「一露葉」
「はい」
「鬼殺隊はいつも生身の体で鬼と闘っている。深い傷を負えば癒えるのもそれなりに時間を要する」
「はい」
「この先、何が起きてもお前さんは前に進まなければならない。どんなに辛くてもだ」
「はい」
あの日のように当たり前にある日常を残酷に奪っていく。階級が甲であった兄も喪ったのだ。この先、同じ鬼殺隊の仲間が目の前で鬼に殺されるかもしれない。もしそうなったとしても、前に進まなければならないのだ。
「師匠、今までありがとうございました」
「此処はお前さんの家だ。いつでも帰ってきたらいい」
家族だと思っていい、と優しく言ってくれて、その言葉を聞いた瞬間にぼろぼろと涙が溢れた。改めて師匠に御礼を言い私はこの町を後にした。その日の夕刻時、胡蝶姉妹の暮らす家に到着したのだ。
「姉さん!一露葉が!」
「お帰りなさい」
「……ただ、いま」
姉妹の元へ帰った私は、師匠との修行の出来事や最終選別での出来事など事細かく二人に話す。そして日輪刀や隊服の話を始めた途端、しのぶが前のめりになって隊服を見せろと言う。
「まぁまぁ。しのぶ、落ち着いて」
「落ち着いてられないわよ。一露葉、今すぐ隊服を出して」
「何で?」
「いいから!出しなさい!」
「ちょ、」
しのぶはカナエさんの制止を振り切り、隊服が入っている風呂敷を広げる。何をするのか覗くと、隊服を広げたしのぶが声を荒げた。
「何で普通の隊服なの!?」
「へ?」
「アイツ。女には違う隊服を渡してくるでしょ」
「ああ、それは…」
「一露葉ニ変ナノハ着セラレナイ!」
そう。最終選別を終え、隊服が配布された時に鴉さんが服縫製係の方に襲い掛かって別の隊服にしてもらったのだ。一見はスカートに見えるのだが、スカートでは無くて動きやすい物になっている。
「やるわね、鴉」
「フン。オマエニ言ワレテモ嬉シクナイ」
「はぁ?!何ですって?」
「何で二人が喧嘩するのよ!」
「まぁまぁ」
兄から私の話を聞かされていた鴉さんは兄に代わり、私を守ろうとしてくれているんだと師匠が言っていた。しのぶと鴉さんの喧嘩は数日続いた。今ではお互いに視界に入れないようにしているようだ。
「南西ノ町へ向カエェェ!シノブト共ニ向カエェ!」
「共同任務?」
「気を付けて」
「行くわよ」
「うん」
其れから私達は、歳が近いのもあり直ぐに友になる。一緒に鍛錬をするようになって数カ月後、共同での任務を命じられた。
「どんな鬼なの?」
「小柄ナ娘バカリ狙ッテル」
「子どもじゃなくて?」
「違ウ」
「フン。悪趣味な鬼ね」
小柄な娘ばかり狙う鬼か。だから今回は共同なのだろう。私達の背丈は然程変わらないからだろう。背丈の事を気にしているしのぶは鬼の情報を聞いてからずっと怒りを露ににしている。
「この町のようね」
「…鬼の気配はしないね」
「まだ陽が差してるから隠れてるんでしょ」
「あそこで話聞いてみよ!」
「……食べたいだけでしょ」
「しのぶも食べたいって顔してるけど?」
「う、」
町の中を歩きながら鬼の気配を探していると、甘味処を見つけた私達は鬼の情報を収集するために甘い香りが漂う店内へと足を踏み入れた。其処が、鬼の住処だとは知らずに。