「恋の話をはじめましょう」



 ずっと探し求めていたその人に会えたのは、
 私が十五になった歳の春のことでした——
 
「貴方が、土方歳三ですか」

 死んだ父よりもずっと年上の男性が、歳に見合わぬ凛とした佇まいで目の前に立っていた。齢は六十を超えるとと聞くが、そんな老いは微塵も感じさせないその鋭い眼光が私を射抜く。突然声をかけた私に対する警戒は解かないままに、ただ静かな声で彼は「何用か」と私のことを見下ろしていた。

「お初にお目にかかります、私、ゆき、と——市村・・市村ゆきと、申します」
「——市村?」

 貴方を探しておりました、と告げ、私は深く頭を下げる。

「土方さん——どうか、私をそばにおいてはくれませんか……かつての、私の父のように」
 
 
 
 
 ——その出会いが、多分、今より三年くらいは前の話。




「土方さん、ご飯できましたぁ!」
「あぁ」
「土方さん、おいしいですか?」
「そうだな」
「えへへ……土方さん、土方さん、こっちも食べてみてください!」
「いただこう」
 
「……なぁ牛山、いつからあれはあんな感じなんだ?」
「わからん、俺が会った時にはもうこうだった気がする」

 ぼそぼそと後ろで囁き合う門倉さんと牛山さんの声がする。私はそんなものは聞こえなかったみたいに振る舞って、満足そうに箸をすすめている大好きな%y方さんの横顔を眺めていた。
 いつから、と言われればそれは出会ったあの三年前から。
 何故、と言われればこの三年間の全てのために。
 疑問を投げかけた二人のためではないけれど、今日ばかりはどうぞその全てを聞いていただこう。
 
 ——これは、私が彼に恋をするまでの物語。