挙句の果てには変な設定をつけ加えられて
◼︎
「人様の恋沙汰茶化してる暇あんなら攘夷志士の1人や2人しょっぴいとけや」
目ん玉ひんむいた。
振り返ったすぐそばにはまさかのおおおお沖田くぅぅううん!!!!
この町でやってきて半年、ようやく会えた生沖田君に感動と興奮半分、残りは焦燥感を覚える。可愛い顔してるけどああ見えてドSで更に警察だ。トリッパーである私は戸籍もなんも持ってないから、一度怪しまれたら終わりよ。ハイ身分証出してーなんて言われても出せる物が無いわけよ。不法入国なんか疑われて地球から追い出されたら完全に終わりだ。皆さんに悪いが、この小説終わります。
私地球の天然産だから!地球の外出たら生きてけないから!!
「オイ総悟ォ!サボってんじゃ……てめェは万事屋!!」
「おーおー、どいつもこいつも同じエリアのパトロールしやがって…。江戸を満遍なく配置つけっての。真選組何人いんだよ。税金の無駄だろーがコノヤロー」
「てめェに指図受ける筋合いはねェ。相変わらず胸糞わりィツラしやがって」
ひ、じ、か、た、さァァアアアん!!
沖田君の後ろから登場した土方さんは、銀さんの姿を一目見て、今にも斬りかかりそうな勢いの眼差しで睨みつけた。パトカーに乗ってる時しか拝見してこなかったんですけど、読者の皆さん土方さんの目、マジで瞳孔開いてます。遠くからでもわかります。
短くなった紫煙を携帯灰皿に押し付けて、新しいものを取り出す。あ、ライター本当にアレだ。マヨネーズ。
「大体、江戸で一番治安わりィのはオメーが住んでる町なんだよ。万事屋名乗ってんなら女と乳繰り合う前に町民のために万事のこと働けってんだ」
「ったく、こちとらフィギュア探しで忙しいってんのにネチネチネチネチ絡んできやがって」
「フィギュア…?…まさかと思いやすが、ブレザームーンの限定フィギュアとか馬鹿なこと言いませんよねィ?」
「あ?なんでそれ知ってんの。なんで限定なのも知ってんの。お前もまさか…」
「最近遺留品で預かってんのがあんでィ」
私と銀さんは顔を見合わせた。
「アンタ、万事屋の依頼人かなんかですかィ?」
「へ!?あ、私ですか!?えぇっと…!」
しまった。不意打ち過ぎた。何も設定用意してない。
4人で真選組の屯所に向かっている最中、銀さんと土方さんは相変わらず啀み合っていて、その2人の後ろ姿を沖田君と何も言わずに眺めていたら、話を振られた。クソ、無駄に整った顔がこっち見てるよ。顔に穴が開きそうだよ…ってか開いてない?大丈夫コレ?
一瞬銀さんを見るも、全くこっちを気にしていない。…だよね。
「神楽ちゃんが体調崩したって聞いて、心配でちょっとお見舞いに行ってまして。その帰りに万事屋さんに送ってもらってたんです」
こ、これが無難に違いない!
しかし、日頃から嘘をつき慣れていない私はさらなる追い打ちを食らう。
「じゃあなんでフィギュアに食いついてきたんでィ」
ソウダッター。
もうあらゆる思わぬご対面に色々今までの経緯が完全に抜け落ちてた。思えば目的はフィギュア探しだったんだ。銀さんとのデートじゃなかった。いや、デートじゃないのは最初から分かってたけどね。冷や汗をかく私の肩にずっしりとした重みがかかる。この匂いは1人しかいなく、顔をバッと上げる。
ぎ、銀さんが私の肩に手を回しておられる!!この窮地になんたる至福!!
「そんなにウチの大事な客を虐めてくれるんじゃねェよ総一郎君や」
「おおっと、客でしたかィ。こりゃすまなかったでさァ。あんまりにも可愛い反応しやがるからつい、ね」
「一般人は程々にしとけよ総悟ォ」
「土方は程々で死になせェ」
「オィィイイイ!今最後なんつったァァアアア!」
…た、助かった。
「――コレのことだろ?」
「おー、ご苦労なこった」
「さっさと帰れ。そんで二度とそのツラ見せるな」
「そりゃこっちのセリフだっつの。今後隣町の見回り行って来い」
男気ムンムンの屯所にお邪魔し、ある一室の客間に通された私と銀さん。
私たちの目の前に差し出された箱には黒髪のブレザーを着た少女のフィギュアが入っていて、パッケージには「美少女戦士ブレザームーン!200体限定!」と大々的に書かれていた。こんな恥ずかしいコピー、これで間違いなさそうだ。というか逆に間違いであってほしい気もしてきた。
「旦那ァ、一応俺らも警察なんでねィ。…この遺留品との接点はあんですかィ?」
フィギュアの箱が思ったよりも綺麗な状態で保管されていてほっと胸を撫で下ろすと、銀さんの大きな手が私の頭をグリグリと撫ぜた。…アリ?
「このフィギュアはなァ、コイツが喉から手が出るほど欲しくて買ったのをどっかの誰かに引ったくられちまったんだよ。良かったなァ無事見つかってよォ」
アルェェエエエエエ!?
なんでそんな設定!?私オタク設定!?別の意味での冷や汗が伝う。
「ど、どうなるかと思いましたよホント…!ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
優しい眼差し(客観的に見ると小馬鹿にした眼差し)で私を見つめる銀さんがかっこよすぎてつい合わせてしまう自分。
なんか私ちょろいと思われてそうだな。なんかもう銀さんの中で私のポジション固まってきたんじゃないのコレ。
「へェ。パッと見パッとしねェ女だなと思ってたら、オタクでしたかィ。そりゃぁ合点がいくや」
「人間ってのは外からじゃぁ全ては見抜けねェってモンよ総一郎君」
「旦那、総悟でさァ。そこの女、二度とひったくりに遭うんじゃねーぞ。次それ落としやがったら頭に風穴作ってやるよ」
「なんで!?」
「ムカつくんでィ、そのツラ」
「良かったな、総一郎君のお気に召したらしいぜアンタ」
最悪だ。こんなはずじゃなかった。
地球追放の可能性をぶら下げたまま私は屯所を後にすることになった。
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