重い腰を上げてようやく冬服から夏服への衣替えを始めた。忙しさにかまけていたのと、春が一瞬で終わったせいで、普段より服の入れ替えが遅くなってしまった。春って、上着が必要なくらいには寒いのに、暖かくなるのは急だ。日本には四季があるけれど、最近は夏と冬がとりわけ長い気がするのはわたしだけじゃないと思う。衣替えついでに着ていない服は捨てていこう。わたしはクローゼットを開けた。これは着る、これは着ない、これは迷う、これは悟のやつ。とにかくクローゼットの中身をひっくり返して夏服を取捨選択していく。それにしても、昔とくらべると地味な色の服が増えたなあ。黒、白、ネイビー、グレー…。好きの代わりにいわゆる大人っぽさを手に入れたけど。
「わ、制服!懐かしい…」
もう引き出しの奥にしまい込んで何年経つだろうか、高専時代の冬服が出てきた。まるで埋葬されたかのようにわたしと悟の服の下に埋もれていたそれを取り出してベッドの上に放り投げておいた。衣替えが全部ちゃんと終わったら、久しぶりに袖を通そうかな。今日は悟も遅くなるって言ってたし、誰にも見せなければ許されるはず。日が暮れるくらいまでかかるかな、と思っていた衣替えは、そのあと一時間足らずで終えることができた。
黒のストッキングに足を通して、黒い制服を身に纏う。ワイシャツが見つからなかったので素肌の上から袖を通した。全身鏡の前で鏡に映った自分をまじまじと眺める。あの時のわたしとくらべると、どうだろう。昔の自分のことうまく思い出せないなあ。任務と任務と事務処理の日々に忙殺されて。
なんとなくくるくる回ってスカートがひらひらと動くのを見ていた。今じゃタイトスカートばっかりで、こんなふわふわとしたスカートを履くことなんてなくなってしまった。まあ、なかなか。まだいけるんじゃないの。楽しくなって脱ぐタイミングを失ってしまった。そして、玄関が開く音にも気付くのが遅れてしまった。
「あー疲れたー、だだいま」
「え、ちょ、悟!?なんで!?」
「名前どこ?」
玄関の方から疲れた悟の声が聞こえる。今日は遅くなるって言ってたのに。たぶん彼の足の長さなら、わたしのこの姿を見るまで十秒とかからないだろう。思考がパニックに陥り、上着すら脱ぐことが出来なかった。
「…はやく終わったから帰ってきたんだけど、それさあ」
「言わないで!言わないでください!」
「その格好で敬語使われるの、いいね、生徒みたいだ」
じりじりと近づかれ、後退するうちにベッドにへたり込んだ。図らずとも押し倒される格好になる。生徒みたい?悟に敬語使ってくれるのなんて悠仁くんと恵くんくらいなのに。
「ほら、名前、先生って呼んで」
「馬鹿じゃないの…」
「先生にそんな口の聞き方するわけ?」
「されてるってば、真希ちゃんとかに」
「それもそうか」
「…先生なら、生徒にこんな風に近づかないでしょ」
「どうかなあ、名前、いいにおいがする」
「さとる、ちょっと」
「んー?先生って呼んでよ、そしたら満足するから」
こうなったら何がなんでもわたしの上から退かないだろうな。はやく、と言わんばかりの顔でわたしを見ている。観念してわたしはつぶやいた。
「…せんせい」
悟は目を丸くする。悟が言えって言ったんでしょ!そして、目を細めて口元を歪めた。
「あ、やばいかも」
「なにが!?」
「わかんない?」
「ん、っ…」
わかってる。わかってるけど、この格好で致すのは気が引ける。アブノーマルな領域に足を踏み込んだ気がして。制服着てたのもう何年前なんだろう、すぐに計算できなくなっているな。唇を角度を変えて何回も重ねる。そうしているうちにすぐに酸素は足りなくなって、思考が回らなくなっていく。
「脱がせるのもったいないな」
「ひ、ぁ」
制服の上着の下の方からおおきな手が入ってくる。想像と違った感触に少し驚いたような顔をした。
「悟、まだ三時なんだけど、んっ」
「素肌に制服って、オマエさあ…」
「…ワイシャツ、見つけられなかったの」
「新しい性癖に目覚めそうなんだけど、責任とってくれるわけ?」
ブラのホックだけが外されて、遠慮なく、でも少し窮屈そうに乳房を揉みしだかれる。制服と指が先端をかすめて変な感じだ。そして、自分でもびっくりするくらい心臓がとくとくと脈を打っている。羞恥心が快楽を煽っているようだ。タイツの上を手のひらが滑っていく。その動きに、いっそう熱い吐息が漏れ出した。たまには、こういう普通じゃないのも、いいかもしれない。
「タイツ破くよ」
「うそでしょ…」
「また買ってやるって」
「そういう問題!?」
ビリ、と普段滅多に聞くことがない音を立てていとも容易く暴かれていく。太腿に沈み込んでいた指は、下着の上をなぞり始めた。ねえ、もしかして興奮してる?と聞かれたので、素直に頷いた。先生としての悟をほとんどしらない。先生、気持ちいいこと教えて。わたしは耳元で囁いた。
「あー、かわいい、名前」
「ゃ、やっ、ん」
「嫌なの?じゃあ我慢して」
下着を横にずらし、長い指でゆるゆると攻め立てられる。そこ、きもちいい。意図せずに腰が浮いて、直接的な快楽を享受していく。
「いっ、いぁ、ん、んんっ」
「イっちゃった?やらしい生徒にはお仕置きが必要かな」
「…ん、」
「くわえて」
簡単に達してしまった。悟のことを馬鹿と言ったが、わたしも大概だ。興奮して敏感になっている気がする。
いつもより少しだけ乱暴にわたしの後頭部に手を添えて身体の中心に導かれた。唇を寄せて、舌と指を這わせると、頭を大きな掌が滑っていく。
「いいこ」
「ふ、っ…ん」
いいこ、だなんて。本当に生徒みたいだ。わたしは悟と違って模範的な生徒だったのでいいこいいこ、と言って褒められると昔に戻ったみたいで身体が疼いているのがわかった。悟の性器を喉の奥まで押し込んで、指で上下に扱く。口を窄めて、頭を上に下に動かす、しばらく緩急をつけてそれを続けた。名前、一旦離れて、という声を聞いて、わたしは一度唇を離す。
「フェラして興奮したの?濡れてるけど」
「せんせ、見ないで…」
「…ぞくぞくしてきた」
「んっ」
手招きされるままに制服を一切脱がず、悟の上に跨る。ショーツを横にずらして、そこから熱い性器が押し入ってくる。十分に慣らされたはずなのに下腹部が圧迫されて苦しい。腰を落として根元まで挿れるまでにいつもよりも時間かかった。
「ぜんぶ入ったよ?大丈夫?」
「んゃ、やば、おっきい…あっ」
「今、すっごい興奮してる」
「まって、ゆっくりして、五条せんせ」
「…無理でしょ」
「い、ぁあっ」
腰を突き上げられると、ぐっと奥まで届いているような気がした。胸のあたりに手をついて、腰を上下に動かしていたけれど、わたしの緩慢な動きでさえも刺激が強くて参ってしまう。
へたくそ、と言われて下からの突き上げが激しくなって奥の方を抉られる。
「あ、ぁ、んっ」
「昔の僕、こんなに可愛い名前とヤってたの?嫉妬するんだけど」
「ばか、ん…っ」
「まだそんなこと言える余裕あるんだ」
ちゃんと目をあけてこっち見て、とわたしの頬に手が伸びる。こんな切なそうな顔をした悟、初めて見たかもしれない。僕もすごい興奮してる、わかるでしょ、その言葉にわたしは無言で首を振る。言葉がうまく出なかった。下腹部の痙攣が止まらない。一層強く打ち付けられ、頭が真っ白になる。繋がっている部分が震えて、吐精したことがわかった。
「…先生、ん、きもちよかった」
「なんでそういう事言うかなあ」
「もういっかい、したい」
めちゃくちゃにして、という気持ちを込めて、首筋を舐め上げる。悟は困った生徒だなあ、と笑ってわたしたちはもう一度抱き合った。
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「高専の時の名前は可愛かったなあ」
「えー、今は?」
「今は、綺麗になったよ、僕の想像よりずっと」
あの時よりも暗くなった髪の毛の色、爪をオーロラが彩っていること、ハイヒールを履かなくなったこと、シックな色使いの服が増えたこと。そんなわたしの今を綺麗になったと言ってもらえるのはたまらなく嬉しい。
明日もあなたの中のわたしの記憶を少しずつ美しく塗り替えていけますように。思い出の中のわたしよりもすてきなわたしでいられますように。さらさらと流れる銀色の髪に指を通しながら、悟は昔よりずっと優しくなったね、と伝えた。もうすぐこの部屋にも、制服を脱ぎ去ってから何度目かの夏が来る。
20200411
折り目正しい誘惑
(title by にこごり)
リクエストありがとうございました!遅くなってしまい申し訳ありませんでした…!五条悟さんのことがわからなくなって迷走しましたが、楽しんでいただければ嬉しいです!リクエストいただいた時、天才だ…!!と思いました
いただいたリクエスト内容が五条悟が同期の彼女に制服着せて先生って呼ばせるっていう最高にえっちなものでした ふふふ