炭治郎の好きなところは沢山ある、まずは誰にでも優しいところ。関わった人を誰も見捨てないところ。家族を大切にするところ。私のことを家族のように大切にしてくれるところ、誰にでも優しいけど私には厳しくもあるところ。他にもいっぱいあるけど好きになる理由なんてどれかが明確なわけじゃない、炭治郎の全てが大好きで掛け替えの無い存在なのだ。
確かについこの間まではお付き合いしたいと思っていたが、それよりも何より幸せになってもらいたい。長男で苦労ばかりの彼には少しでも笑っていてもらいたい。



「お茶でいい?」
「あぁ、ありがとう」
「「・・・・」」

例のごとく両親は今日もどこかに出張で居なく家には炭治郎と2人きり、伝えたいことはあるがこういうときに限って言葉が出てこない。
普段無言も心地よく感じるが今日ばかりは居た堪れない気持ちになってしまう。最初に口を開いたのは炭治郎の方からだった。

「・・・名前は俺のことが好きで間違いないか?」
「え、うん。炭治郎のことはずっと大好きだよ」
「それは、男としてだよな?」
「・・・そうだよ、何も間違ってない。」
「今まで気づいて居なくてごめん、名前から感じる甘くて心地のいい匂いは俺に対する信頼とか家族愛のようなものだと思ってたんだ」
まっすぐでまんまるな瞳と目が合い反らせないでいると炭治郎が真っ赤な顔のまま言葉を続ける。
「幼いころから一緒に居たから、ずっと変わらない匂いだったから気づけなかった。」

私は振られるのかな、心までまっすぐで誠実な炭治郎は嘘が付けない。今まで気づかなかった私の思いに応えようとしてくれている。

「俺自身も自分の気持ちに気づいて居なかった、だけど今ならわかる・・・
俺も名前が好きだよ、女の子として」
「うん・・・っえ!?」
「名前が好きだ、多分ずっと昔から」

炭治郎が私を好き?彼からの目線には恋慕の情を感じるし、嘘を付けないのは私も良く知っている。疑っているわけじゃなく、今までの経緯を考えると信じられないという気持ちが勝ってしまう。

「で、でも!栗花落先輩は・・?」
「え、カナヲ?どうしてカナヲの名前が出てくるんだ」
「だって、凄くお似合いで、ずっと一緒にいたようなそんな雰囲気を感じるし、名前だって・・・」
「確かにカナヲには、初めて会ったとき何処かで会ったことのあるような安心出来るような存在だし、一緒にいて優しい気持ちになれるが、名前への気持ちとはまるで違う。名前には他の男の人と一緒にいる所は見たくないし、ずっと俺の側に居て笑っていて欲しいと思ってる」
「炭治郎・・・」

これは夢じゃない?色んな感情が出てきてしまい涙が溢れてくる。確かに私は今、炭治郎に告白されているんだ
「好きだよ、俺と付き合ってほしい。」
「うぅ・・ひっく、うっ・・はい!」
「本当に名前は昔から泣き虫だな」
抱き締められてもっと涙が出てくる、1人で勘違いして暴走して恥ずかしいけど
私は炭治郎と両想いになれたんだ。嘘みたいだ。






「落ち着いた?」
「・・・・うん」

少し冷静になって、抱き締められてる状況にドキドキしてしまい顔を上げられない
自分で抱きつくとは打って変わって抱きしめられるといのはとんでもない破壊力。

「聞きたいことがあるんだけど、なんであの妓夫太郎さんと言う人と一緒に居たんだ?」
「えと、妓夫太郎さんは梅ちゃんのお兄さんで、炭治郎と栗花落先輩の関係を勝手に勘違いして落ち込んでた私に梅ちゃんが諦めるなってイメチェンを考えてくれて妓夫太郎さんはその運転手をしてくれたの」
「そうか、名前からその人匂いが強く感じて。その・・・お互いを抱き締めないと感じないような匂いがしたから」
「?、抱き合っては無いけど・・・あっ!」

炭治郎が強く怒っていたのは嫉妬による感情だったのだ、感じたことのない高揚に身体が熱くなる。
「多分、バイクの後ろに乗ったとき落ちないように後ろから抱きついてたからだと思う」
「今後一切、男の人のバイクの後ろに乗っちゃ駄目だ!可愛くなるのも、出来るだけ俺の前でお願いしたい!」
お互い顔を見合わせて赤面する。炭治郎は少し怒っているが恥ずかしいのか真っ赤な顔をしている。

「炭治郎こそなんで私の好きの意味に気づけたの、今までも何度も告白したのに気付いてくれなかったよね?」
「名前が妓夫太郎さんを真っ赤な顔で見つめた時に名前の笑顔とか可愛らしい顔も照れてる顔も他の誰にも見せたく無いって思って、あれは・・・俺に恋してる顔だったんだって気づいたんだ。」
「っ、恥ずかしい!」
「今思えば、名前俺に抱きついたりくっついたりするの駄目って言ってたのも他の人にしてほしくなかっただけだったんだ、不甲斐ないな俺は」
「・・嬉しいよ、だって炭治郎がそんな風に思ってくれるなんて夢みたいだもん」
「名前は本当に可愛いな」

しばらく見つめあった後に炭治郎の顔がゆっくり近づいてくる。
「・・・っん」
「名前、一生大事にするよ」
「うんっ、炭治郎大好きだよ」


そしてこれから文字通り私も一生、梅ちゃんに頭が上がらないだろう。




Fin





春うらぶれて溶ける魔法 3







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