麗しの重力

※高専五条、浴衣、青姦



 火照った空を光でこじ開けたら溢れ出したのはまるでどろどろに煮詰めたジャムのような恋だった。
 夏の夜、頬をかすめる風の音、ここで朽ちる光。花火というのは、どうして人をこんなにも感情的にさせるんだろう。
 晴れた夜空に金色の枝垂れ桜がかかっては、白い煙となって風に流されていく。こんなにたくさん人がいるのにみんな空を見上げていた。悟に綺麗だね、と声をかけようと思ったら彼だけはわたしの方を見ていたので、その眼差しに笑顔で応える。

 今日は悟に浴衣を着せてもらった。近所の花火大会に浴衣を着て行きたい、とわたしがわがままを言ったら意外にも楽しそうになんなら着付けする、と申し出てくれた。簡単な着付けならひとりでできる。けど、差し込むタイプの帯だと可愛くないので、悟が結んでくれるなら万々歳だった。紺色の雪花絞りに白い帯。髪の毛はサイドを三つ編みにして下の方でお団子にした。夏らしいライムとバジルの香水を首筋にのせる。

「これ、なんていう結び方?すごい可愛い」
「花結びって言うんだけど」
「名前まで可愛いね」
「女は色々結び方があるよな」
「悟は器用だねえ」
「似合ってるよ、先輩」
「えー、今日はなんだか怖いくらい優しい」
「いつもだろ?」
「まあ、そうかも」
「俺、和服好きなんだよね」

 悟と手を繋いで花火大会の場所まで歩いていく。身長差もあるけれど、今日は浴衣に下駄を履いているのでいつもに増して歩くのが遅い。悟は窮屈そうにわたしの歩調に合わせてくれていた。歩くの遅くてごめんね、と言うとたまにはいいんじゃね、と言って手を握る力を強くした。やっぱり今日の悟は優しいなあ。いつもなら、とっとと歩けよ、くらいは言いそうなのにね。

 花火大会も中盤、悟があっちに人が少ない穴場があると言うのでかき氷を片手についていく。階段を登って辿り着いたのは、地元の人しか知らないような小綺麗な公園だった。ベンチに座って花火を眺める。人混みの中、かき氷を食べながら見る花火も綺麗だったけれど、さっきとは違った角度で見る花火も、趣があっていい。なぜか悟は真っ直ぐわたしを見つめていた。

「花火があがるたびに、先輩の汗が光って、エロいな」
「は?何言ってんの」
「あーやっぱヤりたくなってきた」

 そう言ってうなじに唇を寄せて、べろりと舐めあげられる。汚いから、やめて、というわたしの制止はまるで意味をなさなかった。首筋から心臓を経由して脳まで快楽を甘受してしまった。全然嫌そうじゃねえじゃん、先輩。悟は唇の端を上げる。

「悟、待って、ここで?」
「誰もこねえよ、こんなとこ」
「そういう問題かなあ」
「ほかに問題ある?」
「帯が崩れるし」
「誰が結んだと思ってんの?」
「…ゴムとか」
「持ってるっつーの、もう我慢したくないんだけど」
「でも、」
「先輩、いい加減黙ってくんない?」

 後頭部を抑えつけて、舌を絡める。さっきまで食べていたかき氷の甘い味がする気がした。あつい。暑くて上手く息ができない。悟の胸を腕でたたいて、苦しいと伝える。

「っはぁ…」
「顔真っ赤だけど、のぼせちゃった?」
「…のぼせちゃった、かも」

 胸元からいとも容易く長い指が侵入してくる。鎖骨をなぞり、胸の谷間を上から下に滑らせていった。緩やかに、的確に、やわやわと乳房を掴んだと思えば、人差し指と親指で先端をぐにぐにと摘まれる。脳がざらつくような、そんな快楽だ。

「っ、さとる、」
「浴衣はいいよな、どこからでも手が入るし」
「や、」

 太腿あたりの浴衣をまくり上げられ、悟の指は一瞬で秘部に到達して、下着の上から上下になぞりあげられた。なんだ、下着履いてんの、と残念そうな顔をする。和装は下着履かないのが常識だろ?なんて、何年前の常識だ。悟が和装好きって言ったのは、なに?そういうこと?馬鹿だなあ。それで、ちょっと可愛いなあ。

「着付けしてる時から我慢してたんだからな」
「嘘でしょ…、ん、んぁ」
「嫌って言うわりにびしょびしょなんだけど」
「んぅ、うるさい…」
「外でするの、興奮してるわけ?」
「…ん、そうかも」

 近くにあった木に手をついて、腰を高く上げて、悟を手招きする。はやく挿れて、もうわたしだって我慢できない。何も言わなくてもわかってくれたようで、手早く浴衣を横にズラして、質量をもったそれが秘部をぐちぐちと押し広げていった。

「さとるの、あつい、ん、んぁ」
「あー、きもちいな、これ」

 なんて性急で、乱暴な動きだ。腰を両手で掴まれ、好きなように打ちつけられている。それがたまらなく気持ちいい。悟が興奮しているのが伝わる。
 しばらくだらしなく嬌声をあげていたが、木の向こう側から人が来るのが見えて、わたしは大きく息を吸い込んで、唇を噛む。誰も来ないって、言ったじゃない!

「悟、人、来た、んん」
「名前先輩が黙っとけば、バレないって」
「や、最低…」

 ごちゅ、ぐじゅ、と相変わらず動きを緩める気配がない。大きく引き抜いて、最奥まで穿つ。気持ちいいのに、それを伝えることもできない。

「ん、んぅ、んん、ん」
「すっげー締め付けてるんだけど、人に見られて興奮するタイプなの、先輩は」
「ちが、ちがうから…ん、」

 わたしは必死に声を殺そうと自分の腕に歯を立てる。必死に声だけは抑えても、肌と肌がぶつかり合う音や、わたしの喉から溢れる甘い声はどうしても抑えきれない。

「なんだよ、あっちもよろしくしてるじゃねーか」

 先輩、声我慢しなくていいよ。
気づけば先ほど来た男女も嬌声をあげていた。なに?ここ、そういうので有名な場所なの?もう知る由もないけれど。
 震える肩を腕でがっと掴まれ、より一層律動が速くなる。この体勢で挿れられると、一番奥までぐりぐりと突かれて、それがたまらなく痛くて気持ちいい。全身をがくがくと震わせてあられもない声を出して達してしまった。悟の動きもそのうちゆるゆると緩慢なものになって、行為が終わったことを知った。いつもなら、このまま倒れ込んでしまうのに、それも許されない。

 気づけば花火大会は終わっていた。最後の特大花火を楽しみにしていたのに。まあ、それは来年の約束にしようかな。

「疲れた、動けない…」
「悪かったよ、先輩、ほら」

 しぶしぶ悟の背中にしがみつく。悟の汗のにおいとわたしの汗のにおいが混ざり合ってなんだか不思議な気持ちになった。気怠さが拭えない。重力のままに彼の背中に身を預ける。悟は眼下にぶらさがるわたしのサファイアのような深いブルーにゴールドのラメをまぶしたペディキュアを見て、今日の夜みたいだと笑った。夏の夜、頬をかすめる風の音、花のように結ばれた浴衣の帯、汗のにおい、麗しの重力。心臓の音がとても落ち着く。まぶたが重い。寮までの帰り道の間に、わたしも悟もこの夜に溶けてしまいそうだ。



20200301
麗しの重力

いただいたリクエストは五条悟と和装でいちゃいちゃする、でした!浴衣エッチ、書くのちょう楽しかったです!!!!