一夜にして、私は故郷も家族も喪った。鬼殺隊であった兄もあの独特な雰囲気の人のような鬼に殺されたのだ。何故、私だけ生きているのだろう。兄の同僚だと云う人は私も致命傷を負っていたが、奇跡的に一命を取り留めたのだと言っていた。
「……なんで、私だけ」
たった一人になるのならば、私も皆んなと一緒に逝きたかった。この先どうしたらいいの?誰か教えてよ………。
「君が勇作の妹だね」
「……?」
「おおおおお館様?!」
「…お館様?」
「何故、此方に?!」
「彼女に会いに来たんだよ。聞いておきたい事も有るからね」
「人払い致します」
「うん。有り難う」
何だろう。声を聞くと頭がフワフワする。先刻まで負の事しか考えていなかったのに、心が落ち着いてる。不思議な人だなぁ、とぼーっと眺めていると此方に振り返り目が合った。
「身体はもう大丈夫なのかな」
「へ?あ、はい。お医者様も奇跡だと」
「そうか」
「兄が…庇ってくれていたのでしょうか」
「鴉の話によるとね、間に合わなかったそうだ」
「え?」
私は兄の目の前で斬られ、そのまま動く事は無かったらしい。あの状態で息がある事も、今こうしている事も、通常なら有り得ないのだ。もしあの時、私が生き絶えたとしたのなら、息を吹き返したのは何故?幼い頃、祖母に聞いた事がある。鬼は死なない。傷痕も残らず、直ぐに回復してしまう恐ろしい化け物なのだと。
「大丈夫。君は違うよ」
「……」
「君はね、一露葉。他の人よりほんの少し傷の治りが早いだけなんだよ」
「ほんの、少し?」
「そう。鬼はね、陽光の下を歩く事が出来ないんだよ」
「……だから夜に香を焚く」
「私はね、一露葉。君は故郷を襲った鬼にとって脅威となる存在だと思うんだ」
斬殺した筈の私の生存を知れば、再び私の目の前に現れるだろう、と。あの鬼は、はじまりの鬼で唯一、人を鬼にする事が出来る。そして、あの鬼こそが鬼の頂点なのだそうだ。
「大丈夫。君の事は、私達が守るからね」
「……あの!その、私もなれますか?鬼殺隊に」
はじまりの鬼と遭遇した時、また私を守ろうとした人が犠牲になる。鬼を狩る鬼殺隊がその鬼を倒す事が出来ずにいるという事は、その鬼は想像以上に強いという事だ。せめて自分の身は自分で守れるようになりたい。其れに、故郷の、家族の仇を討ちたい。人よりも治癒力があるのなら、役に立てるのかもしれない。
その後、兄の同僚だと云う人から育手を紹介され、お館様と呼ばれるあの人は鬼殺隊の当主だと教えてくれた。