2-3
いやー癒しだったなぁ……めっちゃフレンドリーな上に親切でいい子ってなんなの?竈門家は天使の集まりかな???
て、現実逃避してる場合じゃなかった。いやでもあのマイナスイオンの塊みたいな癒し成分が目の前にあれば誰だってほわほわするわ。伊之助がほわほわする気持ちとってもお姉さん分かりましたよはい。
炭治郎……十歳だった。てこと三年後の冬にあの惨劇?神はいないのかな?!神は死んだ!!!
とりあえずできる限り藤の花の香を持たせて肌身離さずねーー!って言っといたけど……とっても不安だなぁ……
まあでも自分に竈門家へできることは後は隠に見張らせることぐらいだけど……あまり過敏にやると変に目を早くつけられたりしないか……
とりあえずサブレに定期的に様子を見に行かせるか。
え?私は直接行かないのかって?いやいやもう行かないよ。もし再会した時に顔合わせて匂いで分かったりしたらやだし。気まずいし!そのために懐に山のような匂袋詰めといたんだから!あ、どうしよう今気づいたけど炭治郎にスメハラになってなかった?平気だったかな?臭かったら本当にごめん炭治郎!!
でも私のできることはこの程度だ。炭治郎が鬼殺隊に入る。それが鬼舞辻無惨を倒すのになによりもこの物語の中で重要なことなのだから。
匂い袋が万能であるかどうか、そう問われれば違うだろう。けれども、1人だけでも助かる見込みのある子が居れば、炭治郎の救いになれないだろうか。
私が見張って、鬼舞辻無惨を直接倒す。その手もあるだろうが、直接奴とあったことは無い。鬼舞辻は鬼を通して私を見てる。だからこそ警戒しているはずだ。何より、奇襲が失敗したらどうする?
今の柱はどの時代の柱たちよりも強いと豪語できると御館様は仰った。柱を引連れ、倒す。言葉にすれば簡単だが、それができたのならもう既に鬼舞辻は死に絶えているはず。
炭治郎の家族を、大切な宝物である彼らを犠牲にするのはとても心が痛む。でも、私には彼らに手を合わせることは許されないだろう。約束された死と鬼になるだろう禰豆子のことを考えれば、酷く非人道的で醜い行いだ。
だからせめて、せめて今この瞬間、彼らが少しでも幸せな日々を送れることを願うのを許して欲しい。
全てが終わったら私は自分の犯したことへの贖罪をする。
だから、どうか神様がいるなら、来世があるのなら、彼ら家族をどうかもう一度合わせてあげて欲しい…そう、心から願ってる。
もういらない匂袋は藤の家紋の家にわたすとして、この服を着替えた後にほかの捜し物をすることにした。この時代にあるのか少し不安だけれどまあいいだろう。期限は後3年だけれどなんとかなると信じたい。
それに、今の私が言えた義理ではないだろうが、救えるだろう命、助けられる命、犠牲なる命は少ないに越したことがないのだ。
そんなことを思っていた矢先、一年後の秋、錆兎が重傷を負った。私が一人南の方で鬼退治に駆り出されていた時だ。その知らせが入ったのは。
上弦の鬼と一戦交えた
そう、一報が飛ばされてきた鎹鴉によって発せられた。言葉がその時でなかった。安心しきってた。助けられたと厚かましくも傲慢に私は思ってたのだ。一回助かったのならもう大丈夫だなんて有り得ないのに。
一先ず、任務をできる限りの速さで終わらせ、直ぐに療養しているという蝶屋敷に赴く。着いてすぐアオイちゃんに錆兎の病室はどこか聞き、足速にそこに向かう。個室になってるそこの扉を深呼吸をひとつしてから、ガラッと音を立てて開ける。
真っ白な病室でベッドから体を起こした状態の錆兎が、心底驚いた、と言ったような表情でこちらを見ていた。
「は、」
「…………」
包帯で体の至る所はぐるぐると巻かれて、顔にはられたガーゼが痛々しい。何より目を引いたのは、肘から先のない右腕だった。
「驚いたな、お前が来るとは」
「……何があったの」
「鎹鴉から伝達があったろう、上弦の鬼と一戦を交えてこのざまだ」
ぐっと眉間に皺を寄せ、左手を爪がくい込むほどに握り締めた錆兎は、ああ、情けない、と噛みしめた歯をぎりぎりと鳴らす。だんだんと俯き始めた彼は、苦しげな声で言う。
「せめて、刺し違えて頸だけでもと思ったが、力が足りなかった。結局、あの時と同じように朝日に助けられた」
「え、……?」
「最終選別だ」
