知らせを受け、チリーンとともに、それを見た瞬間、え゛?と声が上がる。
そして、何かの衝突音と爆音が響き、家が揺れた瞬間、サッと血の気が引いた。
あ、これあかんやつや。
急いで玄関に向かえば、そこにはガブリアスに攻撃を仕掛けたのだろうリオルがひっくり返っており、あちゃーーーとフーディンが顔を覆っている所だった。
目を回すリオルの様子に、困ったようにシロナさんはええっと???と、頬をかいている。
「リオルどうしたの???」
「ごめん、それについてはクッキーアイス作りながら説明するわ……」
とりあえずリオルは私が預かっとくね、と、目を回したその子を久しぶりに抱き抱えたのだった。
リオルを寝かせた後、あったことを話せば、「それは貴方が悪いわね」と、真顔でシロナさんに叱られてしまった。
献上品のクッキーアイスを前に目を輝かせたのは錯覚だったのか、ブリザードが見えるぜチャンピオン。
「クフィナ、いつも言ってたじゃない。野生の彼らがどこに行くのは彼らの決めること。それを強要してはいけないし、ここに居たいというのなら拒否することも無いって。」
「はい、仰る通りでございます……」
クッキーアイスをもぐもぐと食べるシロナさんの目の前に正座をし、頭の上にウパーと膝におもし変わりにヤドンが乗っかる。このヤドン、かなり重たい。
足の感覚これ直ぐに無くなるんじゃないかと思いつつ、いや、さっきほんと反省したのよ……と、項垂れる。
「いや、こんなに思いっきり懐かれるのは初めてだったのもあるし、私の固定概念が故郷に、家族にいる方が幸せだと思ってたのもあるから…ぐふッ…」
「前半のは否定するけど、まあ、あとの言い分は貴方の場合はそれは仕方なのない事ではあるわね」
ヤドンに抗議の頭突きをくらい、どしどしと膝の上でゆっくりとのたうちまわられる。
足の痺れがピークに達していた私はそれにあ゛あ゛あ゛あ゛!!と悲鳴をあげれば、煩いとばかりにウパーにしっぽで頭を叩かれた。私の味方はいないのか!!!!チリーンヘルプ!!と、そう心中で叫んだが、チリーンさんは素知らぬ顔で風に揺られていました。泣いた。
シロナさんが仕方ないと言っている理由は、私が一度故郷も家族も帰る場所も無くしたことがあるからだ。
確かにシンオウは私の第二の故郷だけれど、一番最初にいた故郷には物理的にもう帰れなくなってしまった。
私がこうして生きて生活出来ているのは、シンジ湖で倒れていた私をナナカマド博士が保護し、ある程度のこちらでの教養を持つまで面倒を見てくれたからだ。
元々、生物が好きだった私は、その博士の影響もあり研究にのめり込んでいったというわけ。
ちなみに論文を10歳になる前の子供が読み、討論できたことについて博士自身はもう少し可愛げのある孫が……といいつつも喜んでたの私知ってるからな。
シロナさんとは他の学者より歳が近い事や、研究している内容が似ていることもあり、話が弾み今のような関係になったのだ。
ポケモンを野生の生き物として見ていたいというのは本心だが、私自身、もしもモンスターボールを持つことになったら帰れないことを本当の意味で受け入れることになってしまうのではないか、そんな気持ちがあるから、誠実な気持ちで彼等と向き合うことが一生できない気がするからモンスターボールが持てない。
結局は建前という、自分勝手な言い訳に過ぎなかった。
シロナさんは顰めっ面をして最後の一口を食べ終えると、ぱんぱんと手を叩く。
「まあ、反省して、リオルにちゃんと向き合おうというのならそれでいいと私は思うわ。
ジュンサーさんにもわけを話して丸く収めておくから任せてちょうだい。」
「うう……よろしくお願いします」
「はいはい、お願いされました」
