ねぇ、振り向いて。 01









私の青春の中心は常にブレずに実弥一筋だったし高校生活が今年で終わろうともそれが変わることなんて無かった。
単なる年上への憧れじゃない、長年の恋はそんな簡単に崩れない。振り向いてもらえるまでとにかく頑張るしかないのだ

「はぁぁあ、実弥すき…なんでそんな可愛いお顔してんの」
「………先生って呼べェ」
「その釣れないところも好き、私を不死川名前にしてよ」
「ガキを娶るつもりはねぇなァ」
「実弥のペットでもいい、可愛がってー!」
「なっ!馬鹿言ってねぇで勉強しろォ!」

ぼかっと頭を殴られても、全然痛くされてはいない
そんな風に厳しくみえても甘くて優しい実弥が大好きでこの想いはずっとずっと変わらないって信じてた。









私の向かいの家に住んでいる不死川一家の長男の実弥、いわゆる私と彼は幼馴染という関係なのかな。でも私は実弥の生徒でもある、最初こそ大好きな実弥と学校でも会えるなんて!って喜んでたけど私は実弥の学校の生徒になったせいで彼のその他大勢になってしまった。
基本的には夜遅くまで家に帰ってきてないみたいだし、昔みたいに顔を合わせることも無くなって寂しさを糧に猛アタックしてるけど全く響かない、靡かない、生徒としてしかみられない。
玄弥には「卒業してからまた告白すればいいんじゃねえの?」なんて生温い事言われたけどそれじゃ遅い、卒業したらもっともっと会えなくなるのは明白だしもたもたしてたら他の人に盗られちゃう。恐そうに見えるけど実弥はよく見ると睫毛も長くて切れ長ぱっちりおめめだし顔も整ってるし着痩せ細マッチョ体型だし情に熱くて優しい。特に・・・女子供に!そんなのモテでしかない!駄目なところが見つからない、今までだって実弥に彼女が居た時だってあったけど基本的に実弥は家族や私を優先にしてくれていたから悔しくて悲しくても乗り越えられた。でも・・・今の実弥の中心は教師の仕事だしこの先彼女が出来たら結婚だって考えるだろう。

そんなの耐えられない、私の好きな気持ちは誰にも負けない!


「実弥!うちのクラス次数学だよ、荷物運ぶの手伝うね!」
「馬鹿野郎がァ、不死川先生って呼べ!」
「すぐげんこつするんだから!でも全然痛く無いよ!」

エヘヘと笑うと実弥からは溜息が漏れた。
数学の授業の前はこうやって職員室に赴き実弥と教室までお供するのだ。ただでさえ一緒にいれる時間が少ないのだからこうやって努力しないと視界に入れてもらえない。
そして実弥は毎度溜息はつくけど無碍にはしてこないから私も調子に乗る、本当に嫌ならとことんボロボロに言うタイプの人間だからこのぐらいなら許容範囲で許してくれてるんだと勝手に解釈することにした。












「実弥はお正月はちゃんと家に居る?」
「あァ、学校も冬休みだしなァ久しぶりにゆっくり出来る」
「やった!ねぇねぇ朝一で初詣行こうよ!」
「・・・皆でなァ」
「ちぇっ、わかってますよーだ!」

もうすぐキメツ学園は冬休みに入る。休みの間は仕事があっても結構早く帰ってきてくれるから嬉しい、この間クリスマスは家族で過ごすって言ってたからそれも仲間に入れてもらう予定だ。こうやって時間のある時に予定を埋めていく作戦!二人では会ってくれないけど女との予定を入れられないだけ良い。そう思い教室まで隣を歩いた。








「あ、名前帰ってきた!そういえば知ってる?」
教室に着くとクラスメイトが手招きする
そしてこの時に実弥と胡蝶先生との噂を聞くことになる……が所詮噂だろうと高を括ってしまった。
あれだけ実弥の良さをわかっていながらも


それでも実弥に対して女の影無しと思いこんでいたからだろうか・・・現実が見えて無かった。

そして見てしまった、クリスマスイブの日に・・・


夜コンビニに買い物に行くと実弥の車が停まっていて
ついでに家まで送ってもらおうなんて思い声をかけようと近づくと車の助手席に乗っていたのは…胡蝶先生だった。どくどくと身体中の血液が流れてるのがわかる。
気付かれないようにそっと車から離れ、家に駆け足で帰る。向かいの家に実弥が帰ってきたのは深夜過ぎ、その意味に気付けない程子供では無く、こんな思いをするぐらいだったらコンビニで声をかけて我儘でも言って一緒に居てもらえば良かったのかもしれない。
あれだけ誰にも負けないと思っていた気持ちは簡単に敗れてしまい、クリスマスの日私が不死川家に顔を出す事は無かった。

実弥からの連絡は無く、玄弥から着信とメッセージがあったので体調崩しただけ返信をし見たく無い現実からぎゅっと目を閉じた。