※メイドの日
※頭を空っぽにして読んでください…
「あ、せんぱ…ご主人様、おかえりなさいませ」
「…なんの冗談だよ」
「明日からメイド喫茶に潜入捜査なんです、メイド服可愛いですよね」
「俺、聞いてないんだけど」
「わたしもさっき聞いたので」
名前の部屋に行くとメイド服を着た彼女が鏡の前でくるくると回っていた。丈が長いクラシックなメイド服だ。名前は呑気にこの服可愛いですよね、一回着てみたかったんです、と笑っている。
メイド喫茶に潜入捜査?なんだよそのふざけた任務は。思ったより名前は乗り気だし。
なんでも、潜入予定のメイド喫茶で呪詛師が度々目撃されているらしい。対象の呪詛師も任務内容も信じられんねえ。俺は頭を抱えた。
「先輩、練習に付き合ってもらえます?」
「なんの…」
「接客とか?」
正直に言って、丈が長くフリルの飾りを抑えたシックな配色のメイド服よく似合っている。ただ、胸のすぐ下のところでギュッとウエストを絞ってあるせいで胸が強調されていた。清楚だからこそ艶やかに見えてしまう。
この服装で、媚びた声で、ほかの男にご主人様だなんて言う名前のことを想像したら腹の底からふつふつと怒りがこみ上げてくる。なんでそんな任務引き受けたんだよ。
「接客って、なにするわけ」
じりじりと彼女の方に近づいて壁に手を縫い付けた。はじめは抵抗していたが、すぐにその抵抗を無駄だと悟ったようだ。名前は不安そうに眉を顰めている。もちろん乱暴するつもりはないけれど、こいつの不安そうな表情は加虐心をくすぐられる。
「えっと、お茶をお出ししたり、ご飯を運んだりっ…ん、いたっ…」
「続けて」
「あとは、料理が美味しくなる魔法の呪文を唱えたり…っふぁ」
手を抑え付けたまま、首筋に噛みつく。噛み付いた場所をべろりと舐めあげれば甘い声が漏れた。柔らかなスカートの上から太腿をゆっくりなぞりあげると、本人の意識とは別のところで体が震えた。これも名前は意識していないだろうけど、俺を睨みつける顔が扇情的だった。ごくり、と喉が鳴る。
「おまえ、そんな生意気な顔でメイドの仕事務まると思ってんの?」
「…ん、んんっ」
「やらしい顔」
行くなよって言いたい。いや、わかってる。彼女が適任だと認められたから選ばれているわけだし、そもそも一般人にどうこうされるような心配をしているわけでもない。ただ、名前が媚びへつらった顔を他の男に向けると思うと、手首を抑えている手に自然と力がこもる。
「先輩、手離してください」
うっすらと涙の膜が名前の瞳にできていることに気がついて、咄嗟に手を離した。
ねえ、わたし、そんなに信用ありませんか。
名前が入学してから、そこそこ長い期間過ごしてきたけれど、こんな悔しそうな顔をした彼女を見るのは初めてだと思う。ああ、また泣かせてしまった。
「…悪かったよ、お前の実力を信用してないとか、そういうんじゃないから」
「じゃあなんで怒ってるんですか」
「彼女が、他の男に対してご主人様って言うの、嫌だろ、普通」
「…ふふ」
「何笑ってんだよ」
「これ嫉妬してもらったって思っていいんですよね?いつも先輩余裕しゃくしゃくって感じなのに」
余裕があるように見えるんだろうか。いつだって、俺は振り回されてばっかりだよ、おまえに。
「今更任務断ることもできませんし、先輩以外の人のことをご主人様って呼びますよ」
「…わかってるって」
「でも、それはそれとして、この格好のまま致したら楽しいと思うんですけど、どうですか」
ため息をつく暇もなく唇が重なった。名前は楽しそうに笑っている。
どう考えても、おまえのほうが余裕あると思うんだけど。
20200517
(20200823に加筆修正を行なって再公開致しました)
そのうちメイド服着たまま致す部分を加筆したい。