やっとヤドンやウパーが私の上からどき、足の痺れがマシになる。おーよしよしとシロナさんがこれでもお食べなさいなと、ヒウンシティで売ってたらしいガレットを私の口に突っ込んできた。なにこれ美味しい。
そしてガレットを見て指を加えるシロナさんのガブリアスの可愛さよ。あなた結構家の中だと幼い感じだよね。
「あ、そうだ。クフィナに作り置きの料理作ってもらおうと今日色々奮発して持ってきたの!」
少し落ち着いた瞬間、食べ物へ興味がシフトチェンジした。変わり身が早くないかチャンピオン。
両手を合わせるシロナさんの後ろには、頑張ってガブリアスが運んできたのだろう食材の山が……
木の実はうちで作ってるものをつかえばいいが、それにしても大量だ。
ということは……
「いつものやつだね。冷凍できるものの方がいいかいいかな」
「ええ、それでお願い!久々の手料理でウキウキてるのよね。ガブリアス達も今日はなんだかお腹いっぱい食べたいのかバトルで大張り切りだったんだから!」
案の定、持ち帰る作り置き用のご飯をご所望らしい。キラキラと目を輝かせるシロナさんにおおうと声を上げつつ、そういえば、作るのは二ヶ月ぶりかと思い出す。
シロナさんは片付けることが大の苦手な残念な美人というやつだ。バイト代を貰ってたまに部屋の片付けをするがあれは誰かを雇って週一でやった方がいいのではと思ったりする。
研究資料のこともあり、火の元をあまり家で使いたがらないらしく、定期的にお駄賃を貰い、食材を用意してくれることを条件に好きなものを作っているのだ。
ちなみに言うのであれば、さすがはチャンピオンと言うべきか、彼女のポケットマネーは恐ろしい。何が恐ろしいって金銭感覚が狂わないの?ってくらいにヤバい。殆どは研究とアイスに消えてるだろうが、それにしでも稼いでいる。
とりあえず山のような量だが、ポケモンたちのご飯も入るとなれば1週間で消えるだろう。
「食べ盛りだから量やばそう……ポケモン達に力仕事お願いしてもいい?」
「がぶがぁ!!」
「勿論やるだそうよ」
こくこくと頷くガブリアスやシロナさんの腰にある揺れるモンスターボールによろしくねと声をかける。ガブリアスはバトルで見る横顔と違い愛らしい笑顔が浮かべ、両手を揺らしていた 。あらかわいい。
そんなことを思った瞬間、肩になにか重いものが乗った感覚がし、次には私の頭の横を風が通り過ぎる。
え、と声を上げるまもなく視界の端に捉えたのは青色で、それは技を放つ時特有の銀色の光を手に纏っていた。
重たい音を立てながらリオルのアイアンクローがガブリアスの頭に入る。
空中でくるりと回転し、私とガブリアスの間にはいるリオルは、ぐるると低い唸り声を出し、シロナさん達に威嚇する。
驚きながらも、起きて早々元気な子ねと、ニヒルに笑うシロナさんはガブリアスの名前を呼ぶ。ほぼほぼダメージを受けていない様子にほっとしつつ、リオルに落ち着いてと声をかけるが唸るばかりで聞こうとしない。
見かねたシロナさんは、仕方ないわね、と、ボールに触れる。
「戻ってガブリアス。ルカリオ出てきてちょうだい。」
「!?」
ポンっと音を立てガブリアスが戻ったと同時にリオルの進化系であるルカリオが現れた。
そうかルカリオなら直接波動で語りかけることが出来る。
一人納得しているうちに、ルカリオはじっとリオルを見ると目が淡い青色に光った。
ピクリと反応したリオルは、口頭でなにやらルカリオに訴えかけ、それを静かに聞いていたルカリオはなにか考えると、シロナさんの方に一度振り返ると、玄関に向かうドアに足を向ける。
なんだろう、と思いつつ、シロナさんと目を見合せつつも二体にのあとを追えば、たどり着いたのは彼女が来る前まで覗き見していたバトルフィールドだった。
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