「やはりお隣さんでしたね」
「……え?なんで?」
「ご挨拶にお伺いしました」
「だから、なんで?普通は私が行くんじゃ」
「細かい事はいいじゃないですか。入れてくれないんですか?中に」
「どうして中に入れると思っているんですか?安室さん」
「おや、気付いてませんか?藍さん。僕は今、口説いているのですよ。もっと、お近付きになりたいので」
目の前に居るのは誰ですか?さっきから背中がゾワゾワするんですけど。降谷の口説くという言葉を無視して、招き入れた。ドアが閉まった瞬間、彼は胡散臭い安室から降谷へ戻る。
「久しぶりだな、藍」
「久しぶりだな、じゃないわよ!!!私達がどんな思いでいたか…」
「悪い」
「それで?なんで私が公安に?どうせ降谷が糸引いてるんでしょ」
内示の無い異動。既に契約されている私の住居。そして、降谷の存在。疑問は直ぐに解けた。糸を引いていると問えば、降谷は笑った。
「ちょっと、何笑ってんのよ」
「流石だなって思って」
「はぁ?」
「俺は表立って捜査が出来ない」
「それで?」
「藍には、俺の代わりに動いて欲しい」
「……代わりが必要な程の難事件が起きてるわけ?」
「いや。後々、必要になる」
「そうですか」
「それと、頼みがあって」
「降谷が?私に頼み?怖いんだけど」
「恋人になってくれないか」
「はい?」
今なんて言った?恋人?私が?降谷の?何で?え?ちょっと待って、私の聞き間違い?降谷はずっと黙っていて、私の頭はどんどん混乱していく。これは公務なのだろうか。それとも、告白されてる?いや、好きとは言われてない。そもそも、降谷が私を好きなはずがない。ということは、公務か。
「恋人っていうのは、降谷の?それとも、安室の?」
「安室の」
「いつ?」
「明日」
「随分急ね」
" 安室透 " は喫茶ポアロでバイトをしながら探偵をしながら、毛利名探偵の弟子をやっているそうだ。
「……眠りの小五郎に弟子入りして、得あるの?」
「まぁ」
「それで?」
「明日、ポアロに来てくれればいい」
「…それさ、私じゃなくてもいいんじゃないの?」
「藍じゃなきゃダメだ」
頼んだぞ、と言い残して降谷は帰っていった。私じゃなきゃダメな理由は何なの、と聞いたところで彼は教えてくれる筈がない。明日の事は起きてから考えよう。
そして、翌日。私は公安部への挨拶を済ませた後、降谷に言われた通り喫茶ポアロを訪れたのだった。