最終回詐欺?いいえ、最終回です。

◼︎


「…こうして銀さんと名前は障壁を越えて身も心も穴という穴まで結ばれました、とさ。ハイおしまい!うし、帰ろう名前」
「待て待て待て待て。何勝手に最終回偽装してんですかアンタ!!」

まず、前回から何も場面動いてません。桂さんがずっこけてパリンと何かを割ってから1分かそんくらいしか経ってません。

「いやーん、男前ー!キスしたいわぁ!」
「うぉァアアアア!!!」

桂さんに惚れたらしいメスゴリラは彼に飛びつくが、間一髪のところで避ける。まだ薬持ってたのあの人!?

「「なんでこっちィィイイイイ!!?」」

行き止まりなはずのこっちに向かって走ってくる桂さん。バカなの!?あの人ほんとにバカなの!?「やるしかねェ!!」と銀さんは木刀を構えて後ろを振り向き、木壁に向かって木刀を振りかざした。

「わた、私知りませんからねェエエ!?」
「俺も知るかァァアアア!!」

破壊された木壁の向こうは幸い庭で、家主の方に内心ごめんなさいして駆け抜ける。もちろん後ろには桂さんとメスゴリラ。側から見たらこれもうカオスな展開になってる絶対。

「なにやってんだヅラ!!お前ホントにバカなのか!?本物だったんだな!?」
「フッ、今頃気づいたか銀時。そうだ、ヅラではなくて桂さ」
「バカ具合の話だバカヤロー!!」

だめだ。なんかもう宇宙人と話してる気分だ。

「ヅラ!あの薬の効果はどういう仕組みだ!?どうすりゃ切れる!?」
「あの薬は一番最初に嗅いだ者が、嗅いだ後に一番最初に見た人物にキスしたくなる薬でな。一瓶につき一人にしか効果が出ん薬だ」
「…え、マジ?え?じゃあ、俺…アレ、マジか。マジでかァァアアア!!薬全然関係無かったァアア!」
「あぁぁ銀さんうるさい!!そ、それで桂さん!どうすればアレ止められるんですか!?」
「うむ、一番特効薬なのが"失恋"だ。ヤツに脈なし感を見せつければ目が醒めるようになる」

……失恋、脈なし感…。まさか、あのメスゴリラの前でやらかしたキスが効果あったってこと…?

「おーい銀ちゃんに名前ー。2人してランデブーアルか?ハードめで楽しそうだなオイ」
「どの辺がランデブーに見えんだテメーはァ!!」

視界の隅に見えた白い影を捉えれば定春くんとその上に神楽ちゃん。おまけに尻尾には新八くんが必死の形相でしがみついている。
あーいいなぁ、私もすごく乗りたい。乗せて乗せてと念じていると後ろからクラクション。

「オイ旦那にチャイナ娘ェ、てめーら散歩のスピード違反だぜィ。犬とゴリラのスピードぐらいなんとかしろ」
「定春を犬呼ばわりされる筋合い無いアル」
「沖田さん、ゴリラどう見てもウチのペットじゃないので!!」

サイレンを鳴らしながらやってきた真選組のパトカーは並走しながら定春くんちと逆の方向に来た運転席から沖田くんがメガホン越しに話しかけてくる。

「そういうオメーらも車のスピード違反アル。人のこと言う前にまずは自分のこと省みるヨロシ」
「総悟ォオオオオオ!!」
「!」

後ろから土方さんの罵声が聞こえて振り向くと、陸上選手の如く駆けてきた土方さんがパトカーにしがみついている。

「てンめェエエよくも蹴落としやがったな!!」
「あれー?土方さん自分で降りていったんじゃなかったんですかィ?マヨネーズが落ちてるーとかで」
「オメーが運転席から蹴落としたんだろォオオ!」
「マヨネーズが落ちてるってキーワードに反応したアンタがいけねェんですぜ。業務中なのに集中力が足りない証拠でィ。士道不覚悟で切腹でさァ」
「切腹以前に轢き殺されそうになったわコノヤロー!!」

またこの2人は喧嘩か。右は神楽ちゃんと新八くんと定春くん、左は沖田くんに土方さん、後ろは桂さんとメスゴリラ。あれ?桂さんいるけど気づいてないのかこの2人?

