「ね……清一郎。あなた。この間、インターネットでアダルトビデオの広告を眺めていましたよね」

 瑞樹から掠れた声で言われ、嫌な予感を覚えた。

 そっと身体を離し、瑞樹はベッドから降りる。四つん這いとなりその下に手を入れ、何を引きずり出すのか見守れば、彼が手にしたのはコンビニでよく使われる白いビニール袋だった。

 ベッドに戻った瑞樹は、愛嬌のある笑みを浮かべる。

「これ。被った女優さんが犯されるビデオの、広告を」

 清一郎は頭を抱えたくなった。嫌な予感は的中だ。止める間もなく瑞樹は、ビニール袋を頭からすぽりと被る。

「興奮するのでしょう?」

「しない。しないから。そんな趣味はないよ」

「嘘。魅入っていた顔、僕はこの目で見ましたよ。ほら、正直になって……ね? あなたがどんな趣味を持っていても、僕なら応えられますから」

 ビニール袋で瑞樹の顔は隠れているが、その下に、笑みが広がっていることは安易に予想できた。強い苛立ちが清一郎を襲う。あれだけ気をつけてきたのに。彼は、内心呻いた。瑞樹の前で何の気なしに言葉を放てば……放たなくとも、そういう何かをすれば、彼は勝手な健気さを見せてくるとわかっていたのに。己の迂闊さへ歯を食いしばる。

 本当に違うんだ。ただ、珍しさからそれを眺めてしまっただけだ。そう告げようとした口が、じわじわと閉じた。

 瑞樹は美しい身体を惜しげもなく晒し、ベッドへ仰向けに横たわっている。夢のように長い足がゆっくり開いた。そこにある陰茎は清一郎の唾液に塗れ、てらてら輝いている。白く滑らかな肌をした内腿へそれは一筋伝い落ちた。

 異様な光景だ。清一郎はそう感じた。白いビニール袋は瑞樹の呼吸に合わせて膨らみ、萎みを繰り返している。白い喉が艶めかしい。

 ぶわりと汗が額に噴き出してくる。違う、そんな性癖は持っていないはずだ。そう己に言い聞かせるが、萎んでいた陰茎はむくむくと頭をもたげてゆく。喉の渇きを覚えた。

「ねぇ……清一郎……」

 がさがさと、ビニール袋が音を立て、瑞樹の呼吸に揺れる。

「どうですか。興奮、しますよね?」

 断定され、清一郎は、否とは言えなかった。胸へ様々な感情が吹き荒れる。こんなことをしてはいけない。こんな風に瑞樹を扱うのは間違っている。可哀想ではないか。哀れではないか。

 清一郎は、瑞樹の上へ覆いかぶさった。枕の下へ手を差し入れ、ローションの入った小袋をそこから引きずり出す。歯で封を切れば、瑞樹がベッドの上に膝を立てた。そのまま己の手で、尻の肉を左右に割ってゆく。

 淫靡にひくつく後孔へ、清一郎はローションに塗れた指を一本挿し入れた。肉襞を引っかけば、瑞樹の腰が左右に揺れる。指を二本に増やした。中でそれを広げると、指の間でローションが糸を引いた。表だけでなく、奥まで薄桃色をしている。たまに指をきゅっと締め付けてくるそこは、ずぶずぶとうまそうに清一郎の指を飲み込む。それでゆるゆるピストンをすれば、瑞樹は甘い声を上げた。

「ここ。軟らかいね。もしかしてすでに解してあったのかな」

「清一郎の……っん、手を、煩わせたくなくて……ああっ」

「自慰をしていたのではなく?」

「そんなの、しないです。っ、あっ、僕の中には、清一郎……あなたしか、挿れたくない」

 瑞樹はシーツを強く掴み、身を悶えさせている。清一郎の感情が、完全に肉欲へ染まった。瑞樹にそのまま尻の肉を割らせ、後孔に陰茎をぬちゅぬちゅと擦り付ける。

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