リオルが治療の為に家に来て暫くたち、家の中を走るくらいに元気になり、精神面での回復もみてとれるようになってきた。
それもこれも、うちに遊びに来るポケモン達のおかげだろう。

水辺も近いため、ここはとても住みやすい環境下にあり、その為か、野生のポケモンが多い。
自家製農園で作ったきのみは彼らへのココに住まわせてくれているお礼として、一部の木から取れるものは勝手に食べてもいいからと教えている。
その他の野菜などは調理などをする為、彼らはちゃんと手を出さないでいてくれるのでホントにいい子が多いなとほっこりとすることも多い。
最近はスボミーがモモンのみに手が届かずしょんぼりとしていた所をムックルがとってあげて2匹で仲良く分けているところを目撃し、なんて尊いことをと悶えたのは記憶に新しい。

閑話休題

まあ、そんなことが起きる庭で、私はシロナさんにこの間考古学で行った街でのお土産といわれ渡されたココナッツミルクを使い、クリーミーなカレーを作ろうと思ったのだ。

結果だけ言おう。

カレーを作った瞬間、林から警戒心0の野生のポケモンが大出没し、大鍋で作ったそれを囲みマイムマイムよろしく踊り出した。
何かの儀式かな?と思うくらいにお前そんなキャラじゃないだろとおもうロズレイドやドンカラスもおしりをフリフリするのだからカレーはなにか麻薬的な要素があるのかと戦々恐々する。いや、とっても可愛いんだけどね?
自家製の木の実を入れた瞬間の盛り上がりは凄いもので、真心込めて作ったそれに、ホーホーを頭に乗せたヌオーは涎をたらりと垂らしていた。

「はいはーい、みんな順番に並んでねー!足りなくなったら足すから喧嘩はだめよー、ウソハチは嘘泣きして横入りはダメだからねー」
「うそはッ!?」

若干野太い声を出したウソハチに、くすくすとみんなが笑い声をこぼす。仕方ないやないか……1回君やらかしてるんだから……

いい子に並んでねーと声をかければ「うそはー!!!」とわかったー!とでも言うような声が聞こえる。よしよし、みんなと同じく大盛りにしてあげるから待っていなさい。
と、そんな事がありつつ、カレーをよそっていたら、なんと、リオルが並んでくれていたのだ。
なんでも、リオルに〈いやしのすず〉を使ってくれたチリーンが一緒に食べようよと手を引いて来てくれたらしい。

「よし、リオルくんや、君は甘いの、辛いの、酸っぱいの、苦いの、渋いの、どれが好きかな」
「う?」
「うーん、まだ分からないかな?なら全部入れておくか」

味を聞いたのは、デザート替わりのポフィンをあげるためだ。
それぞれの好みでどれがいいか聞いてからひとつ盛ることにしている。今回のように初めての子の場合は、それぞれの味を渡して、好みのものを見つけてもらったりもしてる。

初めてのカレーに興味津々なのか、食欲をそそるその香りにごくんと唾を飲むリオルに思わずニコニコと笑顔が出てしまう。だって、ばりばり警戒心剥き出しだった子が1歩近づいてくれそうなのだ。
それはなんであれ嬉しいことだろう。

ポケモンたちにカレーをくれくれと催促されながら、遠くでポフィンの味に百面相するリオルが、周りのポケモンたちに茶化されるのを見て、この子がちゃんと自分の故郷に、家族の元へ帰れるのはそう遅くはないだろうなと、その時の私は思っていた。