昔、一度だけ。
父が私を母のステージに連れて行ってくれた事がある。
ステージ上で歌う彼女の姿はキラキラと輝いていて。
声は美しく澄んでいた。
この世界で一番尊いと思えた、その光景は、何年も経った今だって脳裏に焼き付いて離れない。
そして彼女の歌を聴く人々は皆一様に笑顔だった。
そこには幸せが満ちていた。
あんな風になりたかった。
誰かを幸せにできる歌が歌いたかった。
でも、私が歌った後には何も残らない。
喜びも、悲しみも。
何一つ。
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