創作物の99%は自己満だから目を瞑れ
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アメストリス国。そこは私が生まれ育った国で錬金術が栄えた国だった。
その裏ではホムンクルスという不死身の人造人間とその産み親であるお父様と呼ばれる奴らが己のある目的のために作られた国だと知ったのがここ数日。
「…っ……、ぐっ…!!」
巨大な影によって自分の体が石ころのようにいとも簡単に吹っ飛ばされた。
先刻からの闘いで息は上がり、見え始めた体力の限界に焦燥感を覚える。
「ファースト・ファミリー。あなたは深く知りすぎました」
まだ幼い子どもの足元からおぞましい闇色の触手が私の体を掴んだ。
「さようなら、慧眼の錬金術師さん」
それは嫌味ったらしく私の二つ名を吐き捨てるように言い放った直後、視界は瞬く間もなく闇に染まった。
―――――
瞼の向こうに明るさを感じた。下にあるのは地面だろうか。舗装されていない剥き身の地面に寝転んでいたような感覚にゆっくりと目を覚ます。
複数の足が、私の体を囲うようにしてそこにあった。「う」と小さい呻き声が出ると、軽く体を揺さぶられた。
「お、おい!大丈夫か姉ちゃん!」
「救急車呼んだ方がいいんじゃないんかい?」
その会話からしてどうやら敵ではなさそうだったのは分かった。体を起こすと右腕が軋み音を上げた。
――ゆるくなってる。そんなことを思いながら顔を上げた。
「…ここは…どこ…?」
「記憶喪失?アンタ、車か何かにひかれたのかい?」
「ひでぇな…すげぇ血だよ…」
「すぐに救急車を呼ぼう」
顔を見上げて絶句した。
奇妙な出で立ち、アメストリス国とは違う町並み。まさか、ここは、
「ここは、シン国ですか?」
「はぁ?シン?なんじゃそら…」
「ここはかぶき町だよ、江戸の」
「エド?…カブキチョウ?」
エドって、エドワード・エルリックのことか?エドの保有するカブキチョウ…?え、あのチビこんな土地持ってたの?待て待て余計に意味がわからない。
とにかくこんな人混みの中じゃ危険だ。落ち着ける場所で整理しよう。あのホムンクルスが近くにいたらここの人たちも巻き込まれるに決まってる。
「ありがとうございます。もう大丈夫なんで」
「いや、そんな血だらけで…!」
群がる野次馬を押しのけてそこから抜けながら考える。
さて、どうしようか。
「やっべーなオイ、今週のワンパークやっべーよ。作者コレ、マジでどうにかすんの?敵チートすぎね?」
「!」
横から聞こえた声に顔を上げるともう遅かった。突っ込んでくるバイクに受け身を取ると軽く体が吹っ飛ばされた。
…いたい。いや、ホムンクルスたちとの闘いに比べたらなんともないんだけど、これはこれでシンプルに痛い…。
そして右腕の軽い感覚に「やられた」と率直に思った。
「あぁぁあああ!!!すんません!今俺ひいた!?ひいちゃった!?人ひいたの!?」
「…っ、」
耳に入るのは私をひいたと思わしき人物の焦る声とそれを叱責する野次馬の声。
左腕で体を起こすと、そこにいたのはまたもや奇妙な出で立ちの男だった。洋服に白い羽織り姿に白髪の天然パーマ。どこぞの最年少国家錬金術師の金髪サラツヤストレートの少年とは正反対だ。
それにしても本当にここはどこ…?ますます混乱を引き立たせてきた。こんなに状況が追いつけないことってある?
