※本誌最終話ネタバレ多少含みます。
竃門炭治郎、キメツ学園に通う優しくて礼儀正しい男の子。実家は竈門ベーカリーというパン屋さんで6人兄弟の長男、そして私の幼馴染みで好きな人
「たーんーじーろぉー!」
「おはよう、名前」
抱き着こうと炭治郎に駆け寄るとサッと避けられて爽やかに挨拶、これは日常茶飯事。私は物心ついた時から炭治郎だけが大好きで炭治郎だけが私の中の男の子で大好き過ぎて何度か真剣に告白もしているのに「ありがとう、俺も好きだよ」と私とは違う意味合いで返してくる次第だ。人の色恋沙汰は匂いでわかるのに自分のことになると鈍感なんだよなぁ。
それでもいい、炭治郎とクラスは違うが朝学校に行ったり放課後とかお休みの日は一緒に勉強したりパン屋さんのお手伝いをしたりで常に一緒にいれるから満足している・・・・・というのは嘘で高校生になってからは手を繋ぎたいキスをしたい恋人同士のデートがしたいと年相応の悩みが出てきた
「炭治郎、避けるなんて酷い!」
「異性にみだりに抱きつかないことっていつも言ってるだろう!」
「んー。はーい」
最近の炭治郎は抱きついたり触ったりをあまり許してくれない、それこそ中学までは常にべったりくっついていたのに高校生になってからはこうで、どうやって隙を見て抱きつこうかなとか考えているとため息を吐かれてしまった。また匂いで感情を読み取ったな!
「女の子なんだから、自分を大切にしないと。あと匂いじゃなくても名前は顔に全部書いてあるからすぐわかるぞ」
「はいはい。でも炭治郎だからいいの、大好きなんだもんしょうがないじゃん」
ため息を吐いていたと思ったら私の大好きという言葉に反応して炭治郎が破顔するから
さっきまでの邪念も消えてお互い笑い合う、この暖かくて優しい空気が大好き。
学校では私が炭治郎を好きというのは周知の事実なのであまり突っ込まれたりしないが同じクラスで友達の梅ちゃんには毎朝呆れられてる。
「あんたまたあのブスと一緒に登校したの?」
「炭治郎はブスじゃないよ、カッコいいよ」
「そんなことばっか言ってるから、名前はモテないのよ。黙ってれば可愛いのに残念な子」
「わぁい!梅ちゃんに可愛いって言ってもらえた!」
「あんたほんと馬鹿だわ」
梅ちゃんとは高校生になってから仲良くなったのだがこうやって思ったことを口に出してくれるから有難いし、梅ちゃんは実は根は優しい。
「いい加減これだけ一緒にいてわかってもらえないんだから諦めればいいのに」
「どうやったら諦められるのかが全くわからないし、諦めたくないよ」
「諦めなきゃいけないときが来たらどうすんの?例えばだけどあのブスに女が出来たらあんた邪魔者だよ」
「うっ…!」
わかってる、炭治郎は優しくて誠実だから天然タラシだし実は隠れファンが多い。理解はしてるけど想像がつかなかった、今まで炭治郎と恋人同士になるのは自分であるだろうという絶対的な自信のままこの歳まで片想いを続けてきた。でも実際問題、高校生になってからは炭治郎との時間も少しづつ減ってきているし炭治郎は驚くべきコミュニケーション能力を持っているから顔も広い。
彼女が出来るというのもありえない話ではない・・・想像は出来ないけど
「炭治郎に彼女とか私以外想像出来ない・・・」
「ふーん、後で傷ついても慰めないからね」
「梅ちゃんが慰めてくれたことなんてあったっけ?」
「あんたが単細胞だから落ち込まないだけでしょ」
「へへっ」
「本当にあんなブスがなんで良いのか理解出来ないわ」
「梅ちゃん!恋は理屈じゃないんだよ、もう気づいたら好きっていうか魂が求めてるというか!」
「やっぱ馬鹿だわ」
梅ちゃんの笑った顔は国宝級の可愛さ、馬鹿と言われたことより梅ちゃんの笑顔に見惚れていると「馬鹿は馬鹿同士お似合いなんだから早いとこくっつけばいいのよ!」と照れ隠しに怒られた、梅ちゃんはやっぱり優しい。なんだかんだ応援はしてくれてるみたい!
梅ちゃんと昼休みを過ごしそのまま移動教室の為に廊下を歩いていると中庭に炭治郎の姿が見えた。
「炭治郎だ!・・・あれ?」
炭治郎は誰かと一緒にしゃがんで、なにやら話し込んでいる
「あれって、栗花落先輩と・・・猫?」
「・・・・っち、あのブスやっぱ嫌い」
炭治郎と栗花落先輩が猫を撫でて談笑しているようだった。
あの猫はキメツ学園でよくみかける猫で誰かが茶々丸とか呼んでいた気がする。
でも今はそんなことより2人から目が離せない、先ほど梅ちゃんに自信満々に魂が求めてるなんて言ってしまったが私よりもよっぽど魂が求め合っているだろうと思えるぐらい2人はお似合いだったのだ。それこそ前世から一緒にいたような雰囲気を感じる。
直感で敵わないと理解してしまう、胸が苦しい。人に向けては絶対に駄目な黒い感情が渦を巻きながら身体中を支配する、気づいたら目からは大粒の涙が溢れていた。
「だから言わんこっちゃないのよ!ほら、行くよ!」
梅ちゃんが立ち尽くす私の腕を掴み強引に引きずる
そこからは他の事を何も考えられず先ほどの光景がずっと脳裏に焼きついていた。
春うらぶれて溶ける魔法 1
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