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「私が引退した後のことをたまに考えるのだが、後任は君しか居ないと思っている。コレでも君を買っているんだよ?」
「……辞めてくだい。後ろに立っている護衛の方がビックリしてます」
「本当の事なんだかね。私と対等に話が出来るのは、君しか居ないから」
「それは私がポートマフィアの一員でないからですよ」
「もちろんそれもある。斎ちゃんは一匹狼を気取っているつもりでも、君の本質を見抜いてのことだ。君は多を率いる事が出来る。だから、君の周りには人が集まる。それだけの実力と勇気を持ちながら、何故、未だにしがない武器商人で居られる?」
言ったろ。人の情が交わる所では、必ず良くないことが起きる。
「……今日の本題はコレですか」
「君は必ず私の下につき、いつかはこの椅子に座る。そういう運命だ。可哀想に、君の周りの人間は、必ず死んでいく。さながら死神のように、君の周りには死が纏わり付く。今までは、その死を先送りに出来たとしても、それもスグに終わりを迎える」
「サクさんのこと?太宰くんのこと?坂口くんのこと?それともアンドレ・ジイドのことですか?目の前の1を拾うのに全力を尽くすことの何が悪いのです」
「1が10になり、100になり、いつかは選択を迫られる。その時、斎ちゃんは必ず、その場の状況を見抜き、最も合理的な答えを出すことが出来る。今までだって、心の中ではそういう風に考えた事があるだろう?」
彼の言う通りだった。森先生は、私のことをよく知っていた。私が彼を理解できるように、彼も私を理解できるのだ。そんな相手に反論など無意味なことだった。
「五大幹部の方はどう思うでしょうね。もし、あなたが引退する時が来たとして、それは必ず来る未来のことですが、私が上に立ったとき、きっと彼らは疑問に思うでしょう」
「それを説き伏せることが出来る言葉と行動を、君はすでに持っているじゃないか。無理だとは言わせないよ。私は君を自分のことのように理解しているのだから。だからこそ、こうして君と対等に話をしている。私は君を唯一の友人だと思っているよ」
「その思いが、私の背中に乗っかってると思うと、夜もおちおち眠れません」
「眠れないのはいつもの事じゃない。目の下のクマを上手く隠せてると思った?結局、君は私と運命共同体というわけだ」
「素敵な響きですね。相手があなたじゃなければ最高だ」
「……はぁ。君だけだよ?私にそんなこと言うのは。だから、私は斎ちゃんが好きなんだ」
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