3.2

とても奇妙な男だった。

年齢は多分10代半ば。

隣町の中高一貫の私立校の制服を着込んでいる。

顔は整っていて、普通にかっこいい。

ここまでは特に特筆するべき点はない。

しかし、その頭に猫耳を生やしていて、腰に尻尾が生えている、とくれば。

そいつを視認した途端、ペペがややの耳元にすっ飛んできて、小声の早口でまくしたてる。


『度し難い変態がいるでちゅよややたん、はっはやく警察にいい!!児童誘拐事件に巻き込まれる前に早くー!』


その剣幕に、ややはやんわりとこう答えた。


「まってまって、落ち着いて。
問題はそこじゃない。格好なんて人それぞれだし個人の自由だよ。
ややにそういう偏見はないの。
それよりさ、大事なことがあるでしょ?思い出してみて。
この人は木の上から落ちてきた。
もしかして、私の号泣シーン及びよだれかけ+ガラガラ装備シーンを見られていた可能性があるんだよ?もしそうなら早急にフルスイングして記憶を消し飛ばさなきゃ」


静かに決意を固めてややは男にキッ、とした視線を向ける。

読めない表情でじっと、こちらを見つめてくる男の肩口から高い少年のような声がした。


『ニャんだ?オマエラこそこそと』


こぶし大の猫耳少年。

アレは、

『あの男!キャラ持ちでちゅ!!』


キャラ持ち……!

なら、ぺぺの姿は見えている。それに巨大ガラガラを振り回したのも×たまを封印するためだと分かってくれるし、キャラチェンしたが故のしかたない号泣だと察してくれるだろう。


それに、あの男の猫耳もキャラチェンの産物だと思われるし、その点について男に言われても恥ずかしくない。


号泣より猫耳の方がよっぽど恥ずかしい、ような…気がしないでもないし。


よし。理論武装完了。

ひとまず殺る必要はない。

でも怪しい奴だということには変わりないので、警戒した態度をとる。


「それで、私に何かご用ですか」


「……別に、お前に用はない。
オレは、とり逃がした×たまを追ってきただけ…」


つかみどころのない男の言葉をそのしゅごキャラが補足する。

『そーしたら、オマエらが先にガラクタを封印してたって訳だニャ』

「はぁ!?」

あまりの暴言に耳を疑った。

こいつらがそう言う本当の意図なんか分からない。

けれど、×たまをガラクタなんて言う連中にロクな奴がいる訳ない。

間違いない良くない奴だ。

ますます警戒して睨みつける。


「×たまはガラクタなんかじゃないでしょ」

イライラしてそう口撃すると、猫耳しゅごキャラが反論してくる。

『ハァアー?ガラクタだニャ!
エンブリオでもしゅごたまでもニャいんだから』


エンブリオ…その言葉に、ハッとした。

唯世の話じゃイースターは、エンブリオを狙って子供たちの心を抜き出している、らしい。

取り逃がした×たまに、エンブリオ。

こいつらまさか。

「…貴方たち、イースター…なの?」


そういった瞬間、今まで無表情だった男が意地悪そうに笑った。

「へえ。お子様キングに教わったのか?新ガーディアン」

お子様キング…キングっていうからには唯世の事だろう。

嫌なあだ名だ。

それにしても。

「や、やっぱりあの極悪非道の宗教団体!!…ついにエンカウントしちゃった…こわいぃ」

辞書で調べて得た予測通りなら捕まったら大変なことになる。

『弱気になっちゃだめでちゅ、ややたん!!もし捕まったら、生贄にされ、魔王を呼び出される恐れがあるんでちゅよ!?』

「わかってる!!こんな所で死ぬ訳にはいかないもん。まだやりたいこといっぱいあるし!!」


ややは半泣きで叫んだ。


「…ヨル。イースターって、そんなんだったか…?」


『そんなことある訳ないニャ、イクト!!おい、オマエらはいったい何て吹き込まれたんだニャ!?』






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