01
人には言えない趣味がある。
それは、恥ずかしいからかと聞かれればそうではない。
別に人に迷惑をかけて喜んでるような陰湿なものでもないし、誰かが悲しむような趣味なわけでもない。
もっと言えば、隠したくて隠してるわけではないし、別に言ってもいいなら大ぴらに言えるようなもの。
ではなぜか。
イメージにそぐわないからである。
誰かが好き勝手に作るイメージを守って生きていくことの大半の理由は、そのイメージを崩して嫌われたくないとか、色んな理由があるが結果自己愛だろう。
でも、私の場合はそうではない。
それが仕事だからである。
「10連ドブった。」
意気消沈。
ベッドに沈みながら画面を見るのをやめ、大の字に転がる。
最近ガチャ運悪くもなかったからな仕方ないなそうだと思おう。
今まで運を前借りしてたんだ。
でもこのキャラの限定武器初だし、多分次イベでランク狙うなら出さないとしんどいかもしれない。
正直めっちゃ強い、欲しい。
「…出す。」
欲に負けて、そのまま身体を起こす。
軽い身支度を済ませて、財布を持つ。
マスクを装着してから、部屋の扉を開けると、声が聞こえた。
開けた扉の向こうから。
覗いて見ると、男性の姿が見える。
前髪らしい髪の毛を結んで、スカジャン着て、いかにもヤンキーみたいな。
思い出した、だいぶ雰囲気違うけどお隣さんだ。
前に見たときは確か、パリッとしたスーツを着こなした男性だった気がするけど、人のことは言えない。
オンオフはきっちり分けてるタイプなんだろう。
私みたいに。
「あ、ごめんなさい。」
「いえ…」
言葉を交わして、扉を閉めて、身体を扉の方に寄せると、彼はその後ろを通る。
私は通り過ぎたのを確認してから、部屋の鍵を閉めて、そのままその場を後にした。
コンビニで、課金できる魔法のカードの手にして、カゴに入れる。
それと、飲み物やお菓子を数点入れて、会計をすませる。
もう、慣れた作業だ。
雑誌の陳列棚に、何冊かか見覚えのあるものがあった。
そうか、もう発売していたのか。
帰宅して、寝巻きに着替えて、ケータイを手に取り、魔法のカードのコードを入れてから、アプリを開く。
「よっしゃ。」
30連回して、目当ての武器が出たところでガッツポーズする。
そのままサクサクとレベリングをして、使用感を確かめてみる。
「はー!強い!最高!」
ある程度終わらせて、今日はこの辺で止めようと、アプリを閉じる。
テーブルの上を見ると、先ほどコンビニにもあった雑誌が置いてある。
大量に。
買ったわけでもないのに本だけが溜まっていくなぁなんて思いながら、その本を開く。
映った自分の姿を一応確認してから閉じて、またベッドに転がる。
誰かの期待を裏切らないために、こんな姿は見せられないな、なんて自嘲しながら。
その期待を裏切らない誰かの顔すら、私は知らない。
▽
1/7
back、next