「す、すげェ血だらけじゃねェかよ…!マジか!ジャンプ読みながら運転しなきゃよかった!!」
「大丈夫です大丈夫です。怪我は元々なので」
「あれ、意外と元気…?」
「あの、そこにある腕取ってもらっても良いですか?落ちちゃったので」
白髪頭のバイクの横に落ちていた自分の‘腕’に指を指す。コートを着ていたおかげで自分の体は殆ど隠せていて安心する。所々破れたりしてはいたが。
「あー、腕ね、腕。はいはいこれくらいお安い御用で…って…ぇえええ!!」
「あああもう早く下さい!」
「あああハイ!!」
そりゃあ驚くのも仕方ないだろうけど、今はこの場から早く立ち去りたかった。
あの取り巻き達の中でもう救急車を呼んだ人がいるかもしれない。まだここが何処だか分からないのにそういった類に世話になる訳にはいかなかった。
ビビりながらも金属製の‘腕’、機械鎧を持ってきてくれた男からそれを受け取り、軽くお礼を伝えて歩き始める。ジョイント部を確認すれば、まだ使えそうだった。
コートの下にある半分しかない二の腕に金属でできたそれ嵌め込むと、腕から電気のような刺激が走った。
「おい、アンタ病院行った方が良いんじゃねェの」
「なんとかしますから」
「なんとかって。…まさか攘夷志士かなんか?」
「…ジョウイシシ?」
知らない単語ばかりだ。ここは。
身なり町並みはアメストリスとは違うのに言葉は通じる。私を引きずり込んだあのホムンクルス・ラースの影に小細工があったのか?ここはラースが作った仮初めの町、とか?でも人の気配はラースとは違うような気がする。アメストリス国から違う国に飛ばされた?
あぁもう情報がなさ過ぎて分からない!
「おーい、聞いてんの?」
「…ともかく、ひいたこと気にしてるなら時間の無駄です。気にしないでください。そしてついてこないでください」
とりあえず振り返って白髪に指を指す。よく犬に言う「ハウス」とちょっと言いかけた。
「気にしないでくださいって言われてハイそーですかァ良かった良かったこれで心置きなくパチンコ行けるわァなんて言える程人間腐ってねェよ俺ァ」
「パチンコ…?…とりあえず目は腐ってるストーカーなんですね」
「あァ!?誰がてめーみてェなちんちくりん追いかけ回すかっつーの!」
「現在進行形なんですけど」
「オメーが病院行くかわかんねェから付いてきてんだろうが!てな訳で今すぐ行け。なんなら救急車呼んでやらァ」
「行きません!ちょっと一悶着あっただけです」
「ちょっとどころじゃねェだろうが馬鹿なのかお前は」
結構早歩きでズンズン進んでいるのに、この後ろの男ときたら後をついてきて面倒くさい。そして、極め付けに馬鹿のセリフに正直カチンときた。国家錬金術師としてのプライドを傷つけられた気分だ。見知らぬ男に。
次の曲がり角で絶対撒いてやる。
「それにさっきの腕…ありゃ、」
「じゃん、けん、ほい!」
白髪頭のセリフを被せて男の前にチョキを出す。気が強くなってるからきっとパーを出すだろうと思ったらやっぱりビンゴだった。私の勝ち。
「は?」
「あっち向いて、ホイ!」
「あだァ!」
「馬鹿が見ます」
「てっ、てんめ…ッ!!」
横を向いたところに足を出して転ばせ、それから白髪頭の背後の方を見上げて一言。
「あ!警察だ!助けてぇおまわりさーん!」
「はァ!?」
何か普段からやましいことをしてたのか?と、思えるくらいに転びながら勢いよく振り返ってくれたのが良かった。咄嗟に曲がり角を曲がって細道へ。
白髪頭が来る前に両手を合わせ、そのまま地面に手をつける。錬成反応が見えて正直ほっとした。
「あの女ァアア!!……って、アリ?行き止まり?……こんなとこあったっけ。…チッ、見逃したわあの女」
怒号の後に素っ頓狂な声が壁の向こうから聞こえた。
足音が遠のく様子を壁に耳を当てて確認し、そこで自分の両手を見た。ここまできて一つ分かったことがある。
「錬成できたけど…今までと違う感じ」
ちょっと錬成しただけなのに錬成スピードが早くて、精度がアメストリス国でした感覚と全く異なっていた。錬金術さえできればなんとでもなる。その安心感から思わずその場に座り込んでしまった。
「さて、どうしたもんか」
作った壁に頭を預けて見上げた空は憎たらしいくらい青かった。
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