物足りないティータイム

トレイさんが苺タルトを作らなければならないということで、街で別れた私たちは再び学園までの道をウィンドウショッピングしながら帰路についた。

私の性別のことは薄々勘付いていたらしい。けれど、秘密にしているようなので"思っていたけど言わなかった"だけだった。
それが、こんな格好している私を見てついぽろっと零してしまったらしい。
前にケイトさんが「思ってたけど言わないってのは良くないと思う」と言っていた気持ちがすごく分かった。
知られてないと思って行動してた自分が滑稽過ぎて恥ずかしいのだ。

学園に着いてケイトさんと別れようとしたけれど、「そろそろ出来る頃合いだから寮までおいで」と言われてハーツラビュル寮まで来た。
厨房まで来ると、甘いカスタードクリームの匂いが漂ってきて幸せな気持ちになった。
私の顔を見て笑うケイトさんが厨房の扉を開くと、タイミング良く来た私達にトレイさんが呆れたように笑った。

厨房の隣にあるテーブルにティーカップなどをセッティングしていく。
ケイトさんはせっかくだから少しだけフォトジェニックにしようと、赤い薔薇を飾ったりピンクのフラミンゴの人形を飾っていた。
そうして準備していると厨房の扉が開きリドルさんが来た。
私の存在に驚きを隠せないリドルさんに「お邪魔しています」としか言えなかった。
少しだけ、"首をはねよオフ・ウィズ・ユアヘッド"されたらと思うと言葉数が減ってしまう。
私の代わりにトレイさんが事情を説明すると、断る理由はないと快く受け入れてくれてホッとした。

「さあ、リドルくんとミヤちゃんでタルトを持って!」
「ケイト!ちょっと寄りすぎだ」
「これくらい寄らないと四人は入んないよ!」
「二人で一枚の皿を持つのは難しいな」
「いいから早く撮ってください!」

ケイトさんの提案で撮った写真はマジカメにアップしたあと、リドルさんとトレイさんに送ったようだ。
こうして出来た思い出を写真に残して持ってられないのは、夢であることを否定出来ないみたいで少し寂しさを感じた。
けれど、トレイさんの作った苺タルトが絶品すぎて"これが夢なはずが無い"と幸せを感じ、内心で自分を嘲った。

みんなでティータイムを楽しむ中で、リドルさんが同い年ならば畏った話し方はしなくていいと言ってくれた。
ホグワーツでは学年が上でもみんなフランクだったので、学生同士で丁寧な話し方をするのが少しむず痒かった。
そう言う話をリドルくんにしたら、ホグワーツに興味を示したので嬉しくなった。

「なるほど、七年間同じ教師から教わるのは効率が良さそうだね」
「科目も魔法史から魔法薬学、飛行術や占い学の授業とか似たような科目が多いんだけど、動物言語学は無いから興味があるの」
「へぇ、そうなの…君にその気があるのなら僕が教えようか?他人ひとに教えると己の理解も深まるからね」

リドルくんの申し出に喜んでいると、ケイトさんが苦笑いしながらもっと楽しいこと話そうよと言った。
私は自分の学校について話せるのは楽しかったので、自分だけが盛り上がってしまったのかと焦る。
けれど、リドルくんも見識を広めるいい機会だと言うし、トレイさんは別につまらなくも無いらしい。
ケイトさんに味方はおらず、お茶会の短い時間にホグワーツや魔法界について思う存分語った。

その日の夕方、寮に戻って留守番していた弟にお土産と言ってトレイさんの苺タルトを手渡した。
匂いを嗅ぎつけてグリムがすっ飛んできて、食後のデザートだ!今食べたいんだゾ!と言い合いが始まった。
その喧騒を裂くようにエースとデュースが飛び込んできた。

「「ユウ!ミヤがケイト先輩と付き合ってるって!?/ミヤがダイヤモンド先輩とデートしたって本当か!?」」

二人同時に喋るのでよくわからなくて、全員ぽかんとした。

どうやら、マジカメに上げられたケイトさんと一緒に写っている女性は誰だとネット上で騒がれているらしい。
写真はボヤけていたし、そんな騒ぐことかと大袈裟だなと言ったら「男子校なんだから当然だろ」と一蹴された。
お互い恋愛感情からくるものじゃなくて、ただ街に行って楽しくショッピングしてカフェ寄ったりしただけだと伝えた。

「おしゃれなデートを楽しんだようにしか聞こえない」
「女子がいない学校でちゃっかり楽しんでるな〜ケイト先輩。まあ、相手はミヤだけど」
「どういう意味?」
「ははっ、冗談だろ。怒んなって!」

エース達は、それからと話を続けタルトの写真も少し話題になっていると教えてくれた。
あんな学生ハーツラビュルにいたか?と疑問に思う生徒が多くいて、同日の写真だし同一人物じゃ無いのかという憶測まで飛び交っているらしい。

その情報には心底感謝した。
図書館や購買部に行くときは、伊達眼鏡掛けたり髪を括ったりして印象変える努力をしようと、普段の行動を見直そうと思った。

「もし何か理不尽な要求されたら僕たちに相談して欲しい。解決できるかは分からないけど」
「お前がこれ以上何か隠し事してても軽蔑する事なんてないからさ!多分だけどなー!」

帰り際に嬉しいこと言ってくれて、二人は本当にいい友人だと思う。
さっぱりしてて、自分に正直で、周りに流されたり無理に合わせたりする関係じゃなくて、気楽に付き合える友人って素晴らしいなって感じた。

弟も同じことを思っていたらしく、顔を見合わせて笑った。
静かになり聞こえた、もちゃもちゃという音に振り返るとグリムがタルトを食べ始めていて、弟が珍しく大声を上げていて私は更に笑った。
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