いきててよかった
☩✤☩✤
引っ張った反動でローの帽子がぽすんと音を立ててシーツの上に転がって、少し驚いた表情の彼を見て、つい少し笑いそうになる。
斜めに寝転がったローのお腹の当たりに体重をかけないように跨って、そのまま私が撃ち抜いてしまった肩に触れる。
「ねぇ、肩はもう大丈夫?他の私の撃ったところ、もう平気なの?」
「問題ねぇ。わざと酷い傷にならない程度に加減してくれてたおかげでな」
少し意地悪な顔をして言うローに、泣きそうになりながら、目に焼きつけるように彼の頬に触れて、ゆっくりと額と額を合わせた。
健康的で、船の生活で少し濃く色づいた肌の色。ミルクティーよりももっと濃いその色。ずっとなって欲しいと思ってた色。
こんなにまじまじと見れると思ってなかったから、この際堪能してみようと思ってついこんな風に押し倒して、観察してしまっているが、彼はなされるがまま、私をじっと見つめているだけ。
その瞳は、あのころと変わりない。
「ローの目、私大好き。私と一緒の色をして、変わってなくて安心した」
「お前こそ、目の色素が抜けてねぇようでなによりだ」
「ええ、そうね……抜けなくて本当に良かった。お揃いの色でなくなっちゃうの、とっても嫌だもん」
「お前はいつも俺の目を見てたな」
「ふふふ、そうね。私、ずっと好きだったから。でも、ローってば目の下の隈が酷いわ。あそこに居たんだもん。ゆっくり寝れるわけないよね」
「シーザーよりモネを警戒しなくちゃならなかったからな」
額をはなして、指先で彼の目元をなぞる。濃い隈の色は、それほどまでに彼がちゃんと眠れていなかった、気が休まる事がなかったという証拠。
「でも、この船にいる間は平気でしょ?私がちゃんと後でアイツを見張ってるからローはゆっくり眠ってね。貴方の能力を考えればちゃんと休息を取るのも必要だもの」
「メアリーに言われたくねぇ」
「こんなに隈が酷い人、そうそうみないわ。ねぇ、お願い……」
懇願して、見つめ合えば、暫くして深い溜息をローはつく。
「わかった。だが、シーザーを見張ってるお前のすぐ側でだ。ドフラミンゴの事だ。万が一、何かが起きねぇか分からねぇからな」
「わかった!ありがとうロー!大好き!!」
「なっ?!」
嬉しくてついローの首に腕を回し、ぎゅっと密着する形で抱きしめる。布越しに体温を、吐息を、匂いを感じて、出会えなかった空白を埋めるような堪らない幸せがあって、とても本当にこれが明晰夢とかでないのかと不安になってしまう程に、胸が苦しくなる。
そう思っていれば、ローが急に身体を起こし、その反動で私の体も起き上がる。わっと驚いて首に回していた手が離れそうになった時、ローが背に腕を回してくれた。
そっと顔をあげれば、少し不貞腐れて、怒り気味の表情をされて、なんだろうかと首を傾げれば、少し低い声が室内に響く。
「お前は、こういうことを他人にやったりしたことがあるのか?」
「ないよ。こんなことするの、というか、抱きついたりもそんなこと今までの私に出来るわけないじゃない。それに、こんな風に抱きしめたり抱きしめてもらったりして嬉しいのはローだけだもの」
何を当たり前なことを言っているのだろうか。そもそも私は女を捨てた身。確かに、昔から顔が整っていることの自覚はあるし、まだ未熟だった時は服を剥ぎ取られた時もあったけど、傷のおかげで剥ぎ取った本人は嘔吐して、その間に撃ち殺すことも多々あった。
私的にはそんな生活だったので、抱きしめる抱きしめない以前に肌に触れる人さえ普通いなかった。
なので、今回のチョッパーに手を握られる事など、とてつもなくレアな体験だったのだ。
でも……
「ごめんなさい。確かに調子に乗りすぎたかも……嬉しくてつい抱きついたりして迷惑だった……よね、
ローの気分を悪くさせるつもりは全くなかったの。ちゃんと次からは控えるから、許してくれる、かな……」
段々と声が萎んでいくのが自分でもわかった。久々の再開で、テンションが上がりすぎた。ローは確かに大好きだったと、愛してくれてると言ったけど、憎んでいるとも言ってくれてた。
彼が私を受け入れてくれただけで、救いと罰が一緒になったのに、こんな風に遠慮なしに触れ合うのなんてはしたないし、なによりも私にとってはとてつもない幸福で、全然罰にもなりはしない。
本来なら自分から触れることは控えるべきなのに。
