アクシデントが重なる夜

注文していた料理が全て届いた頃、ニコニコしながら私を見ている彼、宮侑はまた突拍子も無い事を口にした。

「なあ、藍ちゃん」
「なに?」
「俺と付き合わへん?」
「付き合わない」
「なんっでやの?」
「今までの自分の行いを胸に手を当てて聞いてみたら?」
「どれどれー?」

今までも何度か思った事はある。でも、あまり知らない人に向かって思うのは失礼だと思って忘れるようにしていたけれど、やっぱり無理だ。この人、バカなの?

「本当に聞く人いる?」
「自分が言うたんやろ?胸に手当てて聞いてみって」
「言葉の綾って知ってる?」
「藍ちゃんさ、もしかしなくても俺の事アホやと思うてへん?」
「……さぁ?」

思ってると素直に言うと煩くなるのは目に見えているので、誤魔化した。納得していない顔をしているがそんなの知らない。そのまま無視して忘れてしまう前に、先日借りたジャージが入った袋を渡す。

「ちゃんと洗濯してあるから」
「ええのに」
「クリーニングは流石に出せなくて」
「ガッツリ名前入っとるもんな」
「……分かってて置いてったんでしょ」
「また会えるやん」

ニヤリと笑う彼は確信犯だ。あの日置いていったのは、恐らくチームジャージでメンバーしか持っていない物。グッズを調べてみたが同じ物は無かったのだ。

「暗くなった」
「誰か誕生日なんちゃう?バースデーソング流れとるし」

急に店内が暗くなり、店内にはバースデーソングが流れている。ロウソウを灯したケーキでサプライズでお祝いする演出でよくあるやつだ。

「なあ、藍ちゃん」
「付き合わないよ」
「まだ何も言うてへんやん!」
「何となく分かったから」

そんなやり取りをしていた数分後、アクシデントが起きた。取り返しのつかないアクシデントが。

「なあ、藍ちゃーん」
「……」
「無視しないで」
「……なに?」
「「ハッピーバースデー!」」
「俺と結婚して」
「は?」
「え?」

突然、戸が開きケーキを持った店員数名がお祝いの言葉を言った直後に彼は私に求婚をしたのだ。今この場にいる彼以外の全員が驚いている。

「ま、間違えました!」

数秒間の沈黙の後、客席を間違えた事に気付いた店員達は気不味そうにしながら戸を閉めた。

「なんで」
「ん?」
「結婚してって」
「俺ら絶対するで?結婚」
「はぁ?」
「絶対落とすから」
「ないから」
「あるって!覚悟しといてな?俺、本気やから」

この数日後。あの場にいた誰かが話したのか、変装もしない彼をマークしていた記者が近くにいたのかは不明だが、スキャンダルとして報じられたのだった。