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「私はあなたの事、肚の読めない男だと思っています。一瞬でも気を抜いたら、殺されるんじゃないかと」
「そういう心構えは大切だよ?とくに、このヨコハマで生き延びるためにはね」
「えぇ、まぁ。それはあなたが一番よく知っていますから」
「だからだよ、斎ちゃんに後を任せたいのは。私はきっと碌な死に方をしないだろうから。私にとって一番大切なことを、一番大切な友人に任せたいのはさ。そう考えるのは、何もおかしなことじゃないはずだ」

 いつもそうだ。気づいた時には、この男の掌で遊ばれている。自分のペースを保っていると思い込ませて、最後の最後で種明かしを喰らう。断ろうものなら首が飛ぶ。私だけなら未だしも、友人の首まで危ういとなると、簡単には身動きが出来ない。

「さて、どうしようか。選択肢など、あってないようなものだと思うけれど。君は必ず、この部屋に戻ってくる。1度外へ出れたとしてもだ。そうだろう?」
「……映画ではね」

 森先生が、アーノルド・シュワルツェネッガーのターミネーターを知ってるとは思えなかった。1度外へ出れたとして。この男は、今ここで答えを求めているのだ。私が死ぬか、後を継ぐ契約をするか。だったら、答えは一つだろう。

「太宰くんの代わりは私がやった。私の代わりは誰かがやればいい」

 腰からぶら下げていた銃を取り出した。グリップの方を森先生に向けて。

「……面白いことをするね」
「どうした?握れよ。ポートマフィアのボスなんだろ?」
「これだけは選びたくなかったのだかね。君も私もせっかちなようだ」

 アンティークの一人掛けソファから音もなく立ち上がった。

「……この後、何か予定はあるかい?」
「これから、ボストンにクラムチャウダーを買いに行くんだ。悪く思わないでくれよ、オールドスポート」
「そうか。残念だよ、とても」
「……本当の私が分かるか?ドクター」

 死神が口を大きく開けていた。1発の銃声が部屋に響いた。
 これでおしまい ソロモン・グランディ


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