錆兎の言葉にぐるぐると頭が回った。なんだそれ、なんだそれ、朝日に助けられた?刺し違えても?死んでもいいって思ったってこと?最終選別のあれは、そもそも会場の規格外の……
「それに、この腕ではもう、刀を握れるかどうか」
畳み掛けるように言う錆兎の言葉に、ぐるぐると混乱した頭がブチッと切れる音がした。
入口から大股でずんずんと錆兎の元へ近づき、その胸倉を掴む。ぐいっと引っ張ってやれば、大きく体がゆれた。
「わたし、は」
「わたしは君が生きてて、よかったとおもった」
「義勇くんや、君のお師匠、真菰ちゃんも思ってる、絶対」
「それを、おまえは、その思いを踏み躙るようなことをいうの?」
ときれ途切れに、できるだけ整理しつつ、思ったことを伝える。だって、本当に生きててよかったと、ほっとした。こいつは、間違いなく私の友人なのだから。
私の最後の言葉に、肩を揺らし、反応を示した錆兎は、ゆっくりとこちらを向いた。
今にも泣きそうな顔だった。
「はは、お前に、そんなことを言われるとはな……義勇に言ったことが、自分に帰ってくるとは」
彼は私の胸倉を掴んでる手に自分の左手を重ね、解いた。ほっと、私は息を吐いて、ジト目で彼を睨む。
「そう睨まないでくれ、今のは俺が悪かった。
……もうあんなことは言わないから」
「馬鹿なこと言ったら私が数ヶ月君を昏倒させる」
「おいやめろ!洒落にならん!」
空いている方の手をぐっと握り閉めていえば、見舞いに来たやつが言う言葉か?!とやや引き気味に叫ばれた。多分握りしめた拳からぱちぱち音を立ててるのが聞こえたんだろうなー波紋めぐらしてますようふふー。まあ冗談は置いといて、腕以外の外傷も酷いし、波紋で治した方がいいだろう。
「怪我、具合」
「さっきの饒舌さはどうした」
「怪我、具合」
「……肋骨を数本折ったのと、両足の複雑骨折、背骨にひび」
「………………」
絶句した。いや、おまえ、おまえ、
「治療する脱げ」
「はっ!?」
「直接波紋を叩き込む特に背骨」
「いや、いや常中の呼吸で」
「いいから脱げすぐ、いま」
ほんとに重症だよなんで平気そうにてか肋骨って、両足っておま、お前ぇぇぇぇっ!!!!
しかも肋骨おった時こいつ確実にどっちかの肺に刺さったろ!問答無用だ、全身に生命の波紋巡らせて意地でも治療する!伝導が悪いから直接肌に叩き込む!男なんだから上半身見せるぐらいいいだろ!マッパにするわけじゃないんだし!
顔を真っ赤にして慌てる錆兎はアワアワと手を動かし「破廉恥だ!」だの、「脚が見えてっ!!!やめ、跨るな!!」など叫ばれた。それに加えて!落ち着け、やら、カナエが!やら言ってるが大人しく治療されろ。
少しシワのよった医療着の上の釦に手をかければ、うわぁぁぁあ!?と叫ばれた。うるさい!
「錆兎!だいじょう……ぶ……」
ガラッと勢いよく扉が開いたと思えば、先程会話にでてきた義勇くんが慌てたように入ってきた。
そして、いつも無表情で顔色ひとつ変わらない顔面が一気に林檎のように真っ赤に染め上がった。
さて皆さん、今の状況を客観的に見てみましょうか。
錆兎の上を(無理やり)脱がして治療を試みようと体を乗り出してる私と、私に脱がされ顔を真っ赤に染めあげてる錆兎。どう見ても私に襲われてる図ですね分かります。
「し、失礼し「待て!義勇!!誤解だ!多分お前は酷い誤解をしていぐっ、!!!」」
「錆兎?!」
その場を去ろうとする義勇くんを慌ててとめる錆兎。大声を出しすぎたのか激しく咳き込んだ。それに義勇くんは傍に駆け寄る。大丈夫だ、と手で制した錆兎の服を、今のうちだ!と剥ぎ取った。
「お、おい!!」
「大丈夫、治療するだけだから」
「なんだ、治療か」
「まて、それで納得するな!間違ってはいないがっ!!」
その後もわーぎゃーとなにやら叫んでいたが、全て無視して波紋を流すのでした。
因みに、後から場所を考えてください!!としのぶに怒られた。いや、いつもやってる治療法じゃんか……粉砕骨折を普通の骨折程度まで治したじゃんか……でもうるさくしたのはあれだったので素直に謝りました。
それから暫くして、錆兎は義勇に水柱を任せることにしたという文が来た。そして、自分は義手を作り、一度狭霧山で鱗滝さんの元で感覚を戻す修行をするとのこと。
ん?これって……あれ?もしかして歴史修正力が動いてなぁい?