12





「違うんです!禰豆子は!鬼だけど、人を襲った事はないんです!」
「……そうね。そうだとしても鬼を連れて良いという理由にはならないわ」
「禰豆子は俺の妹なんです!!」
「え?!!?!俺の?妹?」
「あぁ」

構えていた日輪刀を鞘に収めると、開いたままの襖を閉めた。ほんの一瞬で、炭治郎くんは禰豆子と呼ぶ鬼の前に立ち後ろに隠す。その瞳は真っ直ぐに私を見て、動向を探っている。

「それだけでは、その子を守る事は出来ない。君たちよりも階級が上の隊士には通用しないし、容赦なく斬り掛かってくる。妹を守りたいなら、もっともっと強くならないといけない」
「……は、はい!」
「どんな状況になっても、守らなくちゃいけない人達を守る覚悟はある?」
「はい」
「妹を犠牲にする事になっても?」
「…ッ!」
「そ、そんなの!禰豆子ちゃんを犠牲になんてなるわけないじゃないですか!」
「よく見て。あの子は、炭治郎くんの妹だったかもしれない。でも、今は人間じゃない。鬼になってしまったの」
「鬼になってしまっても、禰豆子は禰豆子です!俺の妹です!!」

この子達に会うまでは何故お館様が容認しているのか。私に手助けをして欲しいと言ったのか。幾ら考えても分からなかったが、この子は、竈門炭治郎くんは鬼無辻を脅かす存在になる気がする。

「そうね。ごめんなさいね、意地悪な事言って」
「あ、いや」
「今日はもう遅いから眠った方がいいわ。身体に障るから。また明日。おやすみなさい」

この出会いが吉と出るか幸と出るかはこの先の私達の行動次第で決まるのだろう。幸となるよう、私は彼らに手を差し伸べる事を決めたのだった。翌朝、鴉さんにお館様に報告をお願いし私は彼らの部屋へ向かった。

「あ!」
「おはよう。私も一緒にいいかしら」
「も、も、も、もちろんです!!!」
「俺には分かるぞ!お前相当強いな」
「伊之助!失礼だぞ!紫藤さんは俺達よりずっと階級が上なんだぞ?」
「凄いよなぁ、こんなに綺麗で華奢なのに」

名前は言ったが階級の話は一切話してない。其れなのに何故彼らは階級が上だと分かったのだろうか。驚いていると、彼らは自分達は其々感性が優れている事を教えてくれる。炭治郎くんは鼻が優れ、善逸くんは耳が優れ、伊之助くんは…よく分からないが恐らく感覚が優れているのだろう。

「貴方達、凄いのね」
「あの…」
「安心して。禰豆子さんを狩りに来たわけじゃないから」
「え?」
「それじゃあ、何で昨日」
「試したのよ。炭治郎くんを」
「あ?昨日?」
「お前は黙ってろよ?ややこしくなるから!」
「鬼になった妹を連れている隊士がいる、と聞いて貴方の覚悟を見に来たの」

朝食を食べながら私が此処に来た理由を話していると、伊之助くんは挑発的な顔をしながら炭治郎くんの食事を横から奪っている。この食べ方と近くにある猪の頭から察すると、彼は動物に育てられたのだろう。偶に言葉が分からないのにも頷ける。蝶屋敷も賑やかだが、何だか町にいた頃に戻ったみたいだ。