私の未来はあの悪夢のような日から一本道に定まったようなものだった。それでも私は少しでも可能性があるなら自分の力を最大限に高め自分の未来の選択肢を増やしたかったのだ。
悪あがきだと思われてもいい。でも私には力が必要なのだ。大切なあの子の日常を、笑顔を守るための力が。

「…咲良くん」
「関さん、そんな辛そうな顔しないでください。これは私の意思で決めたことなんですから」

私はこれからある学校の特別な推薦入試を受けることになっている。

「本当にいいんだね?キミは本来守られるべき側の人間なんだ。それでも、」
「根津校長先生、私は守られてばかりなのは性にあわないんです。だから試験を受けさせて下さい。お願いします」
「わかった。こちらとしては優秀な子が入ってくれるのは嬉しいことなのさ。相澤くん、よろしく頼んだよ」
「はい。行くぞ弓矢咲良」
「はい。行ってきますね、関さん」
「ああ、頑張ってくるんだ」



「関くん…あの子は強いね。ヒーローになったら余計に自分の将来は限られてくるのにそれでも尚辛い現実と戦おうとしてる」
「本当はもっと俺たち大人に頼ってほしい所なんですが。自分の力の無さが不甲斐ないです」
「あの事件から今年で3年…もう1人の女の子の方は大丈夫なのかい?」
「咲良くんと一緒に元気に暮らしています。そして一般入試でこちらのヒーロー科を受験するつもりだと聞いています」
「そうか。二人ともウチに来てくれるのか。まだ合否は分からないけども合格したならばこちらとしては全力で二人のフォローをさせてもらうよ」
「よろしくお願いします。こちらも協力は惜しみません」


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私の試験会場となるであろう机と椅子だけが並べられた教室に着くと私の前を歩いていた男の人は相澤消太だと静かな声で名前を教えてくれた。

「弓矢、お前がヒーローなるためには誰よりも高い能力を求められる。それによってお前に課される入試試験は誰よりも難しいものであり、厳しく判定されることになってる。それは卒業までにお前がヒーローとして生きていけるほどに成長出来るほどの地力があるかどうか確認するためだ。だからこうやって個別で試験を行うことになった。本来は一人の為だけの試験なんて非効率的なんだかな」
「根津校長先生の善意半分、厚労省からの圧力半分。仕方なくって感じですね」
「……気づいてたのか」
「大人の考えそうなこと子供にだって分かりますよ。私はヒーローになったとしても厚労省直轄の麻薬取締部の捜査企画課の麻薬取締官との兼務が確定してますから。この敵の蔓延る社会のせいでマトリは大変です」

大人の事情。きっと私はそれを知りすぎている。

「その上、公共の場での個性の使用はヒーローしか認められてない。そのせいで一つの薬を取り締まるのにもヒーローの手を借りなきゃ行けないことが多い。いくら拳銃の使用が許されてると言っても個性使ってくる敵相手には限度がありますからね。上の人としてはマトリの捜査を基本として働いてくれるヒーローが入れば喉から手が出るほどにほしいでしょう。ましてや私の場合監視もできますし」

「今のヒーローは目立ってなんぼのお仕事のところがありますからヒーローさん達はあんまりマトリのお仕事とか引き受けてくれないんですよ。地道な捜査が基本ですし、敵を捕まえても世間に公表されるわけでも称賛される訳でもないんで」
「お前、そこまでよく分かった上でよくヒーローになろうと思ったな」

「…あの日私の一生をかけて必ず守らなきゃいけない人ができました。そしてクスリで幸せを壊される人を一人でも多く救いたいっていう夢もできました。そのために私はヒーローを目指します」

「長々話してしまってすいません。試験お願いします」
「ああ。弓矢、まずは筆記からだ。各教科時間は60分。早く終わるようなら言え。前倒しで次の教科を始める」
「わかりました」





「いやー凄いね!全ての打ちが計算された攻撃の上仮想敵の急所に百発百中だ!設計者泣かせだね!」
「最後にどデカい流星群みたいな弓を降らすとか歴史か神話上の人物があいつは」






「おー!イレイザー!今日特別入試だったリスナーはどうなったんだ?」
「余裕の合格だ。結果はこれだ」
「ヒュー!筆記、全教科満点とかスゴすぎねぇかこのリスナー!!」
「しかも全教科30分以内に終わらせてたぞ。実技も0ポイント10体を含んだ仮想敵100体をものの5分で全滅させてくれた」
「そいつはシヴィーー!!!優秀すぎんだろ!!!!」




「咲ちゃんおかえりなさい!関さんお疲れ様です。そしていらっしゃいませ!」
「蒼乃ただいま」
「蒼乃ちゃんありがとう。お邪魔するよ」


「咲ちゃん咲ちゃんどうでしたか?」
「落ち着きな蒼乃。無事に合格だって言われたよ」
「流石咲ちゃん!おめでとうございます〜!」

「晩御飯、咲ちゃんの合格お祝いで今日は豪華にしたんですよ〜」
「結果聞いてないのに既に用意してたのかい?」
「だって咲ちゃんなら必ず合格しますから〜」
「はは、咲良くんすごい信頼されてるんだね」
「嬉しい限りですね。でも今度は蒼乃だよ」
「うぐっ!頑張ります!」


「蒼乃ちゃんは入試大丈夫そうなのかい?」
「蒼乃は実技は大丈夫だと思うんですけど、筆記がちょっと心配ですね」
「一応模試の判定はA判定なんですけど心配です〜」
「まあ、これから私と一緒に怒涛の追い込みだよ」
「はい!頑張ります!」
「頑張ってね。応援してるよ」


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