禽翦


 一面に、星が散らばっている。瞬間的に、そう思った。
 ふわふわとした感覚も相まって、これは夢なのではないかと思案する。寝ながらに、夢だと自覚してみる夢。明晰夢。
 目の前には太陽があって、空が青く輝いている。そんな中で、星に囲まれていた。この状況が夢でないというなら、一体何だというのか。昼に星を認識することは出来ないことくらい、幼い子供にも分かることだ。
「――っ!」
 遠くで、名前を呼ぶ声がした。
 その声には焦燥感がたっぷりと含まれていて、徐々に遠ざかっていく。誰かを追いかけながら名前を呼んでいるようだ。
 声がした方向に目を向ければ、少し上の位置からこちらを見下ろす人影。中学生くらいに見えるその人と目が合うと、なぜか相手は顔を真っ青に染め上げた。どうしたのかと暫く眺めていると、大声を上げて逃げ出していった。
 化物でも見たのか、それとも凶悪な殺人鬼にでも遭遇したのか。とにかく何かに怯え、恐怖したときの表情と酷似していた。だからきっと、彼も何かに怯えて逃げ出したのだろう。
 そこで、違和感に気がついた。
 周りを取り囲む星々は陽の光を反射して輝く一方で、代赭色のような黄が混ざった赤色をまとっている。
 まるで、血の色じゃないか。
 気になって手を伸ばしてみようとするも、全く動かなかった。熱いような、冷たいような奇妙な感覚があるだけで、手も足も首も何もかもが動かなかった。
 意識が朦朧とする中で、ようやく思い出す。自分は、あそこから落ちたのだ。

 あの空の上から――。