「……甘味処じゃなさそうだね」
「血の匂いがする」
甘味処だと思った中は異空間が広がっていた。幾つも部屋がある。しのぶの言うように、血の匂いがしている。誰かが犠牲になっているのだろうか。
「二手に分かれる?」
「勿論」
「しのぶ、また後でね」
「うん」
私達は二手に分かれ、一つ一つ部屋を確認していく。鬼の気配はまだしないが、奥の部屋は血の匂いが強い。日輪刀を構え直して勢いよく襖を開けると、惨殺された女性達が積み重ねられていた。
「…酷い」
鴉さんの情報の通り、鬼の狙いは子どもや若い人ではないようだ。何の罪もない人達を殺めるなんて許せない。沸々と怒りが込み上げてくるように、体温が上昇していくのが分かる。一体何処に隠れているんだ。
「クククククク」
「不気味な声」
「自ら喰われに来たか鬼狩」
「貴方を滅しにきたのよ」
「クククククク」
「一露葉!」
「さあ、飯の時間だ」
天井から現れたのは異形の鬼で今まで出会した鬼の中で一番気配が強い。その分人を喰っているのだ。
「美味そうな蝶だのぉぉおお」
「フゥゥゥ」
− 花の呼吸 、肆ノ型 、紅花衣
「そんなものは効かんぞ!!」
「それはどうかしら」
「− 蟲の呼吸 、蜻蛉ノ舞、真靡き」
「ッ!速い!」
気持ちが悪く生えている手を私が大きな円を描きながら斬り落とし、しのぶが再生する前のほんの一瞬で鬼との距離を詰め細い日輪刀で一突きする。
そして……
− 花の呼吸、陸ノ型、渦桃
「クククククク!お前に儂は斬れな…い!?」
しのぶの影に隠れた私は高く飛び上がり技を放ち頸を斬った。崩れていく姿を見て言い放ったしのぶの"サヨウナラ"の言葉はとてつもなく冷たかった。この任務の後、私は『己』。そして、しのぶは 『戊』に階級が上がった。
「二人共上がったのね!凄いわ〜!」
「姉さんだって上がってるじゃない」
「そうだったかしら〜?」
惚けたような素振りをしているが、カナエさんは数日前に階級が『丙』になったのだ。鬼殺隊を支える柱候補になる『甲』まではあの二つになった。
「お願いがあります」
「どうしたのー?」
「カナエさんが柱になったら……。私を、継子にして下さい」
「はぁ?!」
「うん、いいんじゃないかしら」
「姉さん!」
「そんな怒らないの〜。姉さんはしのぶの笑った顔の方が好きだなぁ」
「姉さん!」
そんなやり取りをしたのは、つい先刻のようだ。もう何年も前の出来事なのに。カナエさんが柱になり私は継子となった。継子になっても鍛錬はしのぶと共に行っていた。
「ねえ、一露葉ちゃん。もしかしたら、しのぶのように蟲の呼吸も使えるんじゃないかしら」
「え?」
「蟲は花の呼吸の派生でしょう?素質あると思うの。試しにやってみない?」
「……姉さん」
「流石に無理なのではないでしょうか」
「あら、やってみないと分からないわよー?」
ね?やってみよう!と、笑顔で言う師範に私達は顔を見合わせて苦笑する。そして、その日から蟲の呼吸法を教わった。確かに師範の言う通りかもしれない。