」
「なるほど、それで悩ましいのね」
「はい」
「……ひとつだけ、赤司と紫原の言い分が両方通る可能性があるのだよ」
「え?」
「もし紫原に出るなと言ったのが、『あの』赤司ならばあり得なくもない」
「あのって、まさか……」
「『あの』赤司ならば、桐皇対海常戦で危機感を持ったはずだ。青峰と黄瀬の負傷でな。オレ達同士が本気でやり合うにはまだ早いと感じ、紫原を止めたというならあり得なくもない」
「確かにそうですが、でも……っ」
「それならば『今』の赤司が言っていないというのも説明がつくのだよ、『あの』赤司がしたことを『今』の赤司が把握できてないということでな。だが、あくまで可能性であって事実は分からん」
「……」
「なあ、火神」
「なんだよ」
「あのだの今だのってなに?」
「オレが知るかっ。てか、そろそろ晩飯の支度しねーとな、お前らも食ってくか?」
「お! 食います食いますー。なー真ちゃん」
「オレは帰るのだよ」
「緑間くん、そう言わずにご馳走になりましょうよ。火神くんのご飯は絶品ですよ?」
「む、そこまで言うなら、吝かでもないのだよっ」
「いや、どこまでだよ。言ってねーしっ」
「ブフゥ!? まあまあ火神、高尾ちゃんも手伝いますよー」
そんなこんなで賑やかな夕食が済めば、外はすっかり暗くなっていた。
「いやー、美味かった!!」
「ふん、悪くはなかったのだよ」
「素直に褒めたらどうなんですか、緑間くん」
「そろそろお暇するのだよ。火神、食事は感謝する」
「サンキューな、火神」
「へーへー、オソマツサマでした?」
「なぜ疑問形なんですか」
「意味が良くわかんねー」
「ブフォ!!」
「黒子、もう外は暗いから途中まででも一緒に行くのだよ」
「え?」
「え、じゃない。桃井のところに泊まるのではないのか?」
「いいえ、ここに泊まりますけど」
「そうか、なら良い。……じゃねーのだよ!! 何を言うかこの馬鹿者ぉおおおおおおお!?」
「ちょ、黒子ってばマジで!?」
「マジですが」
「馬鹿を言うな! 桃井のところへ行け!!」
「馬鹿はどっちですか、緑間くん。女性の家にボクが泊まれる訳ないじゃないですか!!」
「貴様も女なのだよ!!?!」
『あ、そーいえば』
「ギャハハハ!! 火神までっ、どんだけ黒子って男らしいの!?」
「声を揃えて言うな、この馬鹿共がっ。だいたい黒子、お前は昔から……」
「あ、緑間くん。説教はのーせんきゅうです」
「黒子ぉおおおおおおおおおおおおおお!?」
「ブッフォオオオオオオオオオオオオオ!?」
「で、黒子。どーすんだ? 他へ行くか?」
「いえ、面倒ですから泊めてください明日には帰りますし。火神くんなら気にするのも馬鹿らしいです」
「まあ、ぶっちゃけオレも黒子が女って気はしねーから良いぜ。つーか、もう怒るのは良いのかよ?」
「はい。頭も冷えましたから」
「そっか」
「だから、黒子!! 貴様は人の話を聞けー!?」
「ブフゥウウウウ!! もっ、ダメ、腹筋、がっ……っ」
こんこんと不毛な説教を続ける緑間と、笑いすぎて瀕死の高尾を見事にスルーする黒子。再び勃発したカオスに面倒になった火神が、もう全員纏めて泊まれとバッサリ切り捨て黙らせて。賑やかなお泊り会が急遽、開催されることとなった。
因みに、ゲームだなんだと夜中まで騒ぎすぎ、翌朝から部活のあった三名は寝不足により地獄を見たそうな。