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 病院を立ち去ろうとロビーを通り過ぎる途中で、知った顔に会った。
 木の葉病院には当然忍ばかりが出入りしているし、ここへ来れば知った顔の一つや二つ見かけるのは常だったが、いつもと違うのはオレが暗部の面を外していることだ。
 つまり、相手もオレのことを視認することができる状態だった。

「よう、カカシ」

「アスマ。久し振り」

 声を掛けてきた男は猿飛アスマ。
 任務を共にしたことは数える程しか無いが、歳が近いのでアカデミー・下忍時代からの旧知だ。
 見た目も、精神的にも年齢の割にどっしりと落ち着いていて、話の解る気の佳い男だった。

「どうした。面をしてないってことは任務じゃねぇな。見舞いか?」

「ま、そんなとこ」

 アスマはオレが歩いてきた方向を見て小首を傾げた。
 誰の見舞いだ?とすかさず訊く。
 観察力の鋭さは忍の職業病ではあるが、さすが、と感心してしまう。
 暗部の姿で無いことから、任務外...つまり任務で自分が傷付いたり、傷付いた仲間を病院に連れてきたというわけではないことにまず気付いた。
 それから、オレの歩いてきた方向の先は一般人向けの病棟で、忍がそちらへ足を踏み入れる用事はあまり無い。オレ自身、規模の大きな戦闘任務で大人数が担ぎ込まれて忍用の病棟がいっぱいになった時くらいしか、そちら側へ入ったことがなかった。
 もちろん今現在そういった緊急事態で病院がごった返しているなどというわけではない。

 隠すような事でもないのでサキホのことと今回の経緯を話した。
 見舞った相手が一般人の女性だと聞いて初めは目を丸くしたアスマだったが、クロガネの件を話したら納得と関心を示した。彼もまたクロガネの屋号はよく知っていたのだ。

「うちの親父も通ってたからな、クロガネには」

 アスマの親父殿。すなわち三代目火影のことだ。
 今更ながらクロガネの抱えていた顧客のそうそうたる面々に驚かされる。歴代の火影の二人までもが通った鍛冶屋だとは。

「あそこは紹介制だったな。今度連れていけよ、カカシ」

「だからさ、今説明した通り、まだ件の二代目店主が自己研鑽中で営業再開準備中なのよ」

「しかしお前が気にかけてるってこたぁ腕は確かだな」

「...あぁ、保証できる」

 半年という時間を掛けたが、彼女の造る物の精度はほぼ目指している完成形に等しかった。
 あとは、本人が本人なりに納得するだけだとオレは思っている。
 もうすぐオレのアドバイザーの役割も終わるだろう。

「じゃあ頼むぜ、営業再開したら教えろよ」

「ま、掛け合ってみるよ」




 薄闇の帰路につきながら考えていた。
 アスマを紹介するのは、彼女にとってかなりいい話だ。
 アスマは近距離戦闘タイプで、チャクラ刀を武器としている。
 武器攻撃よりは忍術を使った戦闘を得意とするオレと比べ、ずっと上客になりうる存在だと思えた。
 客が付いたら喜ぶだろうな、と思ったら、自然と頬が緩んでいた。




第三話 了



式日