「ちゃんと私からは許可がなければ触れないようにするし、心音だって聞かないようにするし、だから、ごめんなさい」
そっとローの膝の上から退くのに身体を動かす。けれど、それはなぜだかローの両腕が阻止した。片腕だったのがいつの間にか両腕になってて、私の体を包み込むように抱きしめたローは、私の肩口に頭を填めて深く深くため息を吐いた。
擽ったくて、身体を揺らせば、私が逃げると思ったのか、抱き締められる力が強くなる。つい、訳が分からず声も出せないでいれば、低い声でローが耳元で言う。
「俺だけにそうしてるならそれでいい。他のやつにしてたら少し考えるところはあったが、そうでないなら許可も何もとる必要はねぇ」
「あ、の、ロー、それって、その、」
「元々、俺はやられたくなかったらすぐに拒否をするだろ。好き勝手身体触れさせたのも別に拒否するような事じゃなかったからだ。
それと、愛してるのも、愛されてるのも分かりあってる。憎しみもあるが、これ以上の愛情もある。
メアリー、二人きりの時に抱きついたりなんだりするなら、それこそもう餓鬼じゃねぇんだ。お前の方が俺に気をつけるべきだろ?」
前髪が彼の指であげられ、額があらわになる。そして、上を向いた時、少しかさついて、柔らかいものが触れた。
なんだ、なんだと言うのだ。餓鬼じゃないからって、それって、それって?!
じわじわと私の体が熱くなって、耳や何やらまでもが赤くなっていくのを感じて、心臓がドッドッと大きくなる。恥ずかしさに目に涙が溜まるのを感じ、目を瞑れば縁から雫がたれれば、ヌルッとしたものがそれを拭った。
「少し甘いな」
何気なく言われた言葉。涙というものは感情で味というものが変わるもので、きっとそれを口にした感想なんだろうけど、私にとってはもうなんか冷静にそんなことを考えて何かを返すことなど出来ない。
「ーーーーーっ!!!!!」
声にならない悲鳴が出た。というか恥ずかしさやら何やらが限界で声が出なかった。
火照るのがやまなくて、だめだ、これ本当にダメだと今まで考えられない自体に混乱し、悪戯っ子のような、どうだそれ見た事かという表情をするローを見上げることしか出来ない。そうだった。ローって昔から負けず嫌いだったよね。色々ムキになってることあったりしたよねってそういうのとはまたこれは別次元なんだけどいつの間にこんなことを覚えたのロー!!!
目がぐるぐると回りそうなのを何とか耐え、ローの顔を直視することが出来ず、うううと彼の胸元に額を擦り付けなんとか、くいくいっと、彼の服を引っ張る。
「ろー、も、やめて……はずかしくって、しんぞうがすごくて、しんじゃいそうだから……ごめんなさい……
かんたんにこんなことしないから、はなして……おねがい、します……っ」
なんとかか細い声しか出なかったがそういえば、両手で私の顔の側面を包むように掴まれたと思ったら上を向かされた。
真っ赤な顔をした私を見たローは、はっと笑いながら、口の端に唇を落とされた。
「こんな顔をされちゃあ、俺からの約束はでき兼ねるな」
「ろ、ローー!!!!あ、あなたいま、いまっ!!」
「ほら、離してはやる。だが話があるのは変わりねぇ。それが終わるまでは大人しく、衝動で動かないことだ」
「うっ、ぐっ」
「動けば次は口だ」
「なんの脅しなのかな!?嬉しいけど恥ずかしさで、というか幸せで死んじゃいそうなんだけど!!!」
というか、今すぐ心臓が止まりそうなんだけど!!
そう思った時、意地の悪い笑みを浮かべたローはぱっと私のことを離した。瞬時に彼から距離を取るように隅によろうとすれば、それじゃあ話ができないだろうと手首を掴まれ、ベッドに腰をかけ、横並びになるように座らされる。
いつの間にか深く帽子を被り直したローは、それで、と、私に話を振ってくる。
それは、過去のこと。ドフラミンゴと直接あったことがあるのか、という問いで、あっという間に先程の身体の熱さが無くなり、冷静な自分を取り戻すことが出来た。
「確かに、ドフラミンゴにはあったことはあるよ。ローがあいつの船にいることは昔襲った海軍の情報網だとか、そんなものを見れば直ぐにわかったから」
「よく海軍がドフラミンゴの船を襲っていたからな。珀鉛病の俺がいれば直ぐに特定できるのは当たり前か」
「うん、だからある時をきっかけに居なくなったでしょ?
それで直接様子を見るのを建前に、あのファミリーに近づいたの……
それで、ローがいないとわかった。
だから聞くんだけど、ロー、あなた何があったの?
オペオペの実を口にする、それは命懸けの行為だったはずよ」
私の問いかけに、ローは沈黙すると懐かしむような双眸で私を見て、話してくれた。ドフラミンゴの船から降りた理由、そして、コラソンという命の恩人のおかげで生き延びることが出来たこと。ドフラミンゴにその人を殺されたこと。その人の本懐を遂げるため、生きてきたこと。
優しい、とても優しい声でローは語った。その人の事をとても今でも大好きなのだと、慕っているのがわかるほど柔らかい口調で。
「ローはその人を愛してるのね。とっても素敵な優しい人」
「……お前にあんなことを言った手前、一緒に生きろと言ったが、正直、今回の件でどうなるか分からねぇ……無責任だと言われても仕方ねぇ事だ」
「あら、ローったらそんな弱気になっちゃって」
「相手はドフラミンゴだ。何があるかわかったもんじゃねぇ」
「確かにそうね。でも、これだけは真実だから言うけど、私の命は貴方のモノなの。一緒に生きろと言われたら生きるし、一緒に死ねと言われたら死ぬわ」
「……」
「今まで無責任だったのは私の方……ロー、改めて誓わせてもらってもいい?」
「誓い?」
私はローの手を握り、ベッドから降りて膝を着く。真剣に彼の双眸を見つめ、わたしは彼の命の恩人に感謝の念を含め、落ち着いた声で彼に言う。
「誓います。この十字架にかけて……
私は貴方のことを命を懸けて守り通す。貴方の命の恩人が、貴方の自由と生を、生きて欲しいと、生き延びて欲しいと望んだ。ならば私はその人のその本懐を遂げましょう。
身体のどこを失ったとしても、何をしてでも、私は、穢れたこの身を受け入れてくれた貴方のために存在し、貴方の盾になり貴方の武器となる。
私の愛する貴方を守るわ、この命が尽きるまで──────」
手の甲に口付けをし、微笑めば、驚いた表情でローは私を見ていた。そして、ぐっと唇を噛み、そんなこと、望んじゃいねぇと声に出されるが、でしょうね、といいながら私はローに対面するように膝を着いたま彼の前に来て、唇を落とした手の甲を撫でた。
「でも、私は貴方の命の恩人の本懐を遂げるのを手伝うわ。2つともね。あなたはきっと本当に命を懸けて望むと思う。けど覚えておいて……
貴方の生を1番に望んで、行動を起こしてくれた人はコラさんだって言うことを。
だから、私はその人の意思を尊重する。きっとローには余計なお世話だろうけど、必ず、守ってみせるから」
私はもう死んだのと同じだったのをあなたに救われて今いる。コラソンのことを引き合いに出すなんて、卑怯だと思われるだろうけど、それでも、私は次こそ傍であなたを守りたい。
「普通は、そういうことは男が女に言うもんだろ」
「……」
「お前は、昔からこうと決めたら何をしてでもやり遂げるやつだ。俺一人だけを助けようとしたみたいに、1人で泥をかぶって、1人で何もかもを済ませて、助けを求めることも下手くそで、孤独に生き続けて、懺悔して……」
目を瞑り、深く深く考え込み、仕方がねぇと私の握っていない方の手で帽子をさらに深く被り、目元を隠そうとするローは、私の手を握って、分かったよ。と、その手を引いて、私を引っ張りあげ、自分の太腿の上にのせると、口の端を上げた。
「メアリー、お前がコラさんのその本懐を遂げようとしてくれるなら、一つだけ約束をしてくれ。絶対に死なねぇって言う約束だ」
「なんで、そんな約束を?」
「あの人の命の上に俺は生きてる。あの人の愛情があったから、俺は沢山の愛情を受けて人を信じることが出来て、ハートの海賊団を結成できた。
そうして、ここまで来れた。今更、人の死の上で本懐を遂げるようなことをするのはきっとコラさんは望んでねぇ。
俺の本当の自由……それはドフラミンゴがいなくなった時、コラソンの本懐を遂げたその時だ。
その時に、メアリーが生きていねぇんじゃ話にならねぇ。コラさんの次に、いや……コラさんと同じで、ずっと俺が生きてることを望んでくれたお前を犠牲にしたら胸張って自由に生きれるわけがねぇだろうが」
だから、死ぬな。何があっても。そう言ってローは私の手の甲に口付けをかえした。
もう、本当にずるい人。
「分かったわ。そう望んでくれるなら、私は命を懸けても、生き汚く、あなたの願いを叶える」
「お前がそういうのであれば、俺もコラさんのふたつの本懐を遂げてみせる」
指切りげんまんはしない。これはお互いに誓ったものだから。約束では無い。必ず敗れるかもしれない約束だと、私たちはわかってる。それほどの相手に今から立ち向かおうとしている。だからこそ、私たちは誓だけをたてるのだ。
✤☩
少しの沈黙の後、それを破るようにローは話を戻すように、私に問いかける。
「お前から見てアイツはどんなやつだった」
私の見聞色の覇気の強さ、生物の心声、思考、などが分かるほど強かったことを覚えていて、その有用性を知っての質問に、私はうーん、と振り返るように思い出す。
「とりあえず、私はあの人に何回か鎌をかけてみたの。
ローのことについてね。その時にオペオペの実の正確な情報を掴んでることを知ったわ。
そして、それを貴方に食べさせるつもりだって事も」
「アイツはコラさん……本来は俺の命の恩人に食わせるつもりだったはずだ」
「でも、オペオペの実の真の力を発揮するにはロー、あなたが1番適任だと心の奥底では思ってたようよ。だから、話しかけた時心の動揺が見て取れた。本人は取り繕ってても、私には筒抜け。
それから彼が理想とするストーリーについても語ってあげたわ」
「ストーリー?」
「貴方がオペオペの実を食べて、私を殺して本当の意味で心の底から命を捧げる覚悟の右腕として完成させること。そして、ドフラミンゴ自身が不老不死になるのにローの優しさを利用すること。
全て的をいていたみたいで、怒らせちゃったわ」
「アイツなら確かに考えそうな事だ。コラさんに救われて、離れていなければ俺は確かにそうなっていたかもしれねぇ」
「うん、それで、なんだけどね……ロー、今回の計画について私は知っているけれど、というか察しは着いてるんだけど、ドフラミンゴはローを狙ってると思うの」
「不老不死になるためにか」
ロー自身もわかってたのだろう。自分の食べたものがどんなものなのか。迷わずに言われた言葉に頷き、さらに話を進める。
「だから、シーザーのことをもし本当に取引として使いつつ、工場を破壊するつもりなら、もっと警戒が必要だと思う。本来なら探りをさらに入れるべきだけど、なぜだかあの人の出生の情報はトップシークレット。それで、CP0が関わってることがわかった」
「!?
なんでそんなヤツらが出てくる!?
天竜人直属の奴らのはずだ!」
「ええ、だから気になって私はドフラミンゴが王下七武海にはいった時、ドレスローザの王位に着いた時にしらべたの。ドレスローザがどんな国だったのか。確かに個人についての情報は簡単に隠蔽されるけど、何百年も続く国であるなら簡単に情報を操作出来ないんじゃないかなって。それで分かったのが、ドフラミンゴの王の前はリク王家、その前の王家がドンキホーテ一族、つまりはドフラミンゴの祖先に当たるということだったの」
「なんだと!?
だから、アイツはドレスローザに拘りずっと準備をしてきたってことなのか……?
だが、それでも、もしたとえそうだとしても今回の七武海脱退の条件の前にはそんなこと関係なくなるはず……
いや、だが……」
「私よりもあなたの方がドフラミンゴのことを知ってるからわかってると思う。ずっと彼処に君臨し続けて王として居続けた男が、そう簡単に王座を退くと思う?
カイドウと戦うことは確かに避けたいと思う。でも、それ以上にドフラミンゴは裏で色んな国々や現天竜人との繋がりもある。それを踏まえてみれば、どうなるかな」
「…………ドフラミンゴにとって今欲しいものは人口悪魔の実を作れるシーザーに俺の悪魔の実の力。奴にとっての俺への餌はSMILE工場……
狐の化かし合いをするのにはあいつの方が上手」
「明日の朝刊にドフラミンゴの王下七武海脱退の記事が乗るだろうけど、同時に麦わらの一味とロー、そして私についての記事も載るはずよ。あの新聞社のトップはスクープが大好きだから、あることないこと誇張して書く可能性が高いわ。
そして、売上を挙げる為ならばさらに美味しい餌にも食いつくはず」
「ドフラミンゴの王下七武海脱退が嘘である、そういう記事が出ると言いたいのか」
頷く私に、ローは眉間に皺を寄せ、非常に難しそうな顔で、歯を食いしばる。
「そうなれば七武海の件はすぐにでもアイツは海軍、世界政府に知らせを出して根回しも済ませるはずだ。
ドレスローザではドフラミンゴだけでなく大将格が一人必ず出てくる。
工場の破壊をするまで間の時間稼ぎもするが、間に合うかどうか……」
「それに、工場の破壊を麦わらの一味と共同で行う時点で問題がひとつ浮上するわ。闇のブローカーであるドフラミンゴは欲しいものは必ず手にいるということ。
SMILEに必要なSADを破壊した時点で、工場の破壊も視野に入れてるはず。なら、破壊の役割をする人間にたいしてなにか餌を用意していないとおかしい。
ドフラミンゴはきっとローがシーザーの引渡し相手だと予想をつけてる。麦わらさんには悪いけど、あの人はそういうことに向かないし、何かあった時にこの船にシーザーを戻すのにローの能力がいるもの」
「確かに、そうなると時間を稼ごうが意味はねぇ。こっちはドレスローザ自体の地理もほとんど理解出来ていない。
加えて、麦わら屋が喉から手が出るほど欲しがるものを用意してる可能性が高い……
このことについては麦わら屋たちと話した方が良さそうだな」
「私もその方がいいと思う。できるならシーザーには聞こえないようにしないといけないから睡眠薬を盛った方が良さそうだね」
「べらべら話す口は塞いでた方がいい。お前みたいに薬慣れしてる可能性もある。強力なのを用意しとけ」
「うん!即効性で特別仕様なものを用意して注射してくるよ!」
一先ず一時的にだが、聴覚に異常でるものと、数秒で6時間はぐっすり眠れる薬をちゃんぽんして射ってやろう。
そう意気込み、窓の外を見る。日はゆっくりと沈みかけて夜の帳が下りようとしてる。早々に話し合いして、対策をする必要がありそうだ。
ローのことを見上げれば、考え込み、眉間に皺を寄せている。きっと、私が言わなければ想定してないことがいくつかあったのだろう。それも当たり前と言えば、当たり前。私は狡をして知識を得たに過ぎないのだから。
本当は言うか言うまいか悩んだけど、迷うことを私はやめた。これから先私がローのサポートをする。抜けてる所があっても、私が絶対に支えてみせる。
私がローの力そのものになる。そう決めたのだから、簡単に殺させてなんかやらない。奪わせてなんかやらない。
貴方が傷ついても、命を必ず守ってみせる。心の傷を負わせる、過去のあんなやり方じゃない、隣に立って、戦うという方法で……だから、命を差し違えてでもとこっそり貴方は思うだろうけど、そんなこと、絶対させやしないわ。貴方が死ぬとしたら、私が死んだ後。貴方の命の恩人の本懐、罪滅ぼしになるか到底分からない。だけど、ちゃんと叶えさせてみせるから、ちゃんと“ハートの海賊団の船長”として、私の愛する“トラファルガー・ロー”として生きて願いを叶えて。貴方の恩人が命を懸けたのは、貴方がこれから生きることを、人生を謳歌することを望んでのことなんだから。
「ロー、少しいい?」
「なんだ」
眉間に皺を寄せたままの彼の肩に手をついて、少し邪魔な帽子を脱がす。何をするだと言いたげな彼が口を開こうとした時、そのまま口の端に接吻をして、逃げるように私は船医室のドアを開ける。
「愛してるわ、ロー
大好き……だから、一人で何でもかんでもしちゃダメだからね」
私にとって大きめの帽子を抱きしめて、振り帰り際に言う。驚いて口を少し開けたままのちょっとマヌケな顔にふふふと思わず声が出て、扉を閉めた。
赤くなってるだろう顔を隠すように私は奪ったローの帽子を深く被り、船内にある気配を感じつつ私はシーザーの元に向かう。
早くあの口を塞いで、早々に話し合いをしなくてはいけないのだ。時間だってあまりない。
夕陽はもうそろそろ沈むだろう。だけどもう少しだけ私を照らしていて。顔が赤いのが夕日のせいにできるように、私の心音を落ち着かせるために……