「やられっぱなしで……っ、ああっ、ただされるがままだったのに――」
赤い唇が徐々に吊り上がってゆく。
「やっとここまで堕ちてきた。その手を、汚して。は、はは、はははっ、好きだと言っても、親友だよな、なんて返してきたお前を手に入れた。あれ程ゲイを嫌悪していた癖に、俺へガチガチにちんぽ勃たせて……っ、くはっ! ノンケの秋人を、ゲイの俺が手に入れた! これでもうお前は……俺から」
逃れられない。そう呟きながら、智泰は唇を合わせてくる。鈍器で頭を殴られたような気分だ。腰をいやらしく揺らされ、肉壁でぬちゃぬちゃにペニスを愛撫されて、そこはまた硬くなった。
いつの間にか辺りは大分暗くなっていた。気づけば周囲にいた男たちの気配が消えている。ビデオカメラ。三脚も、なくなっている。百足が這ってくるような悪寒がした。
「っ、くくくっ、くっははは! お前っ、借金までして、ははっ! 探偵も、男たちも、俺がお前より更に金を積んでやったんだ。はっ、はははははは!! 金は腐るほどあるからなぁ! すんなり手配できて、おかしいとはっ、思わなかった、のか……っ。あっ、ああっ、もっと。もっと俺を愛せ。愛せよ。中、もっとぐちゃぐちゃに掻き回せ……っ!」
淫猥さを曝け出した笑み。唇の端をねちねちいやらしく舐めながら、智泰は己の乳首を指で転がし始めた。
ああ、ああ、胸が嫌に跳ねる。何って奴だ。アヌスは貪欲にひくつき、僕のペニスを愛撫してくる。
仰け反った彼の首へ手をかけ、じわじわ締めれば、瞳の輝きが増した。
「僕は絶対に君を愛さない」
嬉しそうに吊り上がる唇が、嘘こけよ、と、声にならぬ形を作る。このまま殺してしまいたい。腹の底から灼熱の怒りが噴き上がる。それなのに――これ以上、手へ力を入れられなくて。己の臆病さを思い知る。
首から手を退ければ、彼は顔を歪めて嫌な笑みを浮かべた。
「ああ、気持ち、よかったのに……っ、殴って、煙草の火でも押し付けろよ、なぁ? されたこと、全て俺に返して、それだけ執着していると、っ、見せ付けてみろ」
喉仏を親指で撫でるその、癖。
ペニスを奥まで乱暴に突き立てながら、ぐしゃぐしゃに顔を顰める。
「結婚なんてさせるものか」
どこまでが嘘なのか、わからなくてもそう吐き捨てぬと気が済まない。
「お前と逃げる準備は……っ、万端だ」
犬歯を舐めながらにやつくこいつを必ず屈辱に喘がせてやる。僕の人生をかけることになろうとも必ず。必ずだ。
目の前が怨恨に染まる。
染まる。薄闇に、黒く。
END
{emj_ip_0788} 2015 Nosibanodenko

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