時は遡って、その頃の教師陣
ここは雄英高校、実技試験採点会場。
「────実技総合成績出ました」
パッと雄英教師陣の前に順位表が表示される。と同時に、周囲には合格者たちの映像が流れた。
特に目を引く受験生は3名だ。
1人は
1人は、爆豪とは逆に、
そしてもう1人。
プレゼント・マイクの不意打ちの開始の合図にも瞬時に反応し、
「しっかし、どういう個性だ?」
「物体の切断、浮遊、0Pを文字通り丸め込んだ謎の力、素手でロボをひしゃげさせるパワー、驚異的な跳躍力などの身体能力に加えて、治癒とは。一貫性がありませんね」
「個性複数持ちかしら。前例がないわけではないけど、珍しいわね」
受験申し込みでは個性届けまでは提出しないので、御影の個性は謎だ。何せロボの倒し方がバラバラなのだ。自分の個性の多彩さを披露するかのように、時に拳で、時に切断し、時に謎の力で丸め。
誰もが納得の1位だった。個性の強さ、迷わず人を助ける精神性、行動力、判断力、どれを取ってもそこらのプロヒーローに引けを取らない。中学3年生にして、既に完成されていた。
「身内にヒーローがいるんでしょうか?」
「そうでなければ、余程良い指導者に恵まれたんだろうな」
「他の生徒が卑屈にならなければいいが……」
「そこは担任の力の見せ所でしょう」
ヒーロー科はA組とB組の二クラス。合格者がどちらの組に振り分けられるかはランダムで決まる。
優秀な生徒だ。こういう生徒は実は扱いにくい。欠点が分かっていれば指導し易いのだ。だが欠点らしい欠点がないと────もちろんそれが悪いことであるはずはないのだが────、言ってしまえば教えられることがない。突出した優秀さは一歩間違えば孤独を招く。その才能を受け止めつつどれだけ伸ばせるか、自分たちの指導力次第だろう。
さて、気を引き締め直す教師陣を他所に、どこかぼんやりとしているように見える者がいた。
No.1ヒーロー、オールマイトである。
「……どうかしましたか? オールマイトさん」
「え? ああ、いや……彼女、なんだか見覚えがある気がしてね」
声を掛けられてようやく気が付いた様子で、オールマイトは答えた。
そう、オールマイトは御影灯に見覚えがあった。それがいつのことで、何故記憶に残ったのか思い出そうとしていたのだ。
「昔助けた子どもとかじゃないですか?」
「ああ、ありえますね、オールマイトなら……」
「じゃあ、昔助けてくれたオールマイトに憧れてヒーロー志望に?」
「素敵ね! 青春だわ!」
「ミッドナイトまだ推測だから……」
ワイワイと騒がしくなった教師陣を尻目に、オールマイトは記憶を辿った。「昔助けた子ども」、そう言われてみれば確かにそんな気がしたから。
「……あ」
ふとひらめいた記憶があって、思わずそんな声が溢れた。
どうしましたオールマイトさん、と隣から声が掛かるのに、何でもないと笑って誤魔化す。
ああ、思い出した。彼女をどこで見たのか。そして同時に理解する。私が命を救った人など数知れない。それなのに、何故当時幼かった彼女の顔が、成長した今でも分かるほど記憶に残っていたのか。
(そうか、彼女はあの時の……)
胸が熱くなるのを感じた。あの時私が救った少女が、あの凄惨な事件を乗り越えて、あんなに立派になって、雄英高校ヒーロー科の狭き門を通過した。例え先程誰かが言ったように自分に憧れてのことでなくても、嬉しかった。
No.1ヒーロー・オールマイトは、今年度から雄英高校の教師となる。彼女にも教える機会があるだろう。
(ヒーローとして、恥ずかしくないようにしないとな)
静かに、しかし確かに、改めて教師としての覚悟を決め直した。