「…ったく、どいつもこいつも揃いも揃って…後ろにIKKO系のメスゴリラと有名な攘夷志士様が迫ってきてるってェのに」
「本物のIKKOさんの方が可愛げあります」
「冗談じゃねェ。あんなゴリラに迫られてみろ、IKKOとゴリラの区別つかなくなるから。夢に出てくっから絶対」

「そうですか。じゃぁ、夢に出る前に落とし前つけてきてください」
「は?」

銀さんにサービスでウインクしてあげた後に腕を掴む。最近ようやくコツを掴んだのだ。

「背負い投げェエエエ!!!」
「「ッア゛ァァァァア!!!」」

足を軸に体を捻り、背後の桂さんに向かって銀さんをぶん投げてみたら、走っていた勢いも手伝ってなかなかうまく飛ばせた。うん、90点。銀さんが飛ばされた方を見て土方さんと沖田くんも桂さんの存在に気づいたらしく、「カーツラァァァア!!」と叫び追いかけた。

ようやく走っていた足を止められそうだ。

「銀ちゃんが何しでかしたか分からないけど大変アルな、名前も。あんな天パが相手だと」
「何か困ったことあったらいつでも言ってくださいね…」
「あははっ、ありがとう2人とも」
「名前さん、一つ聞いても良いですか?」
「…うん?」
「えっと、その、野暮かもしれないのですが…銀さんのどこを…?」
「あ!それ、私も聞きたかったアル!!」

子どもながらにそういうのってやっぱり興味あるんだなあ。目の前で繰り広げられている光景…、真選組とメスゴリラは桂さんを追いかけ、桂さんは銀さんを追いかけるという謎の展開図を眺める。

「それは、」
「ギャァアアアア!!!」

照れ臭く思いながらも声に出した言葉は残念ながら銀さんの悲鳴が被さってしまって。2人は聞こえたかな?とチラリと見やるとニンマリと笑っていた。
あぁ、聞かれてた。小っ恥ずかしさから少し頬をペチペチ叩く。

「…えーと、本人には内緒で」
「えー勿体ない!」
「これで良いアルよ新八。本人に言ったら絶対鼻の下デロデロに伸ばしきって調子に乗るアル」
「…なるほど」

私たち3人はあの集団の先頭を走る白髪の天パをもう一度見た。きっとこれから先もずっとあの男に振り回され続けることになるだろう。でも、不思議とそうあっても良いかな、と思いました。

……アレ?作文?




「もう桂さんからバカみたいな薬もらうのやめてくださいね」
「…おー」

銀さんの頬にガーゼを一つ貼った。ようやく万事屋に帰ってこれて、銀さんの手当てをしている。

結局のところ、事態が収束したのは桂さんのペットらしいエリザベスさんの登場のおかげだった。メスゴリラに追いかけ回された桂さんは、突然現れたエリザベスさんに突っ込んでいったらあっついキスをかますというベタなオチで事態は収束した。
そんなトラブルがあったのにも関わらず桂さんは真選組の2人からも逃げ切って姿をくらましたとか。意外とすごかったんだな、あの人。

「もうあんな目に遭うのはこりごりだな」
「それ巻き込まれた私が言うセリフなんですけど」
「あー夢に出てきそうー」
「それも私のセリフ」

ゴロンと気怠そうにソファーに寝転ぶ銀さんは意外と大きな怪我はしてなさそうだ。散らかっていたガーゼやはさみを救急箱にしまい、銀さんのデスク横のタンスの定位置に其れを置く。

「しっかしなぁ…そうかぁ。あの薬、そういうルールがあったとはなぁ」
「…持ってませんよね?」

嫌な予感に銀さんを振り返る。
ソファーに寝転ぶ彼の手には見覚えのある香水瓶。

「いやぁ、身に覚えはねェんだけどさ」

よっこいせとオヤジくさいセリフを発しながら起き上がり、こちらに近寄ってきた銀さんからジリ、と引き下がる。あのメスゴリラの狂い様を見た後だし、こんな反応にもなるだろう。あんなのに私はなりたくない。みすゞ先生でもそう思うはず。
銀さんは私を通り過ぎてデスク近くの窓を開けると、隙間から香水瓶を投げ捨てた。

「俺にはもう必要ねーよ」

投げちゃった…、と呆然としていた私の腕を銀さんに左手を掴まれて距離が縮み、あっという間に銀さんの腕の中に包み込まれてしまった。鼻をかすめる銀さんの匂いと、抱き締められている感触に心臓が騒ぎ出す。あぁ、慣れないなぁ。これ、銀さんに知られたり、

「お前、すげー鼓動早くね…?」
「!…それは……!」

好きな人にこうされて脈拍が上がらないワケがないだろう。そのセリフは何か恥ずかしくて出ずにもたついていたら、耳元で銀さんが小さく笑った様な気がした。

「名前の彼氏だもんなァ?」
「そ、そうですね」
「正々堂々とキスしにいっていいもんなァ?」
「…そうですね」
「それ以上も、OKってことだもんなァ?」
「そ、……ん?んんっ!?」

「それ以上」のキーワードに肯定しそうになって一瞬自分の中で引っかかったのだが、顎を捉えられて上を向かされ、再び落ちてきた銀さんの唇に考えがぱたりと止まってしまった。

「銀さんな、色々としつけーからよろしくな」
「んなっ」

抗議の言葉は銀さんによってあっさりとたべられた。

「ただいまヨー」と神楽ちゃんの声と玄関の引き戸が開く音が聞こえた気がした。


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