02
この歳になると避けられないものが出てくる。
現場上がりの飲み会だ。
お酒は嫌いな方ではない。
むしろ好きだ。
でも、それが職場のものになると変わる。
味が変わるわけでもないのに、美味しさが少し減るし、なにより気を使うからか、疲弊の方が多い。
「夢ちゃん飲んでるー?」
「頂いてますよー!とても美味しいです!」
「本当ー?ほら、もっと飲んでー!」
「はーい!いただきまーす!」
だが、この業界でのお酒の席と言うのは意外と重要なのだ。
気分次第で仕事を入れられたり、外されたり。
言わばチャンスの席である。
「いやー、いい女だね夢ちゃん!次の撮影ではまた使おう!お酒特集とかどう?」
「なんですかそれ、めっちゃ私得じゃないですか!」
「言うねぇ!ほら、飲んで飲んで!」
「わーい!ありがとうございまーす!」
その結果、こうして部屋の鍵を開けようにもうまく開けられない状況に陥っているのだ。
「うー…鍵ー…」
ガチャガチャとドアノブを回しても開かない。
不思議だなぁ、なんて思っていると、扉が唐突に開いた。
頭ぶつけた。
痛い。
「痛い…いたいー…」
「さっきからうるさ…は?え?ちょ、待っ」
「いえー!」
扉が開いたのでそのまま部屋に入ってみると、いつもと家具が違うけど、まぁそんなこたぁどうでもいい。
私は今水が欲しい。
キッチンの蛇口をひねって水を流す。
どう飲もうか考えていると、隣からコップが突き出された。
ありがたくコップを手にして、水を入れ、それを一気に飲む。
「あーーー!水の味!」
「そりゃね。」
「…ん?」
思いもよらず返事が来たことに違和感を覚え、そちらを振り向くと、いつぞやに見た隣人の姿があった。
「ヤンキーみたい。」
「は?」
「いやー!かっこいいのに!オフですね!オフなんですね!」
「あんたには言われたくない。」
「わかるー、私も元カレに言われたー!」
「へー。」
「見掛け倒しとか、期待外れとか、勝手に変な想像してたのそっちじゃんって言うね!」
「なんでもいいけど、早くでてってくれない?」
「まぁそんなこと言わずに聞いてよ、聞いて。」
「は?」
最近は散々だ。
ガチャも当たらないし、元カレには期待外れだって振られるし、ガチャは当たらないし、やっと出した武器は新イベでは全然役にも立たないし、ガチャも当たらないし。
「はー、リアルってマジクソゲー。」
「それはわかるわ。」
「好きになってほしい、隠したりしないでほしい、なにをみても驚かないって言うから、正直に話したのにさ。ゲーム好きなことも、普段干物なことも。そしたら、なに?!期待外れって!想像と違うって!」
「ふーん。」
「ねぇ、お隣さん、ガチャなんで当たらないの?」
「当てるもんじゃないでしょ、出すもんでしょ。」
「その精神はわかる!わかるけどでも当てたいじゃん!?」
「あー。それはわかる。」
なんだか隣人さんもゲームをするみたいだ。
まぁ、私からしたら話を聞いてくれればいい。
「ねぇ、ガチャ。」
「なに?」
「私のガチャ引いて。私じゃなくておにーさんなら当たるかも。」
「なにそれ」
「神頼み。」
「ん?待って。この名前…」
「はやくー!」
「あー、はいはい。」
お兄さんが私のスマホの画面をポチッとすると、排出音が流れる。
んっこの音は!
「うわっ」
「なになにー!」
「それ、俺狙ってたやつ。」
「私も狙ってたやつー!」
「はぁ、最悪。」
「やったー!ありがとー!」
喜びを露わに抱きつく。
意外といい匂いするなぁなんて思いながらお兄さんをわしゃわしゃしてると、腰を持たれる。
くすぐったい。
「ふふふ、こしょばい。」
「ねえ、もう出てってくれない?」
「なんでそんな冷たいこと言うのー!」
「なんなの本当…」
「よしよーし!お兄さんえらいぞー!」
「ねえ、俺男なんだけど、わかってる?」
「女の人にお兄さんなんて呼ばないぞー!よしよーし!」
「いや、そうじゃなくて。」
ふと、体が浮いたと思ったら、背中が柔らかくなって、転がされた。
これはベッドだ。
そして、眼前に綺麗な金毛が、さらりと見えた。
「ずっとくっつかれてるとその気がなくても当てられるってことなんだけど。」
お兄さんの顔が割と近い。
あぁ、なるほど、そういうことか。
最近は散々だ。
ガチャも当たらないし、元カレには期待外れだって振られるし、ガチャは当たらないし、やっと出した武器は新イベでは全然役にも立たないし、ガチャも当たらないし。
でも、お兄さんはイケメンだし、ガチャで単発狙いを即当てしてくれたんだから。
「当てられるほど大層なもん持ってないよー?」
「じゃあ試して見る?」
「いーよ、お兄さんなら。」
「売り物でしょ?」
「そう!よくご存知で!だから、跡は残さないで。」
あいつのことは今日で話すのをやめよう。
当てられた熱に言い訳をするために。
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