ジャイアニズムでおかしい。
◼︎
うちの団長は頭がおかしい。
「ねぇ、名前」
「ん?」
春雨の第七師団が率いる船内にある資料室にて。不意に聞き慣れた声に名前を呼ばれて振り返ると、後ろにはニコニコと笑みを浮かべる団長の姿。
あ、これはなんか良からぬこと考えてる。そんなことを思った矢先に耳元に手を伸ばされ、反射的に後ろに飛び退く。
「逃げないでよ」
「な、なに…?」
「髪に埃付いてたから」
「…耳もぎ取られるのかと思ったんですけど」
「やだなーそんな風に見える?そんなこと言うと…本当に取っちゃうぞ?」
反射的に団長が差し伸べてきた側の耳を手で覆う。吉原の仕事の時にアンタの可愛い妹が阿伏兎の耳食いちぎったの知ってるんだぞ。兄妹血は争えないだろ…!耳元の髪をパタパタと叩く。
「遠慮しときます。…教えていただいてありがとうございます」
「あ、まだ取れてないよ」
これくらいやっておけば流石に落ちるだろうと思っていれば、どうやら落ちていなかったらしく、団長は再び私に手を伸ばしてきた。先ほどの会話からして多分耳をもぎ取られる心配は、多分、多分無さそうだったから私は団長の手が埃を取ってくれるのを待つことにした。
「ジッとしててね」
ジッと…?そんなに取れにくい?
そのセリフに一瞬疑問を抱いたのだが、団長の指先が私の髪を耳に掛けたときに触れて、そちらに意識が持っていかれた。
「ーーーい゛っ!?」
バチン、とした何かの音と同時に耳から顔面に掛けて電流が走ったかのような衝撃が走った。
「あっはっは、ビックリした?」
「〜〜〜っ!!いった…!何するんですか団ちょ、……?」
爆笑する団長から距離を取って、今しがた痛みが走った耳元に手を当てると、耳に何かの違和感と痛みが走った。
……アリ?
「ずっとやってみたかったんだよね、ソレ」
資料室にある戦艦の窓に近づいてみて恐る恐る自分の耳元を確認する。耳の軟骨の一箇所に、銀色に光るそいつがぶっ刺さっていた。
「マジか!!団長ォオオ!!?アンタ人様の耳になにしてくれてんの!!?」
「いいじゃん、耳朶には一個ずつ開いてるんだからさ、今更一個や二個増えたって変わらないデショ?」
「そういう問題!?」
そう叫べば意外と耳に響いて、耳がジンジンと熱を持った。…いてぇ、地味に。私も夜兎とは言え、痛覚はあるのよ、痛覚は。
団長まじで頭おかしいんじゃないの。仕事してるヤツ、それも部下の耳に勝手に穴開けるか普通…?
いや、でも云業の身体に風穴入れたくらいだもんな。うちの団長やっぱクレイジーだ。
「いやー、地球って面白いものたくさんあるんだね。良いもの見つけたよ」
「何言ってんですか…」
「あ、それ、取っちゃダメだよ。取ったら殺すから」
「…はい?」
「お前は俺の物って印だからネ」
いつの間にか背後に迫っていた団長は私に顔を近づけて開けたばかりのピアスをじっくり眺めた。そして満足気な笑みを浮かべて離れ、使用済みのピアッサーを手で玩びながら資料室を出て行った。
「じゃ、引き続き頑張ってねー」
「…あーいたい…」
やっぱりうちの団長はおかしい。
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