次に目を覚ましたのは数日後の事だった。
「……」
「姉さん!目を覚ました!」
ここは何処なのだろうか。ツンとする匂いも焼けた匂いもしない。それに、兄と同じ服装をしたこの女の子は誰だろう。見たところ私と同じ歳位だ。
「こんにちは。私は胡蝶カナエといいます。あなたのお名前は?」
「…紫藤一露葉」
「一露葉ちゃん、どこか痛い所はないかしら」
「ない、です」
「この子は妹のしのぶ。笑顔が可愛いでしょう?」
此れが、私と胡蝶姉妹の出会いだった。二人は兄と同じ鬼殺隊らしい。鬼殺隊ならと、あの日の惨劇について話した。兄から聞かされた私自身の事も全て。その翌日、私は全身黒い服装をした人に目隠しされた状態で大きな御屋敷に連れて来られた。
「お館様の御成です」
突然聞こえた声に吃驚して顔を上げると優しそうな男の人が立っていた。
「やあ、君が勇作の妹の一露葉さんかな」
「…そう、ですけど」
「驚かせてしまったかな。私は産屋敷耀哉。勇作と同じ鬼殺隊の者だよ」
何だろう。先刻まで連れて来られたこの大きな御屋敷に不安を抱いていたのに。この人が話すと大きな安心感に包まれるような感覚がして落ち着く。
「勇作から君の事を頼まれていてね」
「え?」
「もしもの時は、君を守って欲しいと」
「…守る、?」
紫藤家の事も私の事も事細かく兄は話していたようだ。そして、あの日襲撃してきた鬼は鬼殺隊が追っている鬼舞辻無惨という始まりの鬼だと教えてくれた。
「あの、どうすれば鬼殺隊になれますか?」
「剣士になりたいのかな」
「私を守るために、家族も町の人たちも殺された。守られるだけなんて嫌」
「勇作の言った通りだね。君は芯が強い」
鬼殺隊になるには育手という人に鍛えてられ呼吸という技術を習得する事が必要である事。そして、最終選別という試験に参加し七日後の終了時に生きて戻る事が条件だと教えてくれて、カナエさんを育てた育手の人を紹介してくれた。
「剣士になるまでは、鎹鴉を付けておくね」
「鎹鴉?」
「君に何かあった時に直ぐに知らせてくれる優秀な子だよ」
「……お兄ちゃんと一緒にいた鴉?」
「!」
「そうだよ、勇作と共にずっと君を見守っていた子だよ」
「ありがとう」
真っ黒な全身に鋭い嘴が幼い頃から怖かった。ある時から頻繁に兄と一緒にいるのを何度か見ていたのだ。区別なんて付かないし皆同じに見える筈なのに、この子だけは直ぐに分かった。嗚呼、あの子だと。
「駄目よ!危険すぎる!」
「その危険な鬼殺隊に貴方は入ってるじゃない」
「私の事は関係ないでしょう?!」
「それなら私の事に貴方には関係ないでしょ?」
「あらあら」
「姉さん!笑ってないで止めてよ!」
「いいじゃないの。守られてばかりじゃ嫌だっていう気持ちはしのぶも分かるでしょう?」
「でも!この子は狙われてるのよ?!」
「だからよ!自分の身は自分で守るの!」
「まあまあ。二人とも落ち着いて?」
その夜、胡蝶姉妹に鬼殺隊に入りたくて育手を紹介して貰ったことを伝えると妹のしのぶと喧嘩になってしまったのだ。和解する事なく翌朝、私は育手のいる町へと向かったのだった。