なまえは悩んでいた。
襖の陰に隠れて覗き見をしている目の前の羨ましすぎるけどずっと見ていたい光景に自分はどうしようかと。

「(は、長谷部がお兄ちゃんしてる!)」

最近、大阪城で見つけることのできた博多藤四郎は私の想い人と仲良しだ。
藤四郎と名乗っているから今までと同じように藤四郎の皆がいち兄としたっている一期一振のそばに行くものだと思ったのだが予想が外れた。
黒田で一緒に過ごした期間があったらしく博多藤四郎と長谷部は意外なことに仲良しなのだ。これまた意外なことに初期刀の近侍曰く、実は長谷部は兄の一期一振よりも熱心に博多を探していたそうなのだ。

「はしぇべのおいしゃん!早く!経済欄!」
「しゃあしいか!あとお前は流れるようにおれを椅子にするんやなか!」
「はしぇべ、早う見しぇて」
「たく!」

そんな素振りを博多本人には全く見せないが長谷部も博多のことを大事にしているのだ。その証拠に長谷部が一人で胡座をかいて毎日配布される審神者新聞を読んでいる時に、それを博多が目敏く見つけるとまるで猫のようにするりと新聞と長谷部の間に入り込みその胡座に座って一緒に新聞を読もうとするのだ。長谷部は口ではやめろと言いつつも力ずくで膝から降ろすことは無い。今現在、一緒に仲良く新聞を読んでいる姿がその証拠だ。

ホンットに仲良しさんだ〜!あと初長谷部の博多弁頂きました〜!でも長谷部のお膝に座れるの羨ましいな〜!

自分の中の欲望と葛藤しているといつの間にか博多が目の前にいた。

「主しゃん?なにしとーと?」
「えっ!?あ、博多が本丸になれたのかな〜って思って見てたんだ!ごめんね!」

咄嗟に嘘をつくが博多はどこか疑っているような目で私を見る。うっ、心が痛い。

「主!すいません、このような姿で」
「えっ、あっ、いいんだよ!楽にしてくれて!」

私の存在に長谷部も気づいたようで先程まで胡座だったのに正座に変えて畏まってしまう。ああぁ、私の長谷部のお膝に座る夢が...!
そんな私の様子を見て博多がなるほどと呟いたことにはその時の私は気づいていなかった。

「はしぇべ、また胡座にしてほしか」
「お前、主の前で!」
「ううん、いいんだよ。今日は二人は休日の日なんだし私が居ても楽にしててほしいな」
「主がそう仰るなら...」

しかし、胡座に戻した長谷部が博多に座るように促すが博多は座ろうとしない。

「違うばい。そこに座るのは」

博多が座っていた私の腕を引っ張るので立ち上がると、長谷部の前まで連れて行かされてそのまま肩を押されて長谷部の上に座ってしまう。

「えっ!?博多!?」
「なななな、主に何をするんだお前!」
「うんうん、はしぇべの胡座は座り心地が良かとね!その体勢でお喋りでもしたら良かね!」

俺は五虎退たちと鬼ごとする約束しとーけん行くとね。と言い残すと博多は短刀特有の素早さで部屋から消えてしまい二人っきりになってしまう。

「(まさか、私の願望が博多にバレていたとは)」

赤くなっているであろう顔を両手で覆い、短刀に見抜かれたという恥ずかしい事実に悶え苦しむ。

「あの、主」
「へあ!?あ、ごめんね!すぐに退くから」
「いや、よかったら暫くこのままで」

と長谷部に耳元で呟かれる。
先程から混乱続きで今の状況を処理しきれないていない脳はただ私の顔を赤くすることで精一杯だ。それなのに長谷部の腕がお腹の辺りに周り後ろから抱きしめられてしまうとより私は赤くなることしかできない。

「えっ、あっ、」
「ずっと、主とこのようにして過ごしてみたいと思っておりました」
「...そ、そうなんだ」

一体それはどういう意味なんだろうか。長谷部も私と同じ気持ちだと勘違いしてもいいのだろうか。
 
「主、今だけあなたの名を呼ぶ許可を俺にくれませんか」
「いいけど、どうしたの?」
「好きです、なまえ様。ずっと貴方のことをお慕いしておりました」

長谷部に抱きしめられたまま、今まで長谷部から欲しかった言葉が耳元で告げられる。それが嬉しすぎて、私はポロポロと涙をこぼしてしまう。
 
「も、申し訳ございません!刀にこのような事を言われたら困らせてしまいますよね。どうかお忘れ下さい」 
「忘れないよ!」
「えっ、なまえ様?」 
「私も長谷部が、好きだから嬉しくて泣いちゃっただけなの」 
 
ごめんね、と私の口が紡ぐ前に今度は正面から長谷部に抱きしめられる。
 
「本当に、俺の事を好いてくれていらっしゃるのですか?」
「うん、私は長谷部が大好きだよ」
「俺もあなたの事が大好きです」
 
そうして互いにゆっくりと目を瞑り私たちは唇を合わせたのだった。

 


おまけ

「はしぇべ、とっておきのものかあるばってん欲しかと?」  
「たく、お前はおれでかせ、ぐ、きか...」
 
尻すぼみに言葉を失う長谷部が目にしたのはこの前、主が自分の膝に座ってくれた時の写真だった。
 
「お前は!いつの間に!?」
「商売の匂いがしたけんね!で?欲しゅうなかと?」 
「くっ!言い値で買おう!」
「まいどあり〜!」