誰が為に 4/5



 城に乗り込むと、まっさきに国王の間へ向かった。
 どよめく家臣や使用人たちに、静まれ、その場を動くなと法介くんの怒号が響く。
 私も無我夢中で城内を走り抜け、そして国王の間のドアを、バァン、と蹴破った。
 横で怜侍さんがはしたないとか何とか叫んでいたけれど、そこは無視させてもらった。構っていられない。

「父上!ご無事ですかッ!!」

 法介くんの悲痛な怒声とともに部屋に駆け込む。
 国王の伏している大きな大きなベッドの前で、ふたりの男がピストルを手に対峙している姿が飛び込んできた。
 どちらも知っている顔。
 法介くんの世話係の牙琉霧人と…。

「龍一…さん…?」

 彼は、私の声に気付いて唇を噛んだけれど、決してこちらを見ようとしなかった。

 どうして彼がそこにいるのか。
 どうしてピストルなんて構えているのか。
 どうしてエプロン姿じゃないのか。

 わからない、ような気がしたから、一瞬わからないフリをしてみた。
 でも違うね。
 簡単に納得できる。やっぱりそうだ。あなたがフェニックスだった。龍一さん。

「御剣、なんだって姫を連れてきた。ふざけんなよ、僕の信頼を無にするつもりかよ、ばかやろう」

 いつになく乱暴な言葉を使って、笑い出しそうな泣き出しそうな複雑な顔をして龍一さんが言った。

「邪魔が続きますね…。戦争のどさくさに紛れて国王を撃って、とりあえずはそれで済むはずだったのに。とんだ番狂わせだ。
私はこういうのが大嫌いなのですよ。知っていますよね、法介王子?」

 そんなに出来の悪い教育をした覚えはありませんよ、と言いながら、牙琉は龍一さんに向けていたピストルを一旦下ろし、そして改めて銃口を法介くんの方へと向けた。




 呼吸を整える暇さえなかった。

 気付いたら、法介くんの前に飛び込んでいた。
 おおきな振動が私を撃つ。
 振動を受けた私の身体が法介くんにぶつかって、その甲冑から何か零れ落ちた。
 ピンク色。少しだけ茶色に変色してしまったけど、それは。
 コスモスの花びら。
 持っていてくれたんだね、法介くん。
 綺麗だね。
 でもなんだか、儚いね。



 

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