かげのなかで
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なんとか朝日が昇る前に作り上げたシーザー・クラウンに解毒薬を与え、再び海楼石の錠をつけ、私は“彼の作った薬”を弾薬に加工し体内にしまい、なんともないように朝日をあびる。
大きな欠伸をして起き上がるローを見て、疲れた顔をしたシーザー・クラウンを見なかったことにし、寝癖を直すよう手櫛を入れる。
少し柔らかいくせっ毛がかわいくてついつい撫でるようにしてしまえば、おい、と手を掴まれた。
「もういい。帽子で隠す」
「あらぁ、まだいいじゃない」
薬の副作用は何も出ていないようで、深くしっかりとした睡眠がきちんと取れ隈が薄くなっている。
それが嬉しくてにっこり笑いながら言えば、良くねぇよと膝枕から起きあった。もう少し堪能していたかったのに残念だ。
シーザーは疲れが出たのか何も言う気力がないのか、沈黙した後すぐに眠りに入った。薬の服用で眠くなったんじゃないかなと誤魔化しながら、わたしは朝刊が来るまでローの側で眠ることになった。本当ならロビンにポーネグリフについてご教授願いたかったが、朝早すぎるために遠慮してのことだ。
まあ、本当はローの心音を聞いていたいという気持ちもあっての事だけども。
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ローは腕の中で静かに眠り出したメアリーをみて、はあ、とため息を着く。
違和感。これが彼女からぬぐえなかったせいだ。
ローは彼女が居ながらも、万が一ということもあると警戒して居るつもりでいた。だが、麦わらの一味との話し合いの後、夜、メアリーの膝で寝入って直ぐに記憶が落ちている。熟睡をするにしても、できない状況であったはずなのにだ。
「全くやってくれたな」
それは己のためか、自分のためか。メアリーならば間違いなく自分のためにしたことだろうと予想はできる。だが、問題はなんのためにそんなことを、“わざわざ味方に睡眠薬をもろうと思ったのか”だ。
「“ルーム” “スキャン”」
彼女の体を調べるも、めぼしいものは何も無い。“体内になんの異常も見られない”。
ならば、パンクハザードで休めなかった自分をよく休ませるようにするためのものだったのだろうか?
そう思考が行き止まりをみつけ、はあ、と深いため息をつくと、ローはメアリーにされたように手櫛を通すように頭を撫で付ける。
彼女に聞くことは今もできないし、きっと答えは決まっているのだから。
ならば、ゆっくりと今はねむらせてやり、朝刊が来るのを待つだけだ。
───────そして二時間後、朝刊はやってきて作戦の火蓋がまたここで切られることになる
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朝刊が届くと同時に全員が甲板へ集まり、それをのぞき込む。その内容はドフラミンゴの七武海脱退、並びにルフィと七武海トラファルガー・ローの同盟などの記事となっており、大方予想していた、と言うよりメアリーの知っていた通りになった。
そして、すぐに感涙氏咽び泣くシーザーを黙らせながらドフラミンゴへとでんでん虫を鳴らせば、七武海を辞めたという言葉。並びに麦わらのルフィの喉から手に入れたいほどに欲しいものがあるという言葉が飛び交い、ローは早々にシーザーの受け渡し場所と時間を指定すると電話を切る。
「お前の予想は当たりそうだな」
「ふふふ、そうでしょぅ?」
「それより早く飯にしよー!!はらは減ってはァ肉は食える!!」
「それを言うなら腹は減っては戦はできぬでしょーが」
「なーサンジ!!今日の朝飯はー?」
「サンドウィッチだ」
「サンジ、ローはパンが苦手なのでお米でお願いします。梅干しも苦手なので……」
「んんんーー!!メアリーちゅぁんのお願いなら仕方ねぇがそういうことは自分で申告しろトラ男!!」
