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那田蜘蛛山に入山して数時間が経った。此れまでに回収できた隊員は十数人で、やられた者の方が圧倒的に多い。


「紫藤様!お気を付け下さい!何かが飛んできています!」
『俺が戻るまで死ぬな!!絶対に死ぬなー!!!』
「…今のって」


隠からの報告とほぼ同時に誰かが叫びながら飛んでいくのが見えたが、今の声は間違い無く今朝送り出した炭治郎くんだ。" 死ぬな " と言っていたという事は、彼が飛んできた方向に鬼と隊士がいるのだろう。


「彼が飛んできた方向はどっち?」
「東の方角です」
「他の子が鬼と闘っているかもしれないわ。様子を見てくる」
「承知致しました」


この周辺に鬼の気配が無いのを確認した後、炭治郎くんが飛んで来た方向へ急いで向かう。恐らくあの言葉は彼らの何方かに向けて放ったのだろう。もし、闘っているのが十二鬼月だとすれば今の彼らに勝機は無い。


「伊之助くん!」


見慣れた猪の被り物を見つけたとほぼ同時に、途轍もなく大きな鬼が彼の首を握り締めようとしている。この距離では到底間に合わない!と思ったほんの一瞬の間に冨岡さんが鬼を斬った。良かった、頚椎を完全に潰される前で。


「俺と戦え半半羽織!あの十二鬼月にお前は勝った!そのお前に俺が勝つ!そうすれば一番強いのは俺っていう寸法だ!」
「修行し直せ戯け者」
「なにィィィ!」
「今のは十二鬼月でも何でもない。そんなこともわからないのか」
「わかってるわ!十二鬼月とか言ってたのは炭治郎だからな!」


完全に会話に入るタイミングを逃してしまい近くでやり取りを観察していたのだが、思ったより伊之助くんが元気で安心した。元気そうではあるが凄い怪我だ、一旦落ち着いてくれないだろうかと思えば何処から取り出したのか会話をしながらあっという間に縄で伊之助くんを縛り上げたのだった。


「己の怪我の程度もわからない奴は戦いに関わるな。後は紫藤がやる」
「気付いてらしたのに縛り上げる必要ありました?」
「……」
「行っちゃった」
「おおお!一露葉!これ外してくれ!」
「駄目よ。医療班を呼んでくるからそのまま大人しくしていなさい」


その後、本当の十二鬼月を冨岡さんが斬首したと知らせが入り私たちは本格的に後始末を開始していた。医療班を呼びに行っている正にその時、別の場所であの兄弟がピンチに陥っている事などこの時の私は知る由も無かった。あの伝令を聞くまでは。