※キスの日、短いしエロくないです
あわよくば、かわいいと言ってほしい。そんな下心を込めながらピンクと赤と中間のような口紅を塗った。
先輩、気づいてくれるかなあ。先輩はいつもわたしがどんな服装しているかとか、化粧してるかとか、興味なさそうだ。あまり褒めてくれないし、たまにはほめてくれないかなあ。硝子先輩に相談したら、手っ取り早いのは化粧変えることじゃない?と言われたので新しい口紅を買った。睫毛もいつもよりばしばしに整えた。
「先輩、見てください」
「…なに」
「どうですか?」
「だから、なにがだよ」
はあ、ため息が出る。わたし、そんなに変わってないかなあ。それとも、先輩、女心がわかってないのか。いや、先輩はきっと今まで女心なんてわかる必要なかったのだ。先輩なんて黙って突っ立ってるだけでも女の人は寄ってくる。
「口紅とか、変えたんですけど」
「部屋にいるだけなのに?」
「…先輩に褒めてほしかったんです」
「どうせすぐ取れるだろ」
ああもう、やっぱり先輩は女心が分かってない!
「今日は絶対キスしませんからね!」
「何怒ってんだよ」
「この口紅の色、気に入ってるし、落としたくないので」
「…唇以外にならいいわけ?」
「え、あ、たぶん…?」
「ふーん」
「わ、」
色気のかけらもない声だと笑われた。
先輩の唇は耳、首筋、喉元と降りていく。くすぐったい。いつだったか、くすぐったいは気持ちいい手前なのだと聞いたことがある。鎖骨をべろりと舐めあげられた時、ついに声をあげてしまった。熱くて気持ちがいい。
「まだキスしたくならない?」
くそう。丁寧に作り上げたわたしを台無しにするのはいつだって先輩だ。
どうせすぐに口紅の色なんて取れる。先輩のその言葉通り、わたしの唇がピンク色じゃなくなるのは、本当にすぐあとのことだった。
20200523