「どっちが話すのが早いかだろ……というか緊張感をもて!!これからドフラミンゴのいる国だぞ!!」
「んだとごるぁ!!朝からメアリーちゃんと一緒にいてしかも膝枕で一晩過ごしやがってコンチクショーめが!!!」
血涙を流しながらローに詰寄るサンジに関係ないだろ!!と叫ぶように言えばまあまあと二人の間にメアリーが入る。
「私のお膝はロー専用なの昔から。だから許してあげて欲しいなぁ」
「んぐぐぐがごァ!!」
「まあ、ローがいいって言うなら別だけど」
「なんと!?」
射抜くような周りの視線をうけつつ、じいっと下からメアリーがローのことを覗きみれば、帽子のつばを下ろされ、ふいっとそっぽを向かれる。
「俺は俺のものを譲る気は無いし手放す気もない」
「んだとコノヤロウ!!!」
「やはり貴様も!!貴様も同じっ!!」
「なんなんですかもー!!もものすけ君といいあなたといい〜!!!きいいいい!!ワタシも膝枕してほすぃいいいい!!!」
「清々しいほどの変態ぶりにメアリーは驚きです!」
「アンタが1番緊張感がないでしょうが絶対!!」
「バレちゃいましたか」
「メアリー!!」
「だって、今緊張してつかれてしまうなんてダメじゃない。今はまだ気を楽にして置くべきところ。なら、麦わらさんのように肩の力を抜いて万全な状態で挑むのがいいんじゃないかなと思うの」
「それは、」
「サンジー!!メシメシメシー!!」
「わーったから落ち着け……たっく、」
仕方ないなとばかりにタバコを紫煙をくぐらせながら、サンジはキッチンへ足を運ぶ。続くルフィを追いかけるように、ほら、ローも早くとメアリーは声をかけ、それに折れ、ローは深いため息をついて階段を昇ったのだった。
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「これから工場破壊組と引渡し役と船番、この三チームに分ける」
食事をし、一段落落ち着いた頃、ローはそういい、ドレスローザの地図を広げる。
手書だろうそれは少しボロっとしているが、大切にしまい込んでいたことが分かる地図で、肉球の跡が残っている。
「このグリーンビットでシーザーの引渡しを行う。これは俺、メアリー、ニコ屋、鼻屋が担当だ」
「私は長距離攻撃が可能なので、もしもの時は工場破壊チームを援護する予定です。それと、私の見聞色の覇気で街の真ん中の横断しつつ情報を探します」
「工場破壊チームが麦わら屋、ゾロ屋、ロボ屋だな」
「サンジにはもしもの時の連絡係として先に工場破壊チームに着いてもらいます。でんでん虫で出れない可能性も考慮して……それと、残りの船を守るチームはグリーンビット付近で待機を。あくまで近くで待機なので近寄りすぎ注意です」
地図のここの橋の付近と、指さすメアリーに、ナミは首かしげる。
「なんで近寄りすぎ注意なの?」
「闘魚という魚が生息していて、とても凶暴で下手したら船に穴を空けられます」
こんな感じの見た目の魚ですねーとスラスラとスケッチをかけて見せれば、牛と魚をミックスしたようなそれにヒイッ!とナミは悲鳴をあげる。
「いや怖すぎるわ!!!!!」
「おいもしかしてこの橋のとこよお……闘魚がでたり……」
「するね!!すごく出ると思う」
「ですよねぇーーー!!!あーー島におりてはいけない病がァ!!!!」
「そんな病ないのでとりあえず一緒に来てくださいね」
「辛辣ゥ!!」
「けど、意外としっかりした作戦じゃねぇか?」
「だが、何かあるか油断は出来ねぇ。あくまでも何があっても目的は工場の破壊だ。それを第一目標にしろ」
淡々と話すローに少しよろしいか!と、声がかかるそれは錦えもんからの声だった。何でも、ドレスローザに仲間を囚われていること、そして、そこからの良さ目的地がゾウであることを話し、そのゾウという言葉にローは反応する。
それもそのはずだ。工場破壊後、ローはゾウを目指すつもりでいたのだから。
「んー、それならお侍さんには工場破壊チームに入っていただければ?
街の探索が主ですし」
「成程かたじけない!」
「探すメンバーは多いに越したことはない。万が一探索をする際、探すメンバーの中で麦わら屋が抜けた穴をうめるのにもいいだろう……まあ、見つけたら破壊はもちろんしてもらうが」
「壊すって言ったからな!!必ずやるぞう!!俺たちは!!」
「ならいいが……」
本当に大丈夫なのだろうかとシーザー捕獲の時のことを思い出し苦い顔をするロー。そんな彼の肩に手を置きまあまあとメアリーはウィンクする。
「麦わらさんのタイプの場合、なにか懸念があると力が発揮できないと思うし同盟が対等なら命令はしちゃダメよ、ロー」
まあ、お願いなら別だろうけど、と笑うメアリーに口をへの字にし、最終的には何かあったらゾウへ集合することとしめくくり、作戦会議は終了したのだった。
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その後、メアリーはドレスローザに着くまでロビンの元でポーネグリフの解析の仕方を学んでいた。
メアリーの見聞色の覇気はまさに天賦の才といって過言では無いものだ。そんな彼女の能力は、ポーグリフに宿る声を聞くことが出来る。
だがそれには膨大な集中力がいり、普段使っている“見聞色”をさらに強力なものにして使っているために消耗が激しい。
だからこそ、少しでも覇気を使わなくともいい方法を取ろうと考えていたのだ。
「メアリー、ここの文面は……」
「はい。この文字の配列は“ここにあり”ですよね」
「ええ、そう読み取ることが出来る。貴女、かなり飲み込みが早いのね」
「こういったことに関しては好きだし、昨日話したように空白の歴史に興味があるの」
「それはトラ男くんのため?」
「ふふふっ!そうね、たしかにローのためでもあるわ。でも、これに関しては“個人的”に知りたいと思っていたことだったからまた別ね」
サンジの入れてくれたミルクティーを飲みつつ、メアリーはふぅっと一息つく。
「理由は言えないけど、私は調べなくちゃならないの。理由は沢山ある。ありすぎて貴女だからこそ語り尽くせないほどに」
「……あなたの故郷、フレバンスに関係が?」
「ええ、そう。あるとも言いきれない。だからこそ、わたしは知りたいの」
フレバンスが本当に滅ぼされた理由は珀鉛病のせいだけでは無いのではないか。長年殺しをしてきたメアリーはぼうっとそんなことを思う時があった。
“D”の隠し名を持つ存在。世界政府に危険視されるものたち。それが故意に滅ぼされるために動くものたちがいたとしたら?
世界政府側ならいいけれど、そう出ないもの達を殺すための口実に何らかのの手を使っていたとしたら?
そんな考察が頭をよぎることがあった。
フレバンスが滅んだことは珀鉛病が原因で間違いない。けれど、その根本。何故珀鉛があの土地にあって、何故そこに偶然にも“Dの一族”が住んでいたのか。
周辺諸国でも、国土病だったとしても、それに親しい国でも珀鉛病は起きても普通ならおかしくないとメアリーは考えた。自分の国をぐるりとかこうようにあった国々、その中でも交易として珀鉛を加工していた国もあったはずだ。
なのに、なぜ?
疑問が尽きない考えに、ああ嫌だとメアリーは茶菓子を口にする。
「いつかまとまった時間が出来たらあなたに話すわ。あなたなら私の謎をといてくれる気がする。考古学者であり同じ悪魔であるあなたなら」
「そうね、私もあなたになら話せるかもしれないことがあるわ。似て非なる境遇のあなたとなら」
悪魔の2つ名を持つ2人はそう言って笑うとポーネグリフの買得の続きを始める。
ドレスローザに着くまでは